○岩垂委員 まだちょっとお聞きしたいことがあったのですが、ぼつぼつ時間が来てしまいました。
実は、私が申し上げるのもちょっと変ですけれども、南ア問題について日本のいろいろな人たちの、特に南アの関係というか南アに行かれた方々を含めて、御存じのように「スプリングボック」という会報が出ていますけれども、これだけでなしにいろいろな御発言を収録をしてみました。
その一は、ここ数年来、南アと日本との貿易は飛躍的に伸長し、それに伴い名誉白人は実質的白人になりつつある。最近は、多くの日本人が緑の芝生のある広々とした郊外の家に白人と親しみながら、そして日本人の地位が南ア白人一般の中において急速に向上していることはまことに喜ばしく、我々駐在日本人としても、この信頼にこたえるようさらに着実な歩みを続けたい。インド人は煮ても焼いても食えないこうかつさがあり、中国人はひっそり固まって住み、カラードは粗暴無知、黒人に至ってははしにも棒にもかからない済度しがたい蒙昧の徒という印象が強い。これは三井物産の社内報「三井海外ニュース」。これはその後廃刊になったようですけれども、ヨハネスブルグ駐在員がこういう文章を寄せている。
その二。アパルトヘイトはけしからぬが、泥棒にも三分の理と言われるように歴史的背景や立場の違いというものがあり、南アには南アなりの主張があるように思います。日本の外交も、国連追随主義ではなくて日本独自の南ア政策を考える時期じゃないですか。これはプレトリア日本領事館から帰国したばかりの前領事さん。これはちょっと古い話です。
それから、これは有名な石原慎太郎さん。アメリカでは黒人を使って能率が落ちている。黒人に一人一票やっても南アの行く先が混乱するだけだ、独立してもやっていけないということを、当時の日本・南ア友好議員連盟幹事長というお立場で石原慎太郎さんが発言をなさっていらっしゃる。
あるいはその四。黒人の政治的権利の付与も重要であるが、白人の巨大な経済権益の保護もそれに劣らず重要である。制裁措置とは逆に、西側諸国が一致して南アを助け建設的協力を行っていくことであり、また国内における変革を急激にではなく漸進的に実施していくことである。これは、南アの日本人会の月刊誌「スプリングボック」の、これも南アに駐在した領事の一文。
いろいろございます。それ以上やめましょう。
しかし、最後にその五として申し上げなければならぬのは、南アに暮らす我々日本人は、日本政府が科する包括的制裁の範囲内で、さまざまな困難があるにもかかわらず貿易関係を維持しようと絶えず努力し続けるだろう。両国の貿易関係は決して弱めることはできない。これは南アの日本クラブの代表であります。
現地の方々がこういう態度で対応していく限りにおいて、現地の人たちの理解を得ることは難しいと思います。それは一、二の人かもしれません。しかし、そういう態度が日本人の態度として目に映ることも事実だろうと私は思います。名誉白人ということは決して名誉な称号ではないと思います。
そういう意味で私は少し時間をかけて、あらゆる角度から申し上げて大変恐縮でございましたが、今、日本国民の関心といいましょうか理解が「遠い夜明け」を通して広がっているこのときに、そしてまた、日本が南ア貿易のトップということになって国際的な批判を受けているときに、なかんずく貿易摩擦などを含めて日本経済にさまざまな問題が投げかけられているときに、日本人は経済の面では大国だけれどもモラリティーの面ではいわば小国であると言ったジャクソンさんの言葉を私は思い浮かべます。
そういう意味で、反アパルトヘイトについて、この際、いろいろな立場がおありでしょうけれども、日本政府がしっかりした態度をとって、世界の中に日本政府、日本国民の態度をお示しいただきたい。このことをお願い申し上げて、大臣に最後の御答弁を煩わせたいと思います。
○宇野国務大臣 冒頭に私の当国会におけるところの外交方針演説、これを引用していただきましたが、私はもうそのとおりの主義主張、そして姿勢を今後貫いていきたい、これが日本政府の考え方であります。
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=111203968X00619880413¤t=2