はてなキーワード: 阿散井とは
ちょっと「柏崎美紀」という名前でググってみてもらいたい。おそらく、その姓でこの名前をつける親は今後いなくなると思う。それはリテラシーの問題としては、まあいいだろう(ちなみに百度でその問題は起きなかった)。
問題は今だ。「柏崎」姓で「美紀」さんという名前は、それほど奇異な組み合わせではなく、ひとりやふたりではないと思う。であるにもかかわらず、就職などに際して雇用者が求職者の名前を検索するというようなこの時代に、この会社と編集者は何を考えているのだろうか、それとも何も考えていないのか、瑣末な問題と気にも止めなかったのか、あるいはワニマガジン社にそういう名前の人がいて、一種の自爆芸のつもりだったのだろうか。
そりゃ、ヒロインの名前が「阿散井美紀」とか「日番谷美紀」とか、あるいは「柏崎鬱魅(うつみ)」とか「柏崎鏖虚(じんこ)」だったら、あまり気分は乗らないだろうとは思う。名前はキャラクターにとっては重要な要素である。リアリティのためにも「"実在しそうな名前"を持つ架空のキャラクター」の創造のために腐心する。「フジキド・ケンジ」はいいとして「ヤモト・コキ」はどう考えてもおかしいだろあれはそういう芸風だけど。その結果として、ハーレムラノベの主人公が自分と同じ名前でラッキー?な人がいたり、現実で嫌っている人と同じ姓の恋愛ゲームのヒロインが見た目は好みとかだったりとかいう悲劇が発生するわけだ(某軽音部4コマの主人公たちの名字は実在のミュージシャンに由来してるそうだが、個人的にはちょっと…)。そういうことは何かしら起こりうる。「骨川スネ夫」はなかなかのセンスだと思うが、すべての創作がそういう発想になるとあまりにも。
話を戻そう。そのキャラがその名前というのは、そう、ある意味では仕方ない。別の名前だったとして、また別の人とかぶるだけだ。"書名"にしたのがなによりまずかった("書名:『◯◯◯』、初出は『COMIC失楽天』掲載の漫画「柏崎美紀の…」"なら、まだこれほどのことにはならなかったように思う。せめて雑誌掲載時で止めておけば――だからもはや"手遅れ"なのだが……)。公にその書名で刊行すれば、こうなる、ということは予測してしかるべきだろうに、いったいなにを優先したのだろう? 未必の故意による検索汚染とでも言おうか、こういうことにも配慮できないと、かえって規制の圧力が強くなっていずれ「○野A美」みたいな名前しか使えなくなるんじゃないかな、という気がする。
もちろん、どこかの雇用者がその検索結果を見て、自分の会社の求職者がそういう性癖の持ち主である、などと誤解するような可能性はないと思う。では「現実と漫画の違いがわからないはずはない、実害はないだろう」って? どうだろう。からかいのネタにはなりそうだし、そもそもある女性が自分の名前をエゴサーチしたら「自分の名前が性的倒錯行為を行っている内容であろうことを容易に予測させる男性向け成年向けコミックの書名(=男性的な欲望の一種の表現)として検索結果にずらっと並ぶ」というのは、その女性の平穏な人生を送る権利の侵害のように思える。ひとたび刊行された以上、改題でもしたとて旧版の存在は残る。検索ポータルに申し立て、主だったところで排除してもらうしかないのだろうか。不確実だし、それにその申し立て、その労を本人が負担しなければいけないのか?(そういえば同姓同名の問題は「忘れられる権利」でも悶着があるなあ)
おそらく今回にかぎらず、そういうタイトルは今までもあったのだろう。しかしその時代にGoogleやTwitterの情報拡散力はどうだったか。「現代」の社会というものに適応した、相応のタイトルというものを考えるべきだった。今後もしばらくそのスタンスでいく必要があるだろう。表現の自由と個人の権利は、本来どちらかがどちらかに優越しているというようなものではなく、等しく認められるべきものだが、その利害が衝突した場合に、やむをえずいずれかを優先しなければならなくなるということはありうる。個人的には、今回のような"衝突"で「どちらをより配慮すべきか」と問われることがあれば、答えはひとつしかない。