2024-06-17

無礼インフルエンサー

SNS無礼者巣窟であるはいまに始まった話ではないが、最近無礼者の種類も昆虫標本が作れるぐらいに増えてきた。特におれが言いたいのは、ファッションメイクヘアスタイルetc.流行りの言葉で言えば「垢抜け」系インフルエンサーについてである女性の話は詳しくないので、以下は専ら男性インフルエンサーの話である

メンズメイクなんてものに手を染めてはや二年、関連情報をあれこれ調べていたら、いつの間にかInstagramおすすめされる投稿がそれ一色に染まってしまった。それはまだいい。問題インフルエンサーの口ぶりである

全員がそうだと言うつもりは毛頭ない。だが、激しい競争スポンサー圧力に晒されるなか、生存のために甚だ無礼物言いをするインフルエンサーは少なくない。「こうすると綺麗になれる」ではなく、「こういうやつはダサい」 「こういうやつは不細工」などと宣う輩を、おれは無礼だと言っている。これは脅迫差別文法である(この文法に乗っ取られた者は、とにかく否定したくてたまらないあまり、しばしば「~~をしないことをやめた」という、じつに奇怪な日本語を話す)。

おれは美がすばらしい価値であると認めている。あらゆる優劣を暴力的ものだと非難する水平派の連中とは相容れない。だがおれは、ある人を美しいと言うために、それ以外を不細工に描く必要はまったくない、と言いたい。インフルエンサーは「もっと綺麗になれる」と背中を押せばいいのであって、「これはブス」 「これはダサい」と罵るべきではない。程度問題かもしれないが、しか歴然とした違いがある。

才能と芸術性を欠いた程度の低い作家は、主人公の善性や美しさを際立たせるために、周りの人間を悉く、異様なほど心身ともに醜悪人間として描写する。無礼インフルエンサーがやっているのも同じことである創造性がない凡俗ほど、誹謗中傷差異化を図る。

言葉狩りに聞こえたら申し訳ないが、「垢抜け」という言葉からしてすでに鼻につく。特定行為をしている/していない者をみな「垢に塗れた」状態だと定義して、「普通人間」より一段下に置いている。かれらは天使を描くのではなく賤民捏造している。「基本的人権」という単語はかれらの辞書にないらしい。

無礼インフルエンサーが(スポンサーと自らの収入を除いて)奉仕している目的は何か。セックスであるウエルベック風に言えば、セックス至上主義がかれらのイデオロギーである。それ自体否定する気はない。だがかれらは、「セックス至上主義」わかりやすく言えば「おまんこ狂い」を「垢抜け」なるこぎれいな言葉で粉飾し、自分たち社会の模範たる人間ですという顔をしながら、助言を装って他人を「ダサい」 「不細工」と罵倒する。人を罵っても怖くない、ここは自力救済が認められない文明社会なのだから安心しながら。かれらは文明社会の癌である

浅ましいマナー講師のせいで、われわれはマナー=礼節という言葉を軽視しがちである。だが礼節は文明社会の基本であるインフルエンサーの発信する情報は時として有益であり、おれも世の中に男女問わず美人が増えたほうがいいと思う。だがその手段として、無礼物言いは許されない。それは文明社会コードに反する、自らを野蛮人だと暴露する行為である

かつては、文明社会では誰もが心にもないお追従を言いあうと嘆かれた。中傷が正当な言辞として誉めそやされる現代様相と比べたとき、さてどちらがましだろうか。

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