これくらい同人界隈にいると同人誌やイベント、サークル文化の変遷やら事件やら、まあ色々なものを見て来ている。
歴が長くなると昔と今を比べたがる人も多くなる。
「最近の同人誌は無味乾燥なものが多い、あとがきすら無い」というご意見を見た。
「これこれこういう構成でこういうものを載せたら同人誌になる」
というセオリーがある程度出来上がっているし、非常に作る敷居は低くなっていると思われる。
(ここでこの作り方についての昔話をすると長くなるのでまた別の機会に)
昔の同人誌は作り方や指南書が少なく、(マニアックな雑誌の特集ではあったとは思う)参考が既に同人活動している先輩からの伝え聞き・先方の同人誌のみという時代も確かにあった。
自由度はあったと思う。凄かった。
「凄かった」というのは昔は悪い意味でも凄い本が多かったのだ。
自分が見た例をいくつか紹介する。
・「表紙は完成しているのに中身(本文)が未完成」
今同人誌を買っている人でこれを見た人は殆どいないし、今こういう本ほぼ見ないと思われる。良い時代になった。
昔は「イベントに合わせて本を出す」事に意義があったのと表紙で判断して購入する(しかない)環境であった為、表紙だけ綺麗に仕上げて中身は下書き状態(ハンターハンターの下書き掲載…と言えばわかる方も多いだろうか)で発行している本もあった。
・「表紙と中身(本文)が別ジャンル」
マジであった。
流石に丸々別ジャンルという本は少なかった(あったんだよ…)が〇ジャンルの表紙で〇の話の後に急に「今ハマっている×ジャンルの漫画・トーク」が挟まっているとかは割とあった。
・「書き手の近況や同ジャンル者同士の対談や語りのPが何Pもある」
極めるとこれだけで本を出しているサークルもあった。
今より作者のアイドル性が高かったように思う。トークが面白いと「サークル●●のトーク」だけで価値があるのだ。
因みにこのトーク内容はジャンルに関するもの…では無く作者の近況だったりする方が多かった。
Twitter(X)でこの文化はほぼ絶滅したと思う。良い時代になった。
・「本文内にサークル紹介・次回イベント参加情報・既刊宣伝がある」
これで5~6P、いや下手すると10p以上は使っているサークルもあった。
NAVIOやPixivはTwitter(X)は無い、個人サイトさえ無い時代なのである意味当然なのだが、自分のサークルの活動状況を知らせる媒体が限られており、発行物に含ませるしかなかった背景もある。
実際にサークル紹介Pは作っておけるので、コピーのコピー(データでは無く実物のコピー)を延々してそのPだけ画質が悪くなっているのもまあまあ見た。
「新刊は●●Pと書いているが、このサークルは宣伝Pが大体6Pぐらいあるから、実際の漫画・小説は〇〇Pか…」という悲しい推察をしながら買った経験をしている人は自分だけでは無いと信じたい。
当時はまだ問題性が周知されておらず黙認されていたが今やるとアウトの事例。
「他漫画のトレース」というのは例を挙げると「ジョジョの漫画の絵やコマ割をそのままトレースして髪型や服装だけジャンルキャラクターに変換させてジョジョの名場面をジャンルキャラに喋らせる」というものだ。
ファンロードという雑誌の「今月の見たいものand見せましょう」というパロディ企画で用いられたり、朝目新聞でこのようなパロディはファンアートとして有り、広く用いられている為、
これもだいぶ議論の余地はあるが、上記の例に沿うと「ジョジョの漫画の絵柄のみを似せて描き、ジャンルパロディとして自分の考えたストーリーを描く」なら現在でもまあまあ見かけるし、問題にまではなっていない。
「同人誌のタイトルに歌のタイトルを使う」迄は著作権侵害に当たらないが、歌詞や楽譜は音楽の著作物になる。
https://www.riaj.or.jp/f/leg/copyright/music/qa_internet.html
イメソンとして歌詞丸々書いたり漫画小説内で使いまくった同人誌多かったよマジで。
今は歌詞を引用するにしても、ちゃんとジャスラックに許可を取って歌詞使っている同人誌を見た。強い。
他ヘイト創作や特定キャラへの過度なネタやらまで列挙すると個人の好みの問題になるので取り上げない。
勿論挙げた中の例でも「それが好きで買っていた」人もいるだろう。
今で言う「同人誌」というのは「普段はサークルの内輪向けに書いている同人誌を、一見のサークル外の人にも販売するもの」だった。 現代に残っているもので言えば、「高校の文芸部...