2021-02-23

『えんとつ町のプぺル(1984年公開版)』

久々の休日、ふと思い立ってTSUTAYA映画を借りることにした

作品は、リマスター前の『えんとつ町のプペル』。最近リメイク版が公開されたらしいが、そちらはまだ見ていない。

ただ、ネット上の口コミを見る限り、今後も見ることはないだろう。

私にとってのプペルは、1984年地元映画館で見た、あのプペルで完成されているからだ。


えんとつ町のプペル』はその表題の通り、1960年代公害大気汚染テーマに描いた風刺作品だ。

主人公風太(ふうた・通称プー」)は三重県に住む高校生

中学までは野球部エースとして活躍していたが、練習試合中に激しい喘息症状を発症

四日市ぜんそく罹患者となり、甲子園への夢を絶たれることとなる。

無気力となり、私生活や授業でもぼんやりしがちな風太心配し、同級生も励ましてくれるが、効果はなし。

立ち並ぶ煙突からたなびく煙、紫雲の空。その下で生活しているため、激しい痛みや発作は時折風太を襲う。

そういった現状が、風太気持ちさら空虚にしていくのであった。


そんな彼に声をかけたのが、同級の久志山(くしやま)であった。

特に接点のない彼に乗せられるまま、流れで電話級アマチュア無線技士の講習に参加する。

「遠くに住む人と交流し、話せる。こんな楽しい趣味はない」と力説する久志山にお古の機材を押し付けられ、

家族や近隣の男性の(半ばおせっかいな)協力に巻き込まれる形で、

いまいち興味の湧かないアマチュア無線を渋々行う羽目になる。

一度目にCQ発信をするも、返信はなし。二度目は混線か、ノイズが返ってくる。

まあどうせそんなもんだ、と畳に身体を投げ出し、諦めかける風太

そこにか細い声が聞こえる。「……CQ,CQ、聞こえますか」

周波数の向こう側から声をかけたのは、富士市に住む照子(てるこ・通称『ペル』)だった。


偶然に近い出会いをもとに、彼らの交流は始まっていく。

四日市富士。二つの街に住む、元・野球少年と元・水泳少女

通信がつながるのは週に1度あれば良い方だったが、これをきっかけに風太無線にのめりこむことになる。

ひょんなことから、互いに公害による喘息持ちということが分かる風太と照子。

そして、挫折の末にアマチュア無線にたどり着いたことも。

境遇の近い立場ということもあり、交信中は話が弾む二人。

次第に性格野球を辞める前に戻り、久志山をはじめ学校の級友たちとも明るく話す風太

そう立ち直る彼のもとに一通の手紙が届く。

宛名は照子に教えた住所。しかし差出人は、照子の母・きみのものだった。

発作がひどく呼吸困難となり、照子が市の中央病院にしばらく入院すると知った風太

焦燥感を胸に一人、風太はヘドロと大気汚染の街・富士へと向かう――


そんなストーリーが、1984年のプペルだった。公害をもとにしたボーイ・ミーツ・ガール

『えんとつの煙の下で、僕らはつながっている』という捻りのないキャッチコピーが示す通り、

今となっては、いや当時からもありきたりな青春作品の一つ。

しかし、その背景舞台には工業至上主義への強い批判風刺が隠されている、という意味では真新しかったのかもしれない。

平凡な作品ながら、私の胸に残り続けていた作品、それがプペルなのだ

……散々探した末、邦画コーナーの隅にプペルはあった。いつの間にかDVD版になっていた。

ビデオのまま廃盤となっていた可能性もあるので、正直運が良かったと思う。


私も、この作品も、世間も。色々変わってしまったものはある。

しかし、あの頃にはいつでも帰れる。

不織布の借用袋を手に、私は心なしか明るい気持ちで、TSUTAYAを去ったのであった。

  • 確かに映ってたんだ… 俺のプペル、まるで天使みたいに笑って…

  • これはプロの犯行 もっと評価されるべき

  • えんとつ町のプペルって最初 モクモク村のけんちゃんの続編だと思ってた

  • 昔からある作品だったのか 全然興味なかったところにひどい炎上してたから意図的に情報見るの避けてて知らなかった まあ知っても多分見ないけど

  • 「アダルトコーナーの『〇〇街のスペルマ』と重ねてカウンターにさし出した」 とかのオチかと思って読んでしもたやんか。

  • 風太の学習机の前に貼ってあるベリカードがだんだん増えていくんだよね。その一つが実は終盤のあれにつながるとはなあ。 語りたいけど、ネタバレになるから、ざっくり「テーマの公...

  • 感想が「風俗の話じゃなかった」になってしまうので、あいつは悪いやつだな

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