2021-01-24

新聞を取る阿呆と取らない阿呆

先ほど、面白いツイートが私のTLに流れてきたので私見を述べる。

新聞、月5,000円も払って昨日のニュースが紙で届くってやばいな』(原文ママ)

このツイート自体は確か面白いな、と一笑に付したが、そのツイートには大量の同意・賛辞のリプライがぶら下がっていた。

"5,000円で油を取る紙を買っている"

"たしかに、今どき新聞なんて古い"

"ぼったくりだ"

やはりこういう意見は少なくないな、と気づかされる一方で一つの疑問が浮かんだ。

"この新聞批判をしている方々の何割が自分の金で新聞を購読している、ないし購読したことがあるのだろうか?"

というものである


私は某紙で新聞記者をやっている。

夜討ち朝駆けという言葉は古い価値観かもしれない。しかし、身を粉にして社会情報のものを自らの五感で直接インプットし、それを文字アウトプットする。そんな自分仕事やりがいを感じ、自身ジャーナリズム精神にも誇りを持っているつもりだ。

それでは「新聞こそが公正で正確な情報を素早く伝えるツールとして最も優れている!」と言いたいのか、と聞かれると答えはNOである

インターネットメディアの急速な発展と共に情報世界を巡るスピードは目に見えて早くなった。

地球の裏側で起きていることがリアルタイムで手元の端末で確認できる。

何十年も前の『正確・早い・多い』という新聞優位性を持っていた情報三種の神器は既に別媒体(主にインターネット)に負けているのだ。

実際に私も

こんな記事を書きたいからこういう方からこんな話を聞きたい、と結論ありきの取材を行い結論ありきの記事を書いたこともある。

上司からこういう紙面を作れ、と命令を出され自分が紙面に載せたい情報を翌日に回したこともある。

新聞記事には、偏向とまではいかないまでも記者自身会社自体の色眼鏡を通したバイアスがかかっているのだ。

しかし、「新聞こそが公正で正確な情報を素早く伝えるツールとして最も優れている!」わけではないにしろ「読む価値があるか」と言われれば声を大にしてYESと叫ぼう。阿呆でなければ。

なぜならば、新聞紙の必要性を語る上で最も大切なのは、その色眼鏡の良し悪しだからである

新聞は、政治右派左派経済の支持不支持社会記事の着目点。会社によって特色があり、多くの記事記者名前が載っている。それぞれの記事会社としての社会的責任と個人としての社会的責任を抱えた上でなんらかのバイアスをかけられて掲載されている。

しかし、これは新聞に限った話ではない。

そもそも情報というのは全てがそうなのだ

自分で直接見聞きしたものを除いて、新聞ニュースSNS・人伝の情報に至るまで。

全てがその経路の中であるいは削られ、あるいは付与され、或いは歪められるのだ。ここに例外はない。

新聞記事の優位性はその経路の希少性にある。

(手前味噌ではあるが)優秀な能力を持った記者が他にはない一次ソースから仕入れ情報提供する。

眼鏡を通しての内容であることを理解さえしていれば極上の情報であることに違いはないだろう。

さて、私が言いたいのは「新聞を取れ」ということでは断じてない。

なぜならば、そもそもその色眼鏡に対して価値を置いていない人間(以下、阿呆)には新聞というのは豚に真珠もいいところだからだ。

阿呆はいいように削られ付与され歪められた情報を信じ哀れにも踊らされる。新聞を読んだとしても、新聞に踊らされるだけだ。

TwitterでもFacebookでもYahooニュースでもまとめサイトでもYouTubeでもテレビでも新聞でもなんでもいい。

あなた情報を入手しているツールはどれほどまでに信頼できるものなのだろうか?

そもそも新聞の特長を情報の正確さ・スピードだと考えている人間にはどれほどの情報リテラシーがあるのだろうか?

私が投げかけたいのは、そういうことなのだ。

さて、こういうのは自分大丈夫だ、と思っている人間の方がよっぽど危険だ、というのはよくある話で。

特にこの記事を読んで

「なるほど、確かにその方面で働いている人は正鵠を射た発言をするなあ」

なんて感心した人は特に注意が必要である

そもそも、この記事の冒頭に引用させていただいているツイートリプライ欄には、新聞不要だとする内容と同じくらい、新聞必要性について肯定的意見を述べているツイートがあるのだ。

いったい、この記事を読んだ内の何割が

原文ママと書かれてあるが本当に元ツイート存在するのか"

と疑問に思い確認し、

"それに対する意見は実際にはどのようなものなのか"

とそれを検証しただろうか?

改めて、私が言いたい情報リテラシーとは、そういうことなのだ。

阿呆は鏡の向こうにいる。



ちなみに、そもそも私は新聞記者だ、というのも真っ赤な嘘である

以上。

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