2019-11-07

子供部屋おじさんの翔んで埼玉 ~あるいは異世界も割といい世界R1

「後悔などあろうはずがありません!」

 俺は胸を張って女神に答えた。

 ――国道H31号線。

 ――幼いこども。

 ――迫るトラック

 ――飛び出す俺。

 短い人生ではあったが、最期に命を守る行動を取れたことに悔いはない。

「よくわかりました。それでは功績を認め、あなたを新たな世界に翔んで埼玉させましょう。その世界は今、上級国民の手によって闇に覆われようとしてます。どうか勇者として世界を救ってください」

 ……こうして俺は、異世界――管理ナンバーR01――に翔んで埼玉することとなった。


///////


「あれから随分と色々なことがあったな……」

 冒険者ギルド隅の汚いテーブル

 キー―ッと音を立てて回転するにわかファン真下で、俺は感慨深げに呟く。

勇者がこのホワイト国に来てから半年近くも経つんですね」

 ONE TEAMのひとり――聖騎士が目を細めて笑みを浮かべた。

 一方、もうひとりのメンバー剣士は落ち着かない様子で野太い声を響かす。

「おいおい、いつまで思い出話に浸っている気だ? さっさと冒険に出かけないと、腕がサブスクじゃねーか!」

落ち着け、竜剣士。休むことも冒険の一部だ。今日計画運休だと言っただろう」

 俺はギルド特製のおしぶこドリンクをずずずっと啜り、その甘さを十二分に堪能する。

 だが、俺の至福のひとときを奪うかのように、ONE TEAM最後のひとりが甲高い声で反駁する。

「ククククク。とはいえとはいえ勇者殿ぉ。冒険に行かなければ、いずれ吾輩どもはキャッシュレス! 揃って飢えタピることになりかねませんぞいぞい!」

「……お前は黙っておけ。闇営業

「お前が俺達に意見していいのは4年に一度じゃない。一生に一度だ。」

「…………」

 沈黙ギルド支配した。

 だが闇営業の指摘自体は的を射ていた。

 結局、俺達は闇営業意見に従って、のそのそ街の外へドラクエウォークすることとなったのであった。


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「あれが上級国民の住むという洞穴か」

「あな番はいないようです」

「よし、慎重に奥へ進むぞ。さくせん<命を守る行動を>だ!」

 …………。

 俺達は襲いくる上級国民れい新選組撃退しながら、ついにダンジョンの最深部に到達した。

観念しろ上級国民! もはやお前に逃げ場はない!」

「ふはは。逃げ場がないのは貴様たちの方だ。さあ、行け。わが忠実なるしもべ達よ!」

 合図の声とともに無数のジャッカルたちが現れる。

「多勢に無勢です、勇者!」

「なーに! この程度のハンディファンがなけりゃ、面白くねぇじゃねーか!」

「ククククククク……」

 そして死闘が始まった。

「うぉぉっりゃあぁぁぁぁっ!!」

 竜剣士の一太刀れいわ旋風を巻き起こし、ジャッカルの群れが切り刻まれる。

「祝福の女神よ。彼の者の傷を癒やしたまえ。――ポエム!――」

 聖騎士の膨大なMGCポイント還元によって、蓄積された肉体の#KuTooが一気に軽減税率されていく。

「ククククク。あなたの◯◯ペイで拙者の〇〇ペイを〇〇〇〇ペイしてもらいたいですぞぃ!」

 笑わない男でさえもスマリングシンデレラへと変えてしまセールストークプロフェッショナル――闇営業セクシー発言が、上級国民の神経を逆撫でする。

 ……皆が死力を尽くして戦っている。

 今だ! 今こそ決着のときなのだ

 俺は、王女から授かった「パプリカナイフ」に聖なる力を免許返納して、渾身の一撃を解き放った。

世界の令和は<俺>が守るっ!!!!!」

 肉肉しいあんちくしょうの顔めがけ、聖なるオーラが閃光となって突進する。

 光属性攻撃が闇属性相手まばゆい光で包み込む。

「おああーーーっ。あーっ」

 断末魔をあげ、消滅していく闇の肉体。

 やがて、光はゆっくりと減少していく。

 光が完全に消失したとき、そこにはただ、生き延びた仲間たちの姿と、おむすびころりんクレーターけが残されていた。


///////


 勇者たちの旅は終焉を迎えた。

 上級国民の魔の手は消え去り、世界は令和を取り戻したのだった。

 聖騎士は将来の脅威に備えるため騎士団へと戻り、竜剣士さらなる強敵を求めて放浪の旅へと出立して行った。

 そして……。


「君の崇高な犠牲のお陰で、世界は令和になったよ。ありがとう、闇営業……」

 寂しい墓地の片隅で、勇者はそっと花を手向ける。

 闇属性であるがゆえに聖なるオーラの巻き添えで消滅した闇営業最期を思い返しながら、勇者は静かに目を閉じ思う。

あかんな。闇属性やっぱあかんな」と。

2019-2

https://anond.hatelabo.jp/20191108151727

2018

https://anond.hatelabo.jp/20181109213637

2017

https://anond.hatelabo.jp/20171109235515

2016

https://anond.hatelabo.jp/20161203164152

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