2019-07-17

地方アイドル一日店長日記

私は地方アイドルやらせてもらっている。

高校生の頃から地道にやってきて、今では何回か週刊誌グラビアにも載せて頂いたりと、ようやく軌道に乗ってきた感じだ。

そんなある日、とあるお店の一日店長の話が舞い込んできた。

そのお店は高校生の頃から何度か利用したことがあって馴染みも深いお店だったので快諾した。

ゆくゆくは観光大使かに選ばれたら嬉しいなあなんて思いながら…。未来はまだまだ明るい。

そして、一日店長をすることになった当日…

朝4時。まだ寝ているのにスマホが鳴り出す。見知らぬ番号からの着信だった。

恐る恐る出てみると酔っ払った大学生っぽい男子の声がした。

「あっ、店長ですか?〇〇ですけど…。ちょっと熱が出ちゃったみたいで…今日の早番休みますよろしくお願いします…」

どうやら電話の主は今日店長をやるお店のスタッフのようだった。

電話の向こう側には若者たちパリピ声。

熱、絶対嘘でしょ。オールしてる上に飲みすぎて二日酔い確実だから休みたいんでしょ…

と思いつつ「わかりました、お大事にしてください…」としか言えなかった。

続けてスタッフ君はこう続けた。

「あっ、早番自分しかいないので、お店の鍵は、お店のポストの中に隠してありますホントすいません!よろしくお願いします!」

そう言うと、スタッフ君は一方的電話を切ってしまった。

お店の開店時間10時。

今はまだ夜明け前ということもありマネージャーも寝ているであろう。

8時になったら連絡してみることにした。

8時。マネージャー電話が繋がらない。困った。

10時には開店してしまう。

1日とはいえ、私が店長だ。10時の開店を、そして私の一日店長を楽しみにしているお客様を裏切るわけにはいかない。

気がついたらお店のポストに隠してあった鍵を手にし、シャッターガラガラっと開けて

空調の効いていないムワァとした店内に入っている私がいた。

バックヤードにポツンとある机の上には大量の納品書、請求書

日付もバラバラ

壁には「明るく楽しく元気よく!気持ちの良いスタッフお客様第一笑顔、ヨシ!姿勢、ヨシ!態度、ヨシ!」と手書きで書かれた謎のポスターと、

修正されまくってもはや何が何だかからなくなっているシフト表。

まずは空調をつける。

そして、有線をかける。A30。

そして、わけもわからないまま、パソコンをたちあげる。

デスクトップに思いっきりフセンでIDパスワードが書かれているのは大丈夫なのだろうか。

店長バカなのでは?あ、店長は私だった。

Outlookメールフォルダに、本社からの何とも言えないメールたちがごっそり溜まっていた。

一日でこんなに来るの?なんで、「了解しました」を全員に返信でしてる人がいるの?

本社が考えてくれた、私の一日店長にともなう今日施策は「2,000円分お買い上げで店長握手&飴プレゼント

やる気あるのか?と疑いたくなった。

そして今日のためのポップのデータもきていたが、メール受信がついさっきだったので、もちろん用意は出来ていない。

パウチのでかい機械をつけて、店内をとりあえずワイパーで清掃。

パウチが温まったら、私の顔写真がついて創英角ポップ体かつレインボーの字で私の名前が書かれたポップを印刷し、パウチする。

自分でやるのは、地味につらい。

そしてポップを店頭に貼り付けたらもう9時半を超えていた。

ああ、もう時間がない。

そういえばお金とかどうすればいいんだろう?

バックヤードになぜか何個もある鳩サブレカンカンをあけて発見したレジの鍵を取り出し、レジを起動させた。

なんとかこれで開店時間には間に合いそう。

不幸中の幸い(と言っていいのかわからないけれど)か、このお店は過疎地にあるため暇だった。

正午過ぎには遅番のスタッフも来てくれて、手馴れた様子でお店をまわしてくれた。

しかし暇で暇で、ギフト用の紙BOXの組み立てや、ポリ袋をちぎってすぐ入れられるようにする作業をしていた。

たまにお客様の波はあったものの私のファンほとんど来ず、施策である私との握手&飴プレゼントは0人であった。

そんなこんなであっという間に閉店時間になった。

自分の人気のなさを目の当たりにして凹んでしまった。

スマホLINEを開いたら、なぜか「〇〇店☆業務連絡用」というグループLINEに入ってて

その中ではスタッフたちによるシフト変更(翌日分も含む)がたくさん来ていた。

目も当てられない。

そして、遅番スタッフレジをしめたところマイナス4000

円の違算が出てしまっていることも発覚した。

もう何もかも辞めたくなってしまった。

二度と一日店長はしたくない。

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