不味い
教科書の表紙は、子供の描いた絵だったけど、すごく綺麗で幻想的だった。どこかの誰かが描いた絵、こんな絵を描ける子が信じられないような子がいるんだなと思った。
色々な曲が載っていたけど、全てを習う訳じゃなかった。色んなやってみよう、のコーナーもあった。でもだいたいそういうのは飛ばして、先生の選んだことをやった。選んだ基準は分からない。
唱歌はまずCDでお手本を聴いた。お手本は子供の歌声なのに、やっぱり信じられないほど上手で綺麗な声だった。スピーカーの向こうは別世界で、とても美しい世界が広がっているのを想像した。たまに、野暮ったい歌声の時もあって、今思えば古い録音だったのかなと思うけど、がっかりした。
自分が聴いてみたいと思う曲の一つに、武満徹のノーベンバーステップス、という曲があった。授業で流すことはなかった。
きょう、NHKで武満徹の合唱曲を聴いて、あの頃のスピーカーの向こうの別世界のこととか、会うことのなかった信じられない子供たちの事を思い出した。もしかしてあの頃の子供達は今日歌っていた人だったのかもしれない。