他部署の人間で、1歳年下の後輩。交際3年程だ。
普段、陽子の所属する部署と僕らの部署の人間は直接顔を合わせることはあまりない。
とある大きなプロジェクトのメンバーとしてたまたま僕と陽子がそれぞれ選抜され、2ヶ月間ほど協力しあい問題を解決しているうちに僕らは親しくなった。
僕は同僚に言うのが気恥ずかしくて黙っていたのだ。
自分で言うのもおかしいけど、僕は全然イケメンじゃない。中肉中背・顔もブサイクでもないと思うけど、外見的な特徴としては中の中レベルだと思ってる。オシャレセンスとやらもあまり自慢できない。
一方、陽子はそれなりに目立つ存在なのだ。清楚系美人で、僕と同期の野郎たちにも人気だった。
そんな僕と陽子が付き合ってる事を皆に言うのはちょっと恥ずかしかったのだ。社内のとある人間から猛烈アピールをうけていた陽子は、彼への牽制もこめて皆にオープンにしようと提案してきたのが1年半ほど前。
いまでは周知の事実となっており、ときたま冷やかされるものの、ありがたいことに会社の方々には好意的に受け取って頂いているようだ。
そんな僕と彼女の話。
仕事はそれなりに満足してる。残業も多いけど、この不景気にしては恵まれた職場環境だと感謝したいくらいだ。
仕事はバリバリ良く出来て、面倒見も良くて部下からの信頼も厚い。男の僕から見てもイケメン。
仕事に対しては厳しくて、僕もきついダメだしをしょっちゅうもらうけど、嫌いな人ではない。
既婚者で幼稚園に通うお子さんがいるらしい。以前、自宅に招待して頂いた際に紹介していただいた奥さんも可愛かった。
そんな上司(『桜井』:仮名)から先月、僕の携帯にメールが届いた。
メールを受信したのは深夜のこと。朝、目が覚めてメールを確認した時は意味がわからなかった。
寝ぼけた頭がその瞬間冴えてきて、不安な気持ちに包まれたのを覚えている。
(『夢』って?『キスしたこと』って?陽子と桜井課長がキスしたの?)
(『4L』って、社内のあの場所?)
うちの会社では社員用の個室がいくつか用意されていて、空室ならば申請などせずに自由に使える。
1人用の部屋もあれば、10人くらい入れる部屋もあって、一人で集中したい時に予備校の自習室のような使い方をしたり、社員同士のちょっとした打ち合わせに使用している。
『4L』ってのはその部屋の名称の一つ。
もちろん「送り先間違ってませんか?」なんて返信もできず、混乱した頭のまま会社へ。
「今日どんな顔して桜井課長と会えばいいんだよ」と思いつつも、上司がいつも通り接してきたので不思議と僕も動揺を見せることなく仕事を終えた。
仕事終わってから陽子と外食。当然、メールのことは気になってたけど、誤解かもしれないと思って触れられない。
おそらく陽子に送るメールを僕に誤って送ってしまったのだろう。
これも仮名だけど、
ってな感じで、僕らは苗字が似てるんだ。一文字目の漢字が一緒。おそらく携帯のアドレス帳では上下に並んでるんだと思う。
気にはなるけど、陽子には聞いちゃいけない質問だと思った。そして聞く勇気もなかった。
もちろん彼女を信じたいし、誤解だと思いたいので、「これは『江田さん』という同じ名字の別人だ」とか考えるけど、『4L』なんて単語が出てる以上そんな楽観的な考えもできずに出てくるのは悪い想像ばっかり。
高校生でもあるまいし、もし本当だとしてもキスくらいなら許してやれといわれた。
そういうもんなのだろう。
信頼してるなら彼女に直接聞いてみればいい、とも言われたけど、僕はもし真実だった時のことを考えると怖かった。
10日間ほど進展もなく過ぎていった。
週末は陽子とデートした。二人でいる時はメールのことなんか意識することもなく楽しかった。
平日は悶々としたまま普通に仕事をした。それほど仕事量の多かった週ではないのに何故か毎日疲れた。
このまま、事はウヤムヤでもいいやと思っていた。
金曜の夜、少しだけ残業した。フロアには桜井課長と僕ともう一人同僚が残っていた。
帰り際、桜井課長が僕らをご飯に誘った。同僚は予定があるようで丁寧にお断りしてた。
狙うこともなく課長と僕は二人でご飯を食べに行くことになった。
部署の人間と昼食を一緒にとることはよくある。課長と昼食を二人きりで食べに行くこともしばしば。しかし夕食を二人で食べたのは過去数えられるほどしかない。
最初は仕事の会話だったけど、お酒が入ってからはお互いくだらない雑談だった。その日は一つ仕事をやりきった達成感もあって、楽しい時間だった。例のメールの件は聞く気もなかった。
僕はアルコールにそれほど強いわけではない。程良く酔っ払ってきた。ほろ酔いの気持ちいい気分の中で自然と口から言葉が出てた。
「かちょー、ちょっと前に僕にまちがってメールおくってきましたよねー。江田さんとキスしたんですかー?」
酔ってなければ絶対に面と向かって言えないことだった。
さっきまで笑ってた課長が真顔になってた。
僕もそんな課長の顔を見て、酔いが醒めた。血の気が引いた。
「ちょっとトイレ行ってくるから待っててくれ」課長が一言つぶやいて席をたった。
・僕が陽子と付き合ってるのを知りながら、卑怯なことをして申し訳ない。
・無理やりキスしたわけではないが、僕のリードでキスをしてしまった。江田さんは悪くない。
僕は黙って話を聞いていた。
謝罪と説明が終わってから「彼女へは僕から直接話をしたいので今日のことは伝えないで欲しい」と言った。
課長のことは許すことができませんが正直に話してくれたことには感謝します、僕はこのことはこの場をもって忘れようと思うので、仕事は今まで通りの関係でお願いしますと伝えた。
課長は謝罪の言葉を繰り返し、頭を下げたままだった。こうして途中まで楽しかった夕食は終わった。
許してしまう雰囲気だったのか?罵倒して殴ればよかったのかもしれないけど、僕はなぜかカッコ付けた。
もっともカッコ悪いのは僕だった。
・打合せしているうちに変な雰囲気になって、ついキスされてしまった。
・拒絶するべきだったのに、なぜか断らなかった。本当にごめんなさい。
・桜井さんとはそれきりで、社内でもふたりきりにはなってない。
・僕には申し訳なくて言えなかった。
・愛してるのは僕だけだ。
僕は陽子に別れを伝えた。
陽子は涙ながらに謝罪し、許してもらえるまで待たせてほしいと言った。
僕は待ってても無駄かもしれないと伝えた。
うまく整理できなんだけど、
話をしてくれなかった彼女への怒り > 不甲斐ない自分への怒り > 彼女にキスをした上司への怒り
ってな順番なんだと思う。
彼女が僕に伝えなかったのは、僕に対する優しさなのかもしれない。
黙っていたほうがいいこともある。心配させたくないという心遣いかもしれない。
分かっているけど、僕はそれを素直に受け入れるほど心が広くなかった。
僕は子供なんだと思う。
課長から僕へのダメ出しは少しだけ減ったような気もするが、事件前と関係は大して変わっていない。
彼女とは社内で普通に挨拶くらいはするけど、プライベートで会うことはなくなった。
「本当にごめんなさい。もう一度お話をしていただけますか?元の関係にはもどることができないと思いますが、もう一度チャンスを下さい」
僕はすぐ返信した。
「ごめんなさい」
ここに書いたのは文章にすることで心の整理をつけられるかと思ったから。
そして、今回の最大の収穫は自分の心の狭さがよくわかったこと。
メールの送信先には気をつけてください。
皆さんはこれくらいなら許してあげられるよね?
チャンスを与えてあげられるよね?
許すかといわれれば多分ゆるす ただそれ以上に、分不相応だった関係が対等くらいになると思えばそのくらいの器量は出て来るきがする
許すかといわれれば多分ゆるす ただそれ以上に、分不相応だった関係が対等くらいになると思えばそのくらいの器量は出て来るきがする
女ざまぁあああああああwww めしうまwwwww ( '‘ω‘`)
イスラム文化圏なら女はムチ打ちにされてるところだぜ。 ( '‘ω‘`)