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エクセルで世界トップ 学生大会、日本の高校生初 北九州の高2
MOS世界学生大会のエクセル部門で世界1位になった八幡高2年の中園愛美さん=北九州市八幡東区の八幡高で、2021年12月23日午後1時35分、宮城裕也撮影
2021年11月にあった米マイクロソフト社のパソコンソフトの操作技術を競う「マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(MOS)世界学生大会2021」で、福岡県立八幡高(北九州市八幡東区)2年の中園愛美(あみ)さん(17)が、表計算ソフト「エクセル」部門で世界1位となった。日本の高校生が同大会で世界の頂点に立つのは初めて。「目標に向かって努力を続けたから本番で実力を発揮できた」と喜んでいる。
大会には108カ国の高校・専門学校・大学生ら20万人超の学生がエントリーし、11月9~11日の決勝戦には各部門合わせ33カ国の160人が出場した。新型コロナウイルスの影響で初めてオンラインで実施され、エクセル部門は3時間半の間に、操作の正確性や、データを収集・分析し図表などを用いてリポートを作成する技術を競った。
「誰もがパッと見て伝わる資料作りを心がけている。ここまで準備したから大丈夫と思い不思議と緊張はなかった。高校生の自分の体験を交えた視点が良かったかもしれない」と中園さん。
小学校の頃からパソコンインストラクターの母が勤める教室に立ち寄り、自然とパソコンに親しんだ。小学6年の時にタイピングの早さと正確さを競う「毎日パソコン入力コンクール」(毎日新聞社など主催)の全国大会で優勝し「努力する楽しさをこの時に学んだ」と振り返る。
八幡高に入学直後、1週間ほどの入院や新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休校で部活動に入りそびれた。部活に励む同級生がうらやましく「自分も頑張れるものを」と21年春、マイクロソフト社のパソコン資格認定試験に挑戦し合格した。その試験の合格者は世界大会に出場できる。「世界を舞台に力を試すことなんてめったにない。チャンスを逃して後悔したくない」と出場を決意した。
学業と並行して毎日1時間の大会対策を重ねて多くの関数やグラフのパターンを習得し、トップに輝いた。「将来はまだ決まっていないがスキルを生かして人の役に立つことができたら」と新たな希望を抱いている。【宮城裕也】
生活保護を受けたいのに受けられない――。高齢化や雇用の不安定化などで全国的に生活保護受給者が増えるなか、かつて全国トップだった保護率(人口あたりの生活保護受給者)が、厳正な審査で全国平均並みになった北九州市で、生活苦にあえぐ独居老人の叫びを聞いた。
◆所持金319円、かつお節がおかず
「苦労を積み重ねてきたあげく、この有り様です」
小さながま口から、うちわの上にぱらぱらと小銭が落ちた。郵便ポスト型の貯金箱から取り出した小銭と合わせると手持ちの現金は、319円。
八幡東区の古びた平屋で独り、年金生活を送る女性(79)は、丸めたティッシュで目頭を押さえた。
食事は、「小さなパックのかつお節を2回に分けてご飯にかけるだけ。これに大根おろしがあればいい方」という。米びつを見ると、底をつきかけていた。
ガスはすでに止まった。女性は、手で口元を覆いながらつぶやいた。
「銭湯に行けても月に1度。家で携帯用ガスコンロで湯をわかし体をふいている」
暦の6月15日の欄には、青ペンで「電気代」と振込期日が記されている。これを過ぎると、電気が止められるのだという。
月2万円の家賃は2か月分滞納している。
「大家の奥様は、大目に見てくれる。でも、大家からは『女房がおとなしいからといって調子に乗るな』と言われた」
女性は歩くとき、左手を背に回す。自宅前の土手で5月11日、草むしりをしていて転倒し、背中を強打した。「薬が買えないから、こらえている」
◆家賃などを除くと月1万円の生活
鹿児島県霧島市出身。女性が30歳の時に、会社員の夫が病死した。小学生の息子2人は、牛乳・新聞配達をしながら通学したが、高卒後に独立すると、生活の不安はいったん消えた。
女性は、1978??79年当時のアルバムを開いた。金融会社の社長秘書をしていたといい、ドライブ先の熊本県・阿蘇で、乗用車をバックにしゃれたワンピース姿でほほえんでいる。
生活基盤が揺らいだのは10年前。友人が約350万円を借金したまま姿を消し、保証人になっていた女性の職場に借金取りが押しかけてきたという。
2か月に1度振り込まれる14万9000円の年金を担保に、銀行から140万円借りて返済に充てた。生活に困ったが、この時は、生活保護を受給できた。
ところが一昨年、台風で壊れた家の修理費と高血圧を抑える漢方薬代がかさみ、再び年金を担保に95万円借りた。
返済のため、手にできる年金は、2か月あたり7万9000円にダウン。6月15日にそれが振り込まれたが、「たまった家賃などを差し引くと手元に残るのは2万円足らず。これで2か月耐えるのです」。
「市内に3人の妹が住むが、うち2人が生活保護を受け、自分の生活で精いっぱい」。2人の息子も余裕がないという。
長男は、声を震わせ弁明した。
「息子は大学に通い、長女は失業中。自分も職場を移ったばかりで薄給だ。妻も含めて4人で狭い市営住宅に暮らしていて、母を引き取れないんです」
女性は糖尿病と高血圧で働けない。昨年11月と今年3月、区役所保護課に生活保護を申請したが、いずれも却下された。
年金担保貸し付けを利用しながら保護を受ける行為は、1度に限るという規定に触れた。「現状は急迫していない」と判断されたことも理由という。
女性は、「貸し付け利用は不注意だった。でも、この暮らしのどこが急迫していないというの」と訴えかけた。
◆生きる自信失い
八幡東区役所の保護課を訪ねた。保護課長は、生活保護の規約集を片手に、保護申請者のためのブースに姿を現すと、「個別のケースは言えないのであくまで一般論を話す」と強調した。
課長はまず、年金担保貸し付けと生活保護を繰り返し併用できない原則を説明した。
「貸付金をギャンブルや借金返済などに使い、困窮して保護を受けたら、保護費は実質的に借金返済にあてられたことになる」
借り入れの利用が、社会通念上、真にやむを得ないか、申請者が急迫状態でない限り保護できないという。
課長は、確信に満ちた口調で続けた。
「家族が近くにいて援助するとか、民生委員などが見守るとか、急迫していないと判断する理由があったはず。ただ、状況が変われば保護することもある」
確かに、女性宅の台所には、民生委員が差し入れたというジャガイモやニンジンがあり、女性は、「これで1週間は食べていける」と話していた。
だが女性は、「自殺を図ろうと右手首を切ったことがある」と明かしていた。10針縫った跡は生々しかった。「周囲に迷惑をかけずに生きられない自分は価値がないと思い込んだ」
女性は、ただ食べて命をつなぐことはできるかもしれないが、孤独と自信喪失で心理的には急迫している。そんな晩年を送る人々に、行政は手を差し伸べられないのか。疑問が消えないまま区役所を後にした。
http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/rupo/0706/ru_706_070628.htm