当時はリセットボタンなんて思っていなかったが、今あの時期を説明するとリセットボタンという表現が適切かもしれないなと思った話。
※フェイクあり
当時の自分は高校卒業後フリーターをしていた。高校時代すでに半分不登校みたいな感じで、友達は多かったが、いかんせん勉強がとても苦手だった。
大学には進学しなかったが、バイトで出会うコミュニティは面白くて良い人が多かったし、
高校時代の同級生とも関係は続いていたので、定期的に遊んだりして気がつけばフリーターも2年目を迎えていた。
フリーターのままでいるのも良くないとは思っていたので正社員で働くことにした。大学進学は選ばなかった。
勉強浪人ではなく、あてもなくフリーターをした後に大学に入学するのはダサいイメージがあった。
今思うと心底どうでもいいのだが。
気軽さ重視で短期や3~6ヶ月程度の期間限定のバイトばかりやっていたので、バイトからの正社員登用の選択肢もなかった。
結果、親に連絡をして学費を出してほしいとお願いした。
両親はとても喜んでくれて、応援してくれた。バイトは期間満了でぬるっと辞めた。
繰り返していた短期バイトとフットワークの軽さで、無尽蔵に遊び仲間が居たが、家族以外誰にも言わなかった。ダサいと思ったから。
一人暮らししていた家を解約して荷物は全部実家に送った。携帯も解約した。
これが自分のリセットボタン。親族の連絡はつながっていたのでプチリセットボタン。
高校時代の同級生が自分の消息を心配して高校に連絡を入れたらしい。高校から実家に安否の確認が来たとのこと。
話に聞くと、高校の同級生たちは心配して解約したアパートにも来たらしい(知らない中国人男性が住んでたのこと。申し訳ない。)
びっくりした。連絡がなくなって心配はされるとは思っていたが、皆すぐに忘れると思っていたからだ。
今この歳になると、みんながアッサリ忘れてくれると思っていたのも衝撃であるが、当時は心底そう思っていた。
もちろん心配してもらえた嬉しさもあったが、当時は正直いい年してフリーターで、親に金借りて語学留学してる自分のことなんて忘れてくれよという思いが圧倒的に強かった。
1年経って日本に帰国したときは、改めて同級生たちと集まって酒を飲みながら謝罪をした。
ちなみに同じパターンでバイト仲間たちも心配して家に来ていたとのことを別ルートで知り、同じように謝罪した。
当時の仲間は今でもごくたまに集まるが、最近改めて当時の話になった。
「あの頃は怖かった」と言われた。その後に「でも今なら同じことをしたいと思う」と。
何を言っているんだと笑い飛ばしたが、自分もたまに目の前にリセットボタンがチラつくことはある。
一度ボタンを押してしまうと、選択肢として気軽に出てきてしまうものだと思う。
1年間の語学留学如きで英語力は爆発的には上がらなかったが、今はなんとか正社員を続けている。
同性の友達しか居ない人生だったが、最近は恋人も出来てとても楽しい。
それでももし急に、今すぐ飛行機のチケットをとって海外に飛んだらと妄想にふけることがある。
海外に自分がいるときの、自分がここに属していないという圧倒的な不安感や、必死でコミュニケーションを取ろうとする自分のダサさがたまに無性に恋しくなる。
今は安定していて刺激も無いのかもしれないが、それで十分自分は幸せであると、
ちょっとのマンネリや不満如きですべてをリセットする必要なんて何も無いし、それで得るものよりも失うものの方が多いこともわかっている。
ただ、あの時リセットボタンを一度押してしまったせいで、何をしていても「自分はいつでもリセットできる」という選択肢が選べる状態になってしまっている。
それがとても良くない。
責任をもって仕事をするとか、恋人に誠意を持って接するとか、深く悩んで考えるとか、そういったものがめんどくさくなったときに、