老いに対する恐怖ではなく、文字通り「オバさん」という存在に自分がなることが猛烈に怖い。
「あなたは今日からオバさんです!もう若くないですよ!」と定年退職のようにスパッと自らがオバさんであると認識できる仕組みがあるならいい。
でも、オバさんって無意識だ。
すごく尊敬していた年上の友人がいる。それなりに賢くて(賢いと思っていた)理知的で自分の意思がしっかりある人。
小さいことから自らに関係ない世の中のゴシップ、あと「結婚」が異様に地雷のようで、テレビ番組の家族団欒特集やウェディング特集に常に怒っている。見なきゃいいのに。
「こんなことも知らないんだw」と周りに自らの薄い知識を開けかすようになった。
「軽い気持ちで●●を見たら後悔するよ( ;´Д`)」 その作品、割と有名だし、そこで優位に立ったところで誰が得をするのか。
「これだから老害は!」「これだから若い子は!」自分と同じテリトリーに属さない人間をいつだってひとくくりにして批判するようになった。
以前はこんな人じゃなかった、と思う。
少なくとも、楽しそうだった。イキイキしている彼女が、何事にも捉われず自由に生きている彼女が好きだった。
「老害」「新規」を叩き、様々なものを阻害する、まさに「オバさん」だと思う。
現実でもインターネットでも若い人間に異様に物事を教えたがったり、はたまた異様に忌み嫌ったりする割と年配の女性というものは一定数存在する。
自らの界隈ではないので詳細は不明だが、先日とあるベテランアイドルグループの中学生くらいのファンの女性に、デビュー当時からのファンを名乗る女性が長文で「若いファンのこういうところが嫌い。あなたたちが私たちに擦り寄ってきてくれれば私たちはデビュー当時の貴重な映像や音源なんかをあなたたちに無償で提供してあげるのに」といったような文章を送りつけているのを見かけた。
ドン引きした。「ドン引き」という言葉でしか形容できないほど気持ち悪く、まさに「オバさん」的であると感じた。
自らの娘と同世代、下手したら孫世代でもおかしくない子供に対してだ。(しかも中学生くらいの女性本人はマナー違反等をしたわけではなく、「どうして新規が嫌われるのだろう?もっとみんなと仲良くしたい!」といったような純粋な呟きがトリガーとなったようで、彼女はそれを批判するでも煽るでもなく「そうか!こうすれば昔からのファンとも仲良くできるんだ!」とはたまた純粋な気持ちでインターネットにその婆オタクから届いたメールを載せたらしい。気の毒だ。)
そんな純粋無垢でまだわからないことの方が多い若い年齢の人間にムキになって何が楽しいのだろう。
若い子と若くない大人と住む世界が違う、と許容して、攻撃するくらいなら関わらなければいいじゃないか。
短いスカート、ヘアメイク、ネイルアート、派手な洋服。何が悪いんだ、なぜ私たちは私たちの何も知らないただ私たちより年が上というだけのオンナに見下され、「これだから若い子はw」なんて言われなきゃならないのだ。
女子高生は身なりは派手でも、好きなものを着て自分の好きなように生き、自分とは違う人間を怒っている暇がないくらい「自ら」の物語を謳歌している。
私より若いその子たちがとても眩しく、そういった存在を素敵だと思う。
「オバさん」はきっと自らなりたくてオバさんになっているわけでも、批評がしたくて物事を厭世的に見ているわけでもない。
きっと「オバさん」は無意識的に生まれてきて、自らが「オバさん」であることには気づけないのだ。
これが加齢や長く生きていることに対する弊害ならば私は歳をとることが怖い。
そして、彼女を受容することも直接注意することもできずこんな掃き溜めのような場所で愚痴を書いている私自身もまた、「オバさん」への道を少しずつ歩んでいるのだ。