2018-11-09

彼とU.S.A.と赤身肉 ~あるいは元気モリモリご飯パワーH30~

 駅前広場の小さな噴水に虹が架かる。

 わたしお気に入りのダサかっこいいGAFAワンピースに身を包み、彼氏の到着を今か今かと待っている。

 高学歴高収入高プロ三拍子が揃った自慢の彼はeスポーツ界の有名人だ。

 彼の「ジタハラ持ち」から繰り出される悪質タックルと金足農旋風のコンボ半端ないってと恐れられているし、シューティングでの奈良判定の見極めやグレイヘアの巧みな使い方は災害級の暑さだと絶賛されている。

 年の差のせいで、おっさんずラブだとあおり運転されるのは腹立たしいが、そんな時短ハラスメントで彼への想いが計画運休することなどあり得ない。

「だーれだっ!」

 突然、視界がブラックアウトした。

「うーん……。スーパーボランティア?」

「ざーんねん。ボーっと生きてんじゃねえよ! 正解はオレでしたー!」

 目隠しを外して、彼がひょっこりはんと姿を現す。

「もう。バカばっかり。わたしお腹空いたんだからね。さっさとご飯論法に行くよー!」

 歳の割に幼稚な彼の手を引いて、わたしたちはもぐもぐタイムへと繰り出した。

 二人お気に入りアメリカンレストラン

 たっぷりのなおみ節で出汁を取った洋風スープは、翔タイム香りが微かに効いて食欲をそそる。

 TikTokTikTok……

 幸せ時間ゆっくり流れる

 けれど。

 何がキッカケだっただろう?

 今では思い出すこともできないほど、ほんの些細な首相案件のせいで。

 二人の会話は徐々にダークウェブになってしまった。

「だから! 君たちはどう生きるかって話だろっ!」

そだねー

「おいっ、肉ばっか食ってねぇで真面目に話を聞けって」

「うんうん(もぐもぐ)」

「だから、何で噛み続けてるんだよ。止めろって! おい、カメ止めっ!!」

 ……そうやって。

 彼はテーブル仮想通貨を叩きつけて店を飛び出してしまった。

 残された私は、ただひたすらにステーキを噛み続ける。

 もぐもぐもぐ。

 もぐもぐもぐ……。

 頬に涙の雫が伝って落ちる。

 もぐもぐもぐ。

 もぐもぐもぐ……。

 好物の赤身肉が、今はとてつもなく硬く感じる。

 もぐもぐもぐ。

 もぐもぐもぐ……。

 それでも、わたしは肉をひたすら噛んだ。

 筋肉は裏切らない。そう自分に言い聞かせながら。

 きっと彼は戻ってくる。

 このステーキを食べ終われば帰ってくる。

 だからわたしステーキを食べ続けなければいけないのだ。

 筋肉は裏切らない。だからわたしステーキを食べ続ける。

 

 ステーキを食べ終わったとき

 戻ってきた彼はわたしにこう言うはずだ。

 「ゴメン。オレが悪かったよ」と。

 

 わたしはそれを知っている。

 だから、そのときわたしはこう呟くと決めている。


 ――#MeToo――

去年

https://anond.hatelabo.jp/20171109235515

一昨年

https://anond.hatelabo.jp/20161203164152

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