要するにただの自分語り。
2つとなりのクラスで学級委員長をやっている、見るからにまともではなさそうな男だった。
聞けば1年生になって少しして、すぐバスケ部をやめて少し噂になっていた男らしい。
そいつとちょっとしたきっかけで夏に連絡先を交換して、1ヶ月くらいして告白されて付き合い始めた。
そいつにも私にもメンヘラの気があったのもあり、そりゃもう頭の悪そうなカップルになっていたと思う。
放課後に人目の少ない道を選んでは手を繋いで帰ったし、休日はだいたい彼の家に行って遊んだりセックスしたりしていた。
行事ごとのたびに贈り物もしていたし、毎晩のように電話をしながら値落ちしていた。
もちろんメンヘラ同士であるのですぐぶつかり合った。私も彼も気持ちを伝えるのが壊滅的に下手くそだったし、自虐的に物事を捉えるのが上手かった。
彼が自虐的に物を捉えて悲観するたびに私は彼に「あなたは素晴らしいひとだから自信を持ってくれ」と言い続けていた。
彼が私の言葉で元気を取り戻してくれるのが何よりも幸福だった。
私の知らないところでも私のことばかり話していたそうだ。
私達が付き合い始めたあと、彼は学年全体でも20位くらいの成績だったのがメキメキと伸びはじめ、模試があるたび毎回のように1位を取るようになっていた。
2年生の前半までは私もそれなりだったので、彼と一緒に1位と2位を抑えることもしょっちゅうだった。
彼は、彼の自虐癖に対して少しずつ改善の兆しを見せていたし、友達がいなかった筈がいつの間にか友人達と良く話すようになっていた。
けれど私の自虐癖は治らなかった。
高校二年の後半に差し掛かるにつれて、彼と私の実力差は目に見えるようになっていた。
別にそれは全然構わなかったしむしろかなり嬉しかったのだけれど、彼は国立大を目指していた。
それも理系の結構レベルの高い、いわゆる宮廷と呼ばれる大学だった。
私も最初の頃は彼と似たような大学を目指していたが、ある日ふっと私の学力じゃ努力しても行けないなと気づいてしまった。
私は行けない。そもそも学問にそこまで熱中できる人間じゃないし、おそらく地方のほとんどF欄みたいな国公立に行くことになるだろう。この学校で上位を取れていたのもこの学校が基本バカ高校だからだ。
対して彼は本当に頭がいい男だ。このまま努力すれば絶対に第一志望くらい余裕で行けるだろう。理学に対する情熱だってある、だってあんなに楽しそうに数学を教えてくれるんだから。
じゃあ私はきっと彼の足を引っ張ることになるんだろう。そう思った。
そんな思考に半年ぐらい突き落とされて、結局3年生の5月に、適当な理由をでっち上げて彼をフった。
その半年のあいだ、彼と心中してやろう妊娠してやろうとこっそりゴムを捨ててセックスしようとしたり、自殺することで彼の足枷にならないように、かつ彼の心に大きな爪痕を残せるようにしてやろうとしたりもした。
でも結局無理で、いい大学にちゃんと行くべきである彼が合格できるようにするためには私を忘れてもらうしかないとフった。
でも秋の私の誕生日に電話が来たときに、私はひどい態度でそれすらも拒絶した。
その結果、彼は無事に大学に受かったらしい。
噂で聞いた話ではあるが、まず間違いなく受かっていると思う。かくして私の気付きは正しかったらしい。
浪人もやめた。就活こそしているが、4月になれば正式にニートだ。
なんで落ちたかって、彼と別れて一年、ずっとべそべそ泣き続けていたからだ。好きあらば自己嫌悪に溺れて布団の中で一日を過ごした。起き上がることもできなかった。前だったら悲しくなったら彼に電話をかければたちまちに元気になれたのに、ねだればいくらでも撫でてもらえたのに、という具合で。
その生活は未だに続いている。
私の判断は絶対に正しかった、でもその代わり私は二度と彼に顔向けできない。
彼は今後の人生でまた恋人を作り、妻を貰い、子を育てることになるのだろう。
私には絶対に無理だ、どんな男に対しても遊びとしてしか付き合いを持てなくなった。
だからもう私はこれから死ぬまで、彼のくれた贈り物や写真をたまに眺めては罪悪感と喪失感でべそべそ泣いて生きるのだと思う。
はてなー「メンヘラは愚痴るな不快を押しつけるなどうせ死なないくせに自他の区別をつけろ他人と関わるな相談するな精神科にでも行け俺達の目の前から消えろ」 これに過剰適応した...
相手のために自分が傷つくことを選んだのは誠実ではある。 自分のために相手を傷つけることを厭わないままでいるよりは……ねぇ?