2018-01-07

いまさら東大話法

の話をするのもなんであるが、先頃「ああ東大話法だなあ」という会話を経験した

安富先生東大話法はある種の人に対する正当で的を射た批判であると思うが、一般向けに提唱されたためか、いかんせん書きぶりがフワッとしている

批判対象詭弁を駆使する相手である手前これはあまりよろしくない。「それは東大論法だ」などと言ってもあの手この手ではぐらかされてしまうだろう

もう少し体系的に、形式的記述できないものだろうか

  1. 動機批判に対してこれを認めることも正面から反論することもできない場合に、これを回避するための論法である
  2. 方策
    1. 相手批判無効化しようとする
      1. 相手批判自分の主張を正しく理解していないためであると主張する
        1. そのために、当該批判さらされた過去の自らの発言意味修正限定、縮減する
        2. そのために、当該発言当時に明示しなかった前提条件(そもそも~であったので)や限定条件(~の場合について言えば)を後から付加する
        3. 批判対象の主張を当該限定された形で読まなかったことを批判者の瑕疵であると主張する
      2. 相手批判の内容を(わざと)曲解し、その曲解した内容に対して再反論する(いわゆる藁人形論法
        1. 別の人が行っている(より稚拙な)批判を持ち出し、あるいは当該批判をそれと同一視した上で、これに対して再反論する(藁人形論法の変種)
      3. 批判の内容や批判対象である発言自体に関する批判者への論証責任転嫁
      4. 当該批判自体に一切の瑕疵がないことについての先んじた要求(bの各項へつながる)
    2. 論点回避
      1. 単純な論点回避
        1. 批判の内容と一見関係ありそうだが関係ない話題を持ち出す
        2. 批判に含まれるいくつかの論点のうち、もっとも周縁的な、あるいは瑕疵の軽微な論点に話を絞ろうとする(燻製ニシン
        3. そのために、当該関係ない話題、あるいは当該周縁的または軽微な論点こそが重要であるかのような旨の主張を行う
      2. 批判の内容ではなく、批判者の態度、心的態度、人格地位等を問題として取り上げる(人身攻撃お前だって論法、しばしばaの各手法とセットになる)
      3. その他各種詭弁手法
    3. 上記2-1、2-2をもっともらしく見せるための権威的態度と過剰に複雑な修辞

安富先生のまとめたことは2-1-2以降、および2-2以降に含まれることになるだろう。基本的には批判、あるいは"これからされるであろう"批判回避するための詭弁であり、それを「議論を"分かりにくく"するための修辞」や「自らの立場を利用した権威的態度、権威論証」が支える形である

さら詭弁の形の一つとして付け加えたいのが2-1-1にある「自ら発言の後から修正限定である。これは安富先生の挙げられた中に明示されていなかったように思うが、個人的にはこれこそが実は「東大話法的な」議論の中核を成しているのではないかとさえ考えている

もちろん「発言に対する後から説明注釈」は常識的範囲では普通に行われるし、従って直ちに論理的誤謬であるということはできない。意味が正しく伝わらなかった時に後から「より詳しく」注釈するのは当然のことである

しかしながら、権威的な立場から発せられるがゆえに重々慎重であらねばならない言葉に対して、それが批判さらされたからといって後から読み手の予想し得ない限定条件を付け加えたり、ある用語が通常用いられない特殊意味で使われていると釈明したりするのは誠実性の問題であろう

あまつさえ「元の発言は当然そのような(極めて限定された)意味に受け取られるべきで、そのように受け取らなかった読み手が悪い」といったようなことを言うに至っては、まごうことな詭弁である(「当然」という部分は権威論証的であるし、誤読責任相手転嫁することは「本当に意味齟齬があった」にしても不誠実である。もちろん大部分は、批判無効化回避するための方策として「相手誤読たことにする」べく、後から意図的に作り上げられたものである

言葉意味文法辞書文法書がア・プリオリに定めるものではない。膨大な一対一、多対多の関係の中において得られた広範な"合意"の集成であり、辞書文法書はそれを抽出しているにすぎない。まして特権的人物がその意味をなにがしかできるものではない

そのような合意の元に発せられた言葉意味せんとすることを、批判回避したい、相手責任転嫁したいという邪な欲求のために後から自分の恣にしようとすることは、言語活動の中でももっとも不誠実な部類の行為であろう

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