さて、この事件を捜査すると決めたのはいいが、何から手を付けたらよいものか。まさか高橋圭一の写真を持って、鎖の先に繋がっている共犯者が見つかるまで街をうろつくわけにもいかない。
新聞、週刊誌、テレビ、インターネット。俺は事件に関係しそうな情報を集められるだけ集めた。しかし、共犯者に繋がる情報は見つからなかった。テレビは連日、高橋容疑者について報道していた。派手な交友関係、爛れた異性関係、隠された変態趣味……史上最悪の犯罪者だ。容赦も何もない。
「こういう時って、なぜか卒業アルバムとか晒されるよな……」
今回は特にめぼしい内容が書かれていなかったのか、報道されていないが。
「卒アルか……」
彼も学生だった時期があるわけで、当然学校に通っていれば人間関係が生まれるわけで。
もしかしたら、彼の人間関係を卒業アルバムから探れるかもしれない。卒業アルバムには卒業生の写真が載っている。高橋圭一の写真と突き合わせれば、もし今も関係が続いていれば分かるはずだ。
ネットで高橋圭一の経歴を検索する。都内にある高校に通っていたらしい。早速電話で問い合わせる。方々から問い合わせが殺到しているのだろう。何度かけても話し中だ。10回以上かけて、やっとつながった。
電話口の相手は疲れきった声で言った。
「もしもし。私、佐々木探偵事務所の佐々木誠也と申す者ですが、例の都内連続児童誘拐殺人事件について調べていまして……」
すると相手はうんざりした口調で、
とだけ言って電話を切った。マスコミや警察ならいざ知らず、探偵への対応なんてこんなもんだろう。さて、どうするか。いっそマスコミ関係者を騙ろうか。しかし、図書室やそこらに保存されているであろう、アルバムの現物を見せてもらわなくては困る。校内に入る時に身分証の提示くらいさせられるだろう。身分証の偽造? そんなスキル無いぞ。
「よし、学校に忍び込もう」
ちょっと卒業アルバムを見せてもらうだけだ。そっと忍び込んで、そっと出てくる分にはバレやしないだろう。
* * *
その夜、草木も眠る丑三つ時。俺は目立たないよう黒装束に身を包んで、件の高校の校門前に立っていた。校門は柵で閉じられているが、高さは2mもない。よじ登ろうと思えば、よじ登れる高さだ。俺は周囲に人が居ないことを確かめると、サッと柵を超え校内に侵入した。
人目を避けて校舎の裏手にまわる。ガラス窓が一つあった。施錠されているが、何の変哲もないクレセント錠だ。俺は背負ってきたリュックの中からマイナスドライバーと釣り糸を取り出した。サッシの隙間にマイナスドライバーを突っ込んで広げ、先を結んで輪っかを作った釣り糸を滑りこませる。その輪っかを錠に引っ掛け、引っ張れば……
ガチャリ。音を立てて鍵が開いた。順調極まりない。窓を開けて校舎に侵入した。俺って天才じゃなかろうか。
その時の俺には、最初に校門をよじ登った時点でモーションセンサーに引っかかっており、警備会社から警備員が急行している途中だとは思いもよらなかった。
俺は校舎をうろついて、図書室らしき部屋を見つけた。鍵がかかっていたが、ただの引き戸だったので力技で扉ごと外して中に入った。目当ての卒業アルバムは図書室の一番奥の棚にあった。高橋圭一の卒業した年のものを抜き取る。後は彼の写真と付きあわせて確認するだけだ。
カツン。
図書室の外の廊下から足音が聞こえた。心臓が飛び上がった。カツン、カツン、カツン……こちらに近づいてくる。
「おい、扉が外されているぞ」
「本当だ」
なんてこった。懐中電灯を持った人影が二人、図書室に入ってきた。おそらく警備員だ。
「誰かいるのか!」
俺は卒業アルバムを抱えたまま息を潜めた。どうしようどうしようどうしよう。
二人組のうち、片方が入り口の前に立ち、片方が部屋を調べるために中に入ってきた。出入口は一つのみ。逃げ場は無い。
薄暗くて二人の姿はぼんやりとしか見えないが、間にある関係ははっきり見える。上司と部下だろう。部屋に入ってきたのが上司で入り口を固めているのが部下。しかし、違和感がある。これはむしろ、義父と義理の息子の関係か? たまたま同じ会社に家族で? いや、この関係はもっと後ろめたい何かでは……?
部屋を改めていた警備員がこちらに近づいてくる。あの本棚の角を曲がったら、俺の姿が見えるだろう。俺は隠れていた本棚の影から飛び出した。
「あっ、待て!」
警備員が懐中電灯で俺を照らす。俺は顔を見られないように手で隠しながら、叫んだ。
「おい、おっさん! あんたの部下、娘さんのことヤリ捨てしてるぞ!」
「なななななんでそれを!」
思いっきり狼狽える部下。その隙をついて、彼に体当たりをぶちかます。お互い派手に転倒するが、すぐさま立ち上がって猛ダッシュ。後ろでは警備員の二人が、お前だったのかとか、知りませんとか押し問答している。
侵入した時に使った窓から外に出て、来た時は気づかなかった裏口か校外に出た。怪しまれない程度に走って高校から距離を取る。20分ほど走って、もう十分だろうという所で一息ついた。
「盗ってきてしまった……」
ええい、やってしまったのは仕方がない。それもこれも、凶悪事件を解決に導くため! 結果オーライってことになるさ!
* * *
佐々木探偵事務所。占い屋の看板を下ろして、俺は事務所に新しい看板を掲げた。浮気調査專門の探偵をやることにした。人探しや素行調査も請け負おうかと思ったが、やはり浮気...
占い業はすぐ廃業した。あの占い屋に行くと必ず別れるという噂が立って、客足がぱったり途絶えてしまったからだ。また借金だけが増えた。 「はぁ~。もう死のうかな」 隣で...
統合失調症。ありもしない幻覚や幻聴に悩まされる精神の病気。認知の歪みから被害妄想に陥ることもある…… 読んでいた本を机に投げ出し、俺はソファに横になった。アパー...
お婆さんを助けたせいだ。俺は今わの際にそう思った。俺は佐々木誠也26歳。情けないことに、こうして自死を選ぶ。それもこれも、あのお婆さんのせいだ。 あれは俺が大学...
連載やるならカテゴリ機能を使えばいいよ。 タイトルの最初に[連載増田小説]とか付けとく。
なるほど
起が終わって承に入っているわけだが、さっぱりブクマもトラバもつかない。 誰も読んでいないのではないか。 つまらないかな…… 誰か一人でも続きが読みたい人がいるなら、続きを...
文章あまり上手くないなーと思いつつ、新聞小説を読む気分で楽しんでいる。 めちゃくちゃ面白いわけでもないが、これまで主人公の立場が二転三転して、続きが気になるようにはなっ...
もう少し我慢して書けよ・・・
自分の芸術作品をひと目が多いからという理由で迷惑も顧みず投降してしかも文体そっくりの奴がトラバつけてたらくっせぇなぁ自分のブログでやれと思われるのは当然だよな
増田ではどんどん流れていくし他のエントリもあるんで小説投稿には向いてない。 なろうにでも同時に上げてくれよ。
事務所兼寝床に帰ってきた頃には始発が動き出す時間になっていた。興奮冷めやらぬままソファに腰掛ける。リュックから盗ってきた卒業アルバムを取り出した。パラパラとめくる...
結局、不自然な言動をしたのは独身寮に住んでいた田中一人だった。翌日から俺は彼の寮の前に張り込みを始めた。朝、日の出前に起きてチャリで一時間かけて彼の最寄り駅まで。...
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。これはいくらなんでもやばい。ソファに横たわる女を横目...
暴力の効果は絶大だった。拳を三回腹の上にふり降りしてやると、先程までの騒動が嘘のように西織あいかはおとなしくなった。今ではソファの上でぴくりともしないでいる。 「手...
写真の中の高橋圭一には、今も手錠で作られた鎖ががんじがらめに絡まっている。もう一方の鎖の先は、共犯者に繋がっているものだと思っていたが…… 「冤罪、か」 翌日、俺...
夜、俺は昨日西織あいかを送り届けたマンションの前に立っていた。一応自分の事務所の様子を遠巻きに見てきたが、やはり警察の捜査が入っていた。サングラスにマスクなどとい...
鼻の奥にツンとした血の臭いを感じて目が覚めた。目を開けるとさっき見たようなマッチョの男の顔が見えた。同一人物かどうかは分からないが。 「目を覚ましました」 ほっぺ...
床に這いつくばったまま、俺は自分の能力について詳しく説明した。 「信じられないだろうから、実演して見せてやるよ」 さっと目を走らせる。男ばっかりかと思っていたら一...
さっさと続き書けよ