事務所兼寝床に帰ってきた頃には始発が動き出す時間になっていた。興奮冷めやらぬままソファに腰掛ける。リュックから盗ってきた卒業アルバムを取り出した。パラパラとめくると、クラス集合写真の載っているページを見つかった。ポケットから高橋圭一の写真を取り出し、ページにかざす。
高橋圭一の写真からは、今も四方八方に無数の関係が伸びている。その内の一本が、集合写真の上に伸びている。まず一人。期待通りだ。俺は全クラスの写真から、高橋圭一と関係を維持している数人を見つけ出した。
夕方まで一眠りすると、同じく卒業アルバムから見つけた電話番号を使って、さっき見つけた高橋圭一の元同級生達に電話をかけた。何気ない卒業アルバムの持つ情報としての価値の高さに驚く。そりゃあ個人情報保護が厳しくなるはずだ。
「もしもし、私、佐藤君のクラスでクラス委員をしていた佐々木と申します。覚えておいででしょうか?」
「は、はぁ……」
覚えているはずがない。佐々木というクラス委員が居たのは本当だが、卒業アルバムの写真の上で、二人の間には一切の繋がりがないのは確認済みだ。
「佐藤君とは同じサッカー部のチームメイトとして、仲良くやっていたのですが。話にだけでも、聞いていませんでしょうか?」
二人がサッカー部だったというのも本当だ。
「それで、ご用件は何でしょうか?」
「高橋君のニュースは聞いてますよね? ほら、僕達、元同級生として高橋君には特別な思い入れが……今回の事には、みんなショックを受けていまして。一度、ケジメと言いますか、僕達で集まって、話しておこうということになりまして……それで、佐藤君の今の連絡先をもらえませんか?」
同様の手口で狙いをつけた元同級生、全員分の住所を手に入れた。
* * *
週末。洋服の青山で買い込んだ安いスーツに身を包み、俺は調べをつけた元同級生達の元を訪ねてまわっていた。全員高橋圭一と同じ年齢で、31歳だ。同じ高校を卒業したはずなのに、それから十年以上も経つと二人として同じ人生を送って来なかったのが分かる。幸せな家庭を築いている者、そうでない者。卒業アルバムの中で凛々しい顔つきの少年が、立派な中年に育っていたり。
これから訪れるのは都内大手企業の独身寮だ。目的の部屋を見つけ、インターホンを鳴らす。
やがて、くたびれたトレーナー姿の男がドアを開けて顔を出した。
「田中さんですね。私、こういう者なのですが……」
俺は懐から『警察手帳』を取り出し、彼の目の前に掲げた。マスキングテープとステンシルを活用して、それっぽい黒い手帳に旭日章と警視庁を金字でスプレーしただけの偽造警察手帳だ。何度も作り直してやっと完成した。力作だ。このタイプの警察手帳はもはや使われていないそうなのだが、疑われることはなかった。
「警察の方が、何の用ですか?」
いかにも警戒している。そりゃ突然訪問してきた警察なんて、歓迎はされないだろう。俺は偽造警察手帳を懐にしまい、代わりに高橋圭一の写真を取り出した。
「ご存知でしょうが、高校の元同級生だった高橋圭一が都内連続児童誘拐殺人事件の容疑者として取り調べを受けています。それで念のため、元同級生にもお話を伺ってまわっているんですよ」
「俺が何か知っているとでも?」
「いえ、全員に聞いていまして」
俺は、ちょっとすまなそうな顔をして言った。
「何も知りませんよ。高橋とは、卒業以来会ってもいない。別の世界の住人でしたから」
「そうですか。ご協力ありがとうございました」
俺は頭を下げて、その場を後にした。
彼は嘘をついている。俺の目には高橋圭一の写真から彼へ繋がる関係が見えていた。十年以上昔の元同級生などという、弱々しい関係ではなかった。それは、警察に嘘をついてでも隠さなければならないような関係だ。さて、一体何を隠しているんだろうね?
* * *
さて、この事件を捜査すると決めたのはいいが、何から手を付けたらよいものか。まさか高橋圭一の写真を持って、鎖の先に繋がっている共犯者が見つかるまで街をうろつくわけに...
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連載やるならカテゴリ機能を使えばいいよ。 タイトルの最初に[連載増田小説]とか付けとく。
なるほど
起が終わって承に入っているわけだが、さっぱりブクマもトラバもつかない。 誰も読んでいないのではないか。 つまらないかな…… 誰か一人でも続きが読みたい人がいるなら、続きを...
文章あまり上手くないなーと思いつつ、新聞小説を読む気分で楽しんでいる。 めちゃくちゃ面白いわけでもないが、これまで主人公の立場が二転三転して、続きが気になるようにはなっ...
もう少し我慢して書けよ・・・
自分の芸術作品をひと目が多いからという理由で迷惑も顧みず投降してしかも文体そっくりの奴がトラバつけてたらくっせぇなぁ自分のブログでやれと思われるのは当然だよな
増田ではどんどん流れていくし他のエントリもあるんで小説投稿には向いてない。 なろうにでも同時に上げてくれよ。
結局、不自然な言動をしたのは独身寮に住んでいた田中一人だった。翌日から俺は彼の寮の前に張り込みを始めた。朝、日の出前に起きてチャリで一時間かけて彼の最寄り駅まで。...
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。これはいくらなんでもやばい。ソファに横たわる女を横目...
暴力の効果は絶大だった。拳を三回腹の上にふり降りしてやると、先程までの騒動が嘘のように西織あいかはおとなしくなった。今ではソファの上でぴくりともしないでいる。 「手...
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夜、俺は昨日西織あいかを送り届けたマンションの前に立っていた。一応自分の事務所の様子を遠巻きに見てきたが、やはり警察の捜査が入っていた。サングラスにマスクなどとい...
鼻の奥にツンとした血の臭いを感じて目が覚めた。目を開けるとさっき見たようなマッチョの男の顔が見えた。同一人物かどうかは分からないが。 「目を覚ましました」 ほっぺ...
床に這いつくばったまま、俺は自分の能力について詳しく説明した。 「信じられないだろうから、実演して見せてやるよ」 さっと目を走らせる。男ばっかりかと思っていたら一...
さっさと続き書けよ