2019-04-17

マルチ商法現場ってなんであん面白いんだ? という話。

 ハロー、ミシェーラ。元気ですか? 兄ちゃんは元気です。この前都内とある場所マルチ商法勧誘をしている現場に遭遇しました。

マルチ商法現場ってなんであん面白いんだ? という話。】

 休日都内某所、某カフェ。多分この時点で場所特定できた人が居ると思う。きっとそういう場所なのだろう。だってほら、トイレに「マルチ商法ダメ絶対」みたいなこと書かれた張り紙が。

 その日私は友人Aと二人で、友人Bの到着を待っていた。今日の予定は、三人で東京散策。なんだかんだ毎週のようにあっているけど、いつもと違う場所に行きたくなったから。

 Bの到着が遅くなりそうなので入った喫茶店パンコーヒーのいい香りと、落ち着いた音楽。入った瞬間に「また来よう」って思えるくらい良い雰囲気

 注文を済ませて、二階へ。席を確保して、Aに番を頼んで、私はお手洗いへ。なんだここもお洒落かよ、なんて思っていると、雰囲気無視してがっつりラミネートされた警告文が飾ってあった。「当店でのマルチ商法禁止されております云々」……。イマイチ現実味がないし、第一マルチ商法現場に遭遇したこともない。違和感が残ったまま席に戻ると、Aが「眠すぎるから寝る」と一言ふわりと落とし、そのまま机に突っ伏してしまった。

 

 私はやることもないので、コーヒー彼女の髪を写真に収め、BにLINEで送る普段勝手に撮られることを嫌がるAは、シャッター音にすら反応しない熟睡具合だった。

 

 そんなわけでBを二人で待ちつつスマフォを弄っていると、隣の席の話が聞こえてくる。盗聴は趣味じゃないのだけれど、たまたま聞こえてしまったワードに、それを趣味にすることをここに誓った。

マルチ商法って、そんな簡単にいくの? って思うじゃん。でもね、これがすっげぇ簡単なんだ」

 

 ???????? マルチ商法? 今時そんなことをやってる人がいるの? マジで

 いやいや、マルチ商法って、所謂「とにかく大人数を勧誘したら勝ち」みたいな頭悪い商売のことで、馬鹿みたいに画期的な商材を取り扱ってるのに全部嘘っぱちの三歳児みたいな大人がやることでしょ?

 え? このお洒落カフェミスマッチすぎひん?

 ここにきてさっきのお手洗いの張り紙輪郭が浮かんでくる。「マルチ商法の話する人、現実存在したんだ!」という、ツチノコ発見した子供のように浮かれてしまった。ただ私はツチノコ発見してはしゃぐ子供を知らないし見たことがないので、この例えはちょっとおかしい。

 簡単に言えば、若干の寝不足コーヒーカフェインでやられた頭が、深夜テンションを平気で引きずってる状態だって、こんな話を聞けるなんて思ってなかったから。

 私は「ねとらぼ」のとある記事を思い出していた。(https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1812/02/news008.html)この記事では、主人公の作者が10歳年上の知人にマルチ商法の話を持ち掛けられるというものだ。私が重要視したのはその手口もなのだけど、そのツイートにもあったスレッド。「マルチ商法あるある」の方。持ち帰れないパンフレットや、通じない連絡先。そして、画期的なのにどこにも売っていない商材。うーん、これが本当か確かめたい好奇心が疼いてしまう。

 もちろん、ちゃんマルチ商法だって判明した時点で席を立つし、店員に伝えるつもりでいる。単純に男子トイレにも同じ張り紙があって、戻ってきた一人がそれを話題にしたのかもしれないし。

 さーてここでお待ちかねのメンバー構成発表のお時間です。隣の席には三人の男性。顔立ちは幼めなので、多分大学生あたりなんじゃないかな。「田」の字の左上のマスにメインで喋っている人(1)がいて、左下が被害者っぽい人(2)。ひたすら聞いている。そして右下に寡黙な一人(3)。スマフォも触らずにじっとしている。ぼくなつの相撲してくれる三人組みたい。

 1は先輩なのだろうか、サラサラと淀みなく話を進めていく。

1「今から老後のこととかって考えてる? 考えてないよなー。俺もあんまり考えてない。でもさ、金が多いに越したことはないよな」

 字面だけ見たら、普通雑談っぽい。ただ、1が2へ『教えを説く』的なトーンと話し方をしているので、雑談ってわけでもなさそう。……なんだろう。絶妙説得力がない。年齢のせいか、顔立ちのせいかだって話してる内容はマルチ商法でしょ? 就職の話でもないんでしょ? なら金云々の話は安定がなくね? 

 この時点で思わず吹き出しそうになってしまった。このまま奇想天外な方向に進んで、最終的にはNHKYouTubeに公開してるコントhttps://youtu.be/t3lZo1kdsQw)みたいになったら百倍面白いのに。

 可能性はゼロじゃないので、このまま耳を傾けることに。私はスマフォを弄るフリをしつつ、彼らの次の言葉を待つ。

1「でさ、俺の知り合いの社長さんとかも資金運用ちゃんとしてるんだけど、それでもまぁカツカツなわけ」

 んなわけあるか!(粗品ロウ)本当にカツカツだったら他人資金運用の話しないだろうし、ちゃん資金運用できてるならカツカツにはならないだろうし、本当にその人物がいるなら付き合う人を考えた方がいいし、嘘としては笑えるレベルすでに面白い

 いやそれにしてもつまらない!(粗品ロウ

1)「そんな人でもお金のやりくりには苦労してるわけ」

そりゃどんな人でもお金のやりくりは苦労するよ。お前と付き合ってる社長さんは特に苦労してそうだがな!

1)「そこで重要になってくるのが、若いころから貯金お金は大切だよ」

へー天才か? この流れでマルチ商法の話だして陥落させようとしてるの? 無理じゃない?

1)「どう? やってみない?」

へーイエッタイガー合いの手入れてあげる。実際この瞬間に私は吹き出ししまったので、お時間のようです。ちゃんスマフォを弄る演技を続けていたので、彼らが一瞬こっちを見たけど、それをなんとかカバーする。

私「ね、起きて。駅着いたって。移動しよっか」

 

 Aに嘘をついて起こす。寝ぼけ眼の彼女に「コーヒー飲める?」といってカフェインをすすめる。その間に席を立ち、時計時間確認する。

 

 パンを買ってないのが良かったな、なんて思いつつ、今度はスマフォを耳に当てた。電話してるフリ。数秒待って、マイク部分に「今駅前カフェにいるんだけど、もう出るから。うん、大丈夫。そのまま駅の×口で待ってて。はい了解。じゃね」と吹き込む。早口だったかな、と不安が頭をよぎったけど、気にしていられない。

 

 移動したいのは事実。恐らく彼らは、周りに自分たちの会話が聞かれていることを承知の上でこの話題を口にしている。堂々としているし、あとから来た私たちを気にした素振りを見せなかったし、第一片方が寝ていて片方がスマフォを触っている状態で聞かれない方がおかしい。あと吹き出すタイミングバッチリだったし。そんなわけで、聞かれていることがバレていることと、お手洗いに張り紙があることが周知の事実の上で、私たちは泳がされているのだ。逃げない手はない。

 

私「よし、いこうか」

 

 私がやけに足早に離れると、まだ寝足りないAがよたよたと追ってくる。先に階段下りて、スタッフの方を探した。ちょうどバイトじゃなさそうな方がいたので、近づいて話を切り出す。

「あの、美味しかったです。ありがとうございます。で、二階の子の席にいた三人組なんですけど……」

 

 私は、この後Bになんて説明しようか考えていた。

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