はてなキーワード: 水平社宣言とは
全国水平社宣言
綱 領
完成に向つて突進す
宣 言
多くの人々とによつてなされた吾等の為めの運動が、何等の有難い
効果を齎らさなかつた事実は、夫等のすべてが吾々によつて、又他
の人々によつて毎に人間を冒涜されてゐた罰であつたのだ。そして
これ等の人間を勦るかの如き運動は、かへつて多くの兄弟を堕落さ
せた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によつて自ら
つた。陋劣なる階級政策の犠牲者であり男らしき産業的殉教者であ
つたのだ。ケモノの皮剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥取ら
れ、ケモノの心臓を裂く代価として、暖い人間の心臓を引裂かれ、
そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の悪夢のう
ちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあつた。そうだ、そし
て吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうた
のだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が来たのだ。殉教者が、その
荊冠を祝福される時が来たのだ。
吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ。
辱しめ、人間を冒涜してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、何
んなに冷たいか、人間を勦はる事が何んであるかをよく知つてゐる
水平社は、かくして生れた。
人の世に熱あれ、人間に光あれ。
水 平 社
http://gendainoriron.jp/vol.11/feature/f10.php
千本 秀樹
「よりそう」ためには時間がかかる。明仁天皇はひとりの被災者と数分話しただけでよりそえるのか。明仁天皇に「国民によりそいたい」という主観的な願望があることを、わたしは否定しない。問題は、天皇に声をかけてもらったことで喜ぶ、癒される被災者、それを報道で見て、「天皇は国民によりそおうとしている」と感じる国民の側にある。
水平社宣言の核心は、次の条にある。
過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々とによってなされた吾等の為の運動が、何等の有難い効果を齎らさなかった事実は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によって毎に人間を冒瀆されていた罰であったのだ。そしてこれ等の人間を労るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の解放運動を起こせるは、寧ろ必然である。
天皇に声をかけてもらって癒された被災者は、そこで天皇とのあいだで互いに尊敬しあえる関係になったのか。明仁天皇の行為は「人間を労るかの如き運動」そのものである。夜間中学生のかるたに、「あったかいと感じたらやばいと思え」というのがある。あったかいと感じるのは気持ちがいい、しかしそれは人間を堕落させる。水平社宣言から学んだものである。問題は天皇と対面した側にある。天皇制は「差別の元凶」といわれる。それは天皇制の構造そのものであるが、それを受け入れて癒される国民の側にも責任がある。社会学の八木晃介は「差別は最大の癒し」だといった。「癒し」は往々にして問題の本質を隠蔽する。天皇と国民一人びとりは水平社宣言の「互いに尊敬する」関係になりようがない。
問題は象徴のあり方ではなくて、国家のあり方ではないか。前号の末尾で、何物にも統合されたくない、何物にも象徴されたくないと書いた。自治と相互扶助を社会の基礎としていけば、国家の象徴は必要ではない。