私は元々腐女子だった。
小学生の頃から漫画やゲームが好きで、中学生になると地元の同人誌即売会や年二回のコミケに足を運び、
少ないお小遣いを握りしめホモホモしい漫画や小説を買い漁っていたものだった。
地味で根暗であったため学校ではいじめられっこで友達はいなかったものの、オタク的活動を通して腐女子仲間がたくさんできた。
私の見た目は相変わらずモサかったものの、一応美容院に行ってみたりファッション雑誌を読んでみたりと徐々に色気付きつつはあった。
ファミレスでだべったり、ゲーセンで遊んだり、一緒に買い物をしたり割と普通な恋愛を楽しんでいた。
中学生になるかならないかの頃からホモ漫画を読み漁っていたため
性的な事にも興味津々だった私は、ホテルに誘われてもあまり抵抗することなく
あっさりと初めてを捧げた。痛かった。
彼氏ができてから私はオタク的イベントにあまり顔を出さなくなった。
イベントに参加してまで萌えを共有したいという情熱は消えてしまった。
ちょうどインターネットが普及した時期でもあり、萌えの発散の場はネットで十分だった。
まあ若かったのでその初めての彼氏とは1年足らずで別れてしまったのだが、
運が良かったのか悪かったのかすぐに次の相手は見つかった。
それから現在アラサーに至るまで、付き合ったり別れたり浮気したりされたりまあ人並みに恋愛をしてきたのではないかと思う。
いじめ経験から対人恐怖症気味ではあったが、いじられキャラを装う技術を身に付けたおかげでオタ以外の友人もそれなりにできた。
見た目もそれなりに気を使うようになり、下の下のモサ子から中の下くらいにはなったと思う。
大学生くらいまでは友人のサークルの売り子としてコミケに参加する事もあったが、
社会人になってからはさすがに腐女子仲間とは疎遠になり、イベントに参加する事もなく、時折mixiなどで近況を知る程度になってしまった。
一人暮らしになったため大好きな漫画も置くスペースを考えるとあまり買えず、たまに漫画喫茶で読むくらいになった。
あまりやり込むこともなく、とりあえずクリアするだけとか、クリア前に投げてしまったりとか
ひどいと開封すらせず積みゲー化させたりするようになってしまった。
現在も普通に彼氏はいるし、年齢が年齢なのでぼちぼち結婚の話も出てきたりなんかする。
彼氏はガチオタではないものの、いい年してジャンプを毎週欠かさず買っていたり
モンハンの新作が出るたびに睡眠時間を削って狩りに励んでいたり、まあ普通に漫画やゲームの話をしても引かれることはない。
そんな感じですっかり腐女子を卒業し、ちょっとオタ趣味のあるフツーの人になったと思っていたが、
ぶっちゃけ彼氏の事を考える時間より遥かに長い時間を妄想に費やしている。
便利な時代になったもので、私はこの数年ぶりに顔を出した激しい萌えを消化すべくネットの海へと飛び込んだ。
カップリング?ああまあ何でもいいや。とりあえずあのキャラが見られれば。
(私は元々カップリングにはあまりこだわりがない。雑食である)
とりあえずあのメインキャラとの絡みが多いからアレ×ソレが王道みたいだな。
ああん甘いセリフを吐くあの人が見たいようあの人が乱れるシーンが見たいようあんな事やそんな事になったところ見たいよう
だが。
何だか違うのだ。
思っていたようなドキドキは得られなかった。
そのジャンルの全てのサイトを見て回ったわけではないが、何だろう、何か違う。何か足りない。
恋焦がれたあのキャラと誰かの濃厚な絡みを見ても、夢中になれない自分がいる。
そして気付いてしまったのだ。
これまで自分が経験してきた恋愛と、画面の向こうの誰かが考えたストーリーとを、無意識に重ねあわせてしまっている自分に。
「こんな展開&シチュありえねーよ」と心の何処かで感じてしまっている自分に。
妄想は萌えだけを追求して然るべきなので、そこにリアリティなど盛り込む必要はない。
書き手に非はない。読み手である私の問題だ。
何故だ。私は萌えが欲しかっただけなのに、何故こんな風に冷めた目で見てしまうのだろう。
現実の男を知ったからと言って、二次元の萌えを純粋に楽しめなくなってしまうなんて、あまりにもひどい。
もちろん彼氏がいても結婚していてもホモ萌えする人はたくさんいるだろう。私の周りにもそういう子はいる。
でも私はだめだったのだ。
それに気付いた瞬間、とても悲しくなって、ああ、中学生の頃の純粋に同人活動を楽しんでいた頃の私は死んでしまったんだ、と思った。