2014-02-24

”「若作りうつ社会”(シロクマ先生の新著)を読んだ。

要約

此の本は歳相応に生きることが何故難しくなったのか、其の結果どんな問題が起きているかをまとめた本である。では歳相応に生きることが何故難しくなったのか。それは私達が外部の目という日本空気=抑圧と強制力がなくなり、自由な生き方が可能になったから。が、その自由を持て余し、欲望のままに浮付いた生き方を、或いは若い頃と同じ生活スタイル意識生き方をしてしまうから村社会相互監視社会空気から逃れた先に新たに生まれた問題点とは、社会的適応人間関係アイデンティティ確立のためにコミュニケーション能力重要性が飛躍的に上がったことによりコミュニケーション能力自由競争についていけなかった人間孤立を深めていってしまう点である。ではその解決方法は。筆者は暫定解として老、死を前提とした人生の再設計を行い、世代コミュニケーションを大切にすることを説く。

共感

人生の有限性を意識するべき、という視点には強く共感する。メメントモリ人生は有限で、しか若さ期間限定永遠ではない。私達は老いて死ぬのだ。いや、老いて死ぬことすら出来ないかもしれない。今自分の身体の何処かで癌が進行していないと誰が教えてくれる?私達は普段死を目にすることはない。現在日本社会では生の始まりと終わりは殆ど病院で起こる。しか明日健康である保証など何処にもない。健康寿命タイムリミットは刻一刻と迫って居る。今日一日をどう生きるのが私にとって最善なのか、私の生きがいは何なのかを意識し、思考することの積み重ねこそが来るべき終わりをせめて受け入れやすくしてくれる手段だろう。健康寿命が終わった時にやり残した事が少しでも無いように生きたいのだ。刹那主義にならず、ニヒリズムにも陥らずにそれでも前を向いていく事は難しいが、同じ問題意識を持った者同士で支えあう事ができたら少しは生きやすくなるかもしれない。(余談だがそういう意味において私の将来のパートナーはきっと医療関係者になるのだろうな、と予想している。同世代20代に私が感じる死への自覚と切迫感を共有できるのは死を日常的に触れる機会のある人だと思うからだ。)

疑問点

コミュニケーション能力が足りない人が苦しむのと、日本の村の空気に圧迫されるのと何方が辛いだろうか。私は日本空気による強制の方がデメリットが多いのではと思う。また昔の「歳相応」に生きた人達は私達より幸福だったのか確信は持てない。

あとサブカルチャーの章で戦後メジャー少年漫画一覧が挙げられて居るけど、2000年代代表ONE PIECEが挙げられて居ないのは不思議。売上的にもトップのはず。あとさよなら絶望先生2000年代代表する漫画かな?いや私は大好きな作品ですけど。選定基準が知りたい。

三つ目の疑問点としてどういう経緯でこのタイトルになったのか。「若づくりうつ」という単語殆どの読者にとって初めて見る単語のはず。実際それなりに医療系に関わっている私も初見単語だった。造語ではないそうだが。

あと帯にオタク出身精神科医!と書かれている割にサブカルへの言及は割と控えめだった気もする。私が帯担当だったらシロクマ先生オタクである事を強調するんじゃなくて"ロスジェネ世代の〜"と書いたと思う。

最後にちょろっと

新書を買うならイケハヤ炎上本読むより比べ物にならないくらい有意義時間が過ごせるので皆こっちを買って感想ネットに上げてくれると嬉しいな、って。

  • >その自由を持て余し、欲望のままに浮付いた生き方を、或いは若い頃と同じ生活スタイルと意識の生き方をしてしまうから。 余裕がある人はいいですね。自分は金も体力も若いころよ...

  • 勢い読みした感想 「歳相応」という世の中の空気によってパターン化された年代のモデルが崩壊。 好きに生きられるようになった結果、若いころのママで居る人が増えて、コミュニケー...

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