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2015-11-25

夢小説、もしくは名前変換小説という名のラブレターインターネットしかない

私が見たぶんの、二次創作物としての夢小説、狭い範囲夢小説について話したいと思う。

はいえ、そんな狭い範囲においても、夢小説というものの幅は広い。名前変換小説、という別名をとるだけあって、「名前変換機能」がついている二次創作小説は、すべて「夢小説」と呼ばれる。JavaScriptダイアログでも、Cookieフォームでも、投稿SNSサイトホームページ作成サービス付属機能でもいい。


その形式。愛おしいあのダイアログは、そっけなく「苗字」「名前」、とだけ書かれたものもあれば、「御名前をドウゾ」「Please enter your name.」なんていう、意味はよく分からなくともすてきな言葉遣い

名前を変換する、という行為特別ものだ。

なぜならば――それはインターネット上で行われている。

すてきなもの同人誌即売会にある。オフラインにある。二次創作というものを知って以降、私はそう覚えこまされた。「オフ本を作りたい」と作家さんは言い、「やっぱり本になるといい」「ちゃんとしてるように見える」と言う、「差し入れありがとうございました」「こんどのイベント限定ペーパー作ります」「コピ本作ります」。

指を咥えながら見ていた。

愛が足りない、と言われればそうだったろう。小学生だって即売会に行くことはできる。通販を申し込むことだって不可能じゃない。けれど私にはそうするだけの愛が足りなかった。住所を入力する勇気もなかったし、新幹線に乗って大都市に行くお金を貯めることもできなかった。

夢小説は私の味方だった。

クリックひとつで手が届く、インターネット上で完結した世界だった。本になって、「ちゃんとしてるように見える」ことはなかった。同人誌インターネットがはじまる前からあったらしい。夢小説は、常にインターネットとともにあった。メアリー・スー存在は知っている。けれど「名前変換」。名前変換が出来なければ夢小説ではない。

から、私にとって、夢小説インターネット化身だ。


その内容。私の記憶に残る限りのものでは――

キャラクタ恋愛関係になるもの。友人関係になるもの

振られるもの。振るものいじめられるものいじめもの。嫌われるもの。嫌うもの

恋愛関係にあるふたりを見守るもの

ただ一瞬だけ人生が交わるもの。交わることすらなく通り過ぎていくもの

主人公性別制限はなく、男の子になってキャラクタと交わる夢小説女の子になる夢小説と同じくらいたくさん書かれているように見えた。百合夢小説だってある。少なくとも私は書いたことがあるし、『テニスの王子様』のヒロインたち、竜崎桜乃小坂田朋香や、『ハリー・ポッターシリーズハーマイオニーグレンジャー夢小説はかなり読んだ。夢中で読んだ。

ハーレム夢小説が好きだった。登場人物が多いぶん、たいていは長編ラブコメだった。ジェットコースターみたいな展開に夢中になり、連載が更新される日はいつも待ちきれなかった。男の子たちと丁々発止とわたりあう聡い女の子たちに憧れた。女の子を大切に大切に扱う男の子たちは原作とはまたちがう輝きを放っていた。「キャラの立った」女の子たちは、とき作品の垣根を越えた作品を生み出すことがあった。それもまた好きだった。

傍観者になる夢小説が好きだった。「無糖」という言葉はよく覚えている。夢小説の脇には、しばし「狂愛」「死ネタ」「悲恋」などと属性が書かれていたけれど、そのなかの「無糖」は、キャラクタのそばを、傍観者として通り過ぎていくことを意味していた。見つめるだけでなにも起こらないことが約束されていた。書き手視点から切々と綴られた誰かの横顔は、どこまでもいとおしかった。

これらの、相反すると思えることが同時に起こり得たのは、すべて、「名前変換」というものがあったから。

名前変換」できれば夢小説だったから。


夢を見なければ、夢小説は書けない。

夢中にならなければ、作品なかに入り込むことがどうしてできようか?

夢小説を読むとき、書くとき、私はずっとずっと夢中だった、冷静な判断なんてなにひとつしなかった。ただ、情熱の赴くままに行動した。

文字通り夢を見ていた。

夢小説は、名前変換小説現実にはない。インターネットしかない。

夢小説に、名前変換小説現実論理は通用しない。

 
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