HPとMPの話をしようと思う。自分にとってはそろそろ当たり前の感覚になってしまって、言語化できないかもしれないと思ったのが切っ掛けです。
ゲームじゃなく現実の話、人間にはHP(ヒットポイント、体力)とMP(マインドポイント、気力…かな……)がある。(と思う、といちいち書くのが面倒なので主観により言い切る)
HPを使い切って枯らすとどうなるかは、実感を持って知っている人もけっこう居る。風邪を引きます。風邪というか病気になるんだけど、特別な病気の種を持っていない人は取り敢えず風邪に罹るので。
HPを使い果たした事によって風邪を引くと、あっ、限界越えて倒れるって急に昏倒するんじゃなくて自主的に寝込む事になるのかー、ということが分かります。
価値観が色々動くので(あと、物理的な自分の限界って味わっておくと勉強になるので)、一度くらい経験しておくのも良いと思う。二度目は無い方が良いですけども。体に悪いからね。……ほんとに悪いからね。
で、対するMPを使い切ってしまうとどうなるかを、実感として知っている人が意外に少ない。そもそもMPの存在を実感している人が少ない気がする。
多分多くの人は減ったと実感するほど一度にはMPを消費しないんじゃないか。不足していて困る(今動くのに必要な分が足りない)事がないから、存在を認識しないのでは。幼い子供が空気というものを物体だと認識しないように。
MPの消費/回復幅は人によって凄く変わる。食べて減る人も居る、運動で回復する人も居る。
他人と付き合う事で大幅に減る人も居るし、本を読む事で消耗する人も回復する人も居る。誰かに伝える言葉を綴ることで回復する事もあれば消費することもある。
実感としてはアウトプットは大概消耗も回復もするので、どちらがより大きいかによってプラマイが変わるだけだけど。
「特に体を動かした訳じゃないけど、疲れたなぁ」と思う事くらいは、MPを意識してない人でもあるかもしれない。その「(肉体ではない部分が)疲れた」こそがまさに、私の言うMP消費だよ。
つまりMPを意識してない人でも、日々MPは消費しているのだ。
回復するには、自分の楽しい、嬉しいことをやったり、それらに触れたりするしかない。
ふわふわのお布団、美味しいもの、ねこ(いぬ)、きれいな景色、好きな音楽。自分のMP回復方法はなるべく沢山知っておくのが良い。消費の激しい人は特に、意識して回復しておかないと簡単に枯れて足りなくなってしまう。
気分が乗らなくてたかが徒歩数分の用事を片付けに出掛けられないとか、茶碗を一枚洗って片付けるぐらいの事(つまり体力をほぼ要しない事)がどうにも出来ない、なんて時を、私はMPが足りなくて動けない状態だと思っている。なお茶碗を洗うのにMPをほぼ使わない為にこの例えが意味不明な人もきっといらっしゃる。
MPが凄く必要な用事があって、そして今のMPは足りないのにその用事は外せないなんて事もままある。主に出勤ですが。そういう時に無理矢理行動すると、MPの代わりにHPが余分に使われている気がします。HP切れ=風邪ひき状態 になり易くなる。
楽しむ余裕は本来ない筈の楽しい事を無理矢理行って、強制的にHPをMPに変換したりする事もある。寝る時間が足りないのにレイトショーの映画を仕事の合間に捩じ込んだりとかそんな感じです。
変換の過程はともかく、MPが足りない分をHPから補てんしているのは同じなので、どちらにしろ体に悪い。
でも個人的には、MPが枯渇するよりは風邪を引く方がちょっとだけマシかなと思います。理由は後で書きます。
で、MPを使い果たすとどうなるのかという話なんだけど。
とても傷付き易くなるのです。そして、その為に防衛として、攻撃的になるのです。
ひがみっぽくなる。自分以外が自分に接する時、其所に悪意があると思い込む。自分一人だけが頑張っていて、他の人間はだらけていると思い込む。良い事が起きても素直に喜ぶ前に疑う。どうせ悪い事も含んでいるのでしょうと、ひねくれた受け取り方をしがちになる。
自分は間違っていないという肯定を求める。否定される事に敏感になるので、自分と価値観の違うものを受け付けなくなる。
つまり「優しくなくなる」のです。
MPが切れると、ひとは優しくなくなる。
HPを使い果たした時突然ばたーっと倒れるなら限界だった事が分かりやすいけど、実際には自主的に寝込む破目になるように、MPを使い果たした時突然叫んだり泣き喚いたりと分かりやすい事が起きる訳じゃない。その症状は段階的に、まるで外的要因なんかではないみたいに、じわじわと本人を蝕んで変えてしまう。
(この話からはちょっと脱線しますけど、同じだけMPが減っても攻撃的にならないひとは、傷付きっぱなしになって鬱になるんだと思います)
ゼロに近付いた、くらいなら、好きなものに触れて、美味しいもの食べてぐっすり眠って、ちょっと回復すればこれらの症状はおさまります。風邪が療養したら治るように、他人や自分と違うものへの優しさを取り戻せるでしょう。人によっては、自分ここんとこ優しくなかったなと気付いたり思い返したりもできるでしょう。
でも、ゼロに近付くを通り越して、マイナスになって、マイナスが溜まって澱のようになると、これは簡単にはなおらなくなってしまう。
MPが切れる事の一番の怖さは、MPを回復しにくくなる事なのです。
好きなものに触れても、でもどうせこれにも悪意があるんだと思ってしまってたら、気持ちが安らがないでしょう。だから回復するためにより多くのプラスが必要になる。マイナスが重度であればあるほど回復幅は少なくなって、もう一度プラスに転じる事はとても難しい。
ちょうど、HPが切れて風邪を引いたのに、休まず更に体を酷使したらそのうち取り返しの付かない重い病気を患ってしまうのと同じに。
ただ、体が病気になるのとちがって、MP切れは酷くなればなるほど自覚しにくくなる。本人にとってはそれが日常になってしまうから。そして回復の必要を感じずにまたプラスから遠退く。
だからHP切れより私はMPが切れる方がこわい。本人も周りの人も、危険なラインが見え難いから。いつのまにかマイナスが溜まってしまって、それが当たり前にまでなってしまったら、取り返せずに生涯マイナスのままになってしまう事だってある。
風邪を引きっぱなしで放置する人はあんまり居ないけど、MPが切れたまま回復せずに過ごしてしまったんだなと思う人には心当たりが沢山ある。それはとても悲しいと思う。
でも、風邪を引いてふらふらしている人がいたら「無理しないで休んで」と外から言うことは普通なのに、いらいらして何にでも嫌味っぽくなった人が居ても「きみ疲れてるよ、好きなものに触れておいで」と伝えるのは難しい。(そもそも攻撃的になっている人に何かを勧めるのは難しい)
それはMP不足っていう状態異常だよ、風邪と同じように、療養して治す必要のある状態だよと私は思うのだけど、風邪と違ってどのくらい休めば良いのかの目安が分かりにくいし、何をしたら療養になるのかも分かりにくい。病院に行って薬を貰ってくれば効くというわけにも行かない。どうやって回復したら良いのかが(人によって違い過ぎて)わからないので、簡単に勧めるのが難しい。そして冒頭に返るんだけど、そもそも「きみは今MP切れを起こしてる」という状態が伝わらない。休む?なんで?食べてるし寝てるし健康体だよとか言われてしまう。いや状態異常だと思うよ……というのが伝わらない。
それで、話す機会があれば話が出来るように、HPとMPの話をしておきたかったのです。言語化できただろうか。
つまりね、マイナスの澱がよどみつつある後輩ちゃん、きみに伝える術が無いものかと、ここのところずっと苦しいんだよ私は。
きみはよくない方向に進んでいる。職場の複数の人が、「根は良い子なのにいつの間にあんな風に人を傷付けるようになったのか」と言ってきみの現状を嘆いている。どのくらい自覚があるのか分からないけど、きみは日々MPを消費しすぎてる。このままひねくれて躊躇無く他人を攻撃するようになる前に、どうか自分をいたわって欲しい。好きなものに沢山触れて癒されて、優しい人間に育って欲しい。まだ二十代だもの、間に合うと思う。
稀にMP消費に関係無く躊躇い無く人を攻撃する性格破綻者も居るけど、きみはそうじゃないって皆言ってるよ、私もそう思うよ。
つーて、攻撃される対象に入ってしまったので多分伝える機会は無いのだけどね。
悲しいのでネットに放流しに来ました。