2015-05-27

弱者男性」はなにを望むのか?

弱者男性からバックラッシュについて論議が続いていますが、自分の中で感じたことを吐き出してみる。

端的に言えば、

  1. 弱者男性要求自分生活環境を悪化させないことではないか。」
  2. 弱者男性批判に対して、フェミニズムは応答する責任はないがリベラリズムは応答する責任があるのでは。」

という話。

弱者男性は、女性から承認を求めている。」という想定に違和感を覚えたのが、以下の文章を書く動機

http://d.hatena.ne.jp/font-da/20150526/1432612495

なお、弱者男性として、30-50代の不安定な就労環境に置かれた独身男性を想定している。自分自身弱者男性に近い立場である

弱者男性不安は「フェミニズム実現後」にある。

フェミニズム擁護側には多くの統計をもとに、今の社会がいかに「男性優位社会」かをしめしていただいた。

なるほど統計上はたしかにそうだ。

しかし、自分給与明細・口座残高があまりよい状態ではないのもまた現実である

今まで生活保護のお世話にならずに済んだがこれからどうなるかはわからない。

そんな状態で賃金格差などを示しながら「男性優位社会」を撲滅するということは、弱者男性賃金労働環境悪化させる可能性があるといっているに等しい。

安定した環境で働いていて家庭を持っている男性にとって具体的なフェミニズムの影響は「家事仕事割合」とか「出世競争」といったところであろう。

しかし、弱者男性にとっては「よりブラック労働環境」「非正規労働への転落」「失業」といったものを想起させる。

自分の今の地位さえ「男性優位社会」による下駄の結果だとしたら……ということである

「流れ弾を当てるな」「ほっといてくれ」というのは、自分生活環境を苦しくするなという話だ。

『「フェミニズムの実現」は未だ成っていない喫緊課題であり、実現後を勝手妄想して批判すべきではない。』

という批判はまっとうであると思うが、心情的に自分が不幸になるかもしれない運動を諸手を挙げて歓迎することは難しいのではとも思う。

弱者男性からフェミニズムへのバックラッシュは(リベラルから見ると誤った)部分最適の結果である

上記の弱者男性不安に対して、

フェミニズムは「男性優位社会」を打倒する理論であり、男性格差は感知しない。男性男性運動すべきである。』

というような批判フェミニズムからすれば当たり前の応答なのであろう。

フェミニズムは男女格差を解消する運動であり、その理論方法女性解放最適化されて構築されたものなのだろう。

女性が立ち向かう壁は「男性全体」であり、そこに「強者男性」「弱者男性」の区分はない。

それに対して「弱者男性からバックラッシュ」も弱者男性生活向上においてはひとつ最適化の形だと思う。

社会問題を体系的に考えるの素養がある人であれば「弱者男性貧困問題経済的強者に向かうべきだ。」と違和感なく考えることができるだろう。

しかし素朴にこの問題を考える時相手は弱者男性以外になるし、さらに悪ければフェミニズムの構図を引きずって「男女対立」の枠で最適化させてしまうかもしれない。

特にこの問題フェミニズムおよびそれを支援するリベラルの応答においては度々”弱者男性は真の弱者ではない。”という言い方がされる。

コレは卑屈にとらえれば「弱者男性男性優位社会でも優位に立てないクズ」であり「他の社会運動から連帯を与える価値がない」と見える。

そして往々にして弱者男性は卑屈である

リベラルに見捨てられていると感じている弱者男性が、リベラル提供するもの見方に乗っかってくれるかは怪しいのではないか。

弱者男性が期待することとしては「社会問題として我々をどのように扱うか。」を明確にすることである

弱者男性がたとえ卑屈であろうとも、彼らが感じている「貧困への不安」というものは本物であると思う。

本来このような弱者男性不安に応えるべきであるのは、労働組合労働運動であろう。

しかし、失われた20年の間労働運動は敗退を続けていた。労働組合は長らく既存正社員雇用を守るだけで精一杯だった。

非正規労働者であれば、労働組合正社員権利擁護団体としてみている可能性もあるかもしれない。

その一方で生活保護以上のセーフティネットが敷かれることも期待できない。

なぜなら財政問題によって社会福祉が充実することはなかなか難しいうえに、

もしこの先福祉が充実することがあっても、福祉の拡充に熱心であるリベラルは「弱者男性」を福祉対象と見ていないからだ。

こうした状況の中で弱者男性が求めていることは『「社会問題弱者男性をどのように扱うのか。」をリベラル勢力が明確にする』ことだと思う。

フェミニズムが伸長しても、弱者男性生活保障されることを確認したいのだ。

労働組合の復権という形であるのなら、20年負け続けた労働組合をどのように復活させるのか。

国によるセーフティネットを充実させるのか。そのセーフティネット弱者男性も利用することが可能なのか。

本来であれば「リベラル政党」を自認する民主党部分最適ではないロードマップ提示して欲しいのだが、あまり期待できそうもない。

いずれにしてもあくまでも「弱者男性が真の弱者ではない。」「それは甘えだ、自分で考えろ。」という態度をリベラル全体でとるのであれば、

弱者男性リベラルの推すフェミニズム批判するべきではないというのは、納得してもらうことができづらいだろう。

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