2017-03-27

就活によって虎にメタモルフォーゼしてしまった先輩の話

サークルの先輩になるが、就活中にいろいろと思い悩んだ結果、とうとう発狂して虎にメタモルフォーゼしてしまった男がいた。

彼は極めて優秀な男で、幼少期からご近所でも評判の秀才だった。

大学も一流国公立に現役合格

なので、彼自身としてもエリート意識というか、周りの奴らとはひと味ちがうんだよなーみたいな気分があった。

そんな彼だったのだが、就活をしている最中に突如失踪し、そのまま行方不明になってしまったのである

失踪一年後。

飲み会帰りで酩酊状態にあったわたしは、軽くリバースしようと思って路傍の植え込みに近づいた。

すると、そこから一匹の虎が何の脈絡もなく登場。

虎はガオーとわたしを威嚇したので、ビビった。

しかし、そのガオーをよく聞いてみると、そこには往年の先輩を思い出させるような音色が多分に含有されていたため、わたし勇気を出して話しかけてみた。

すみません。ひょっとして、先輩じゃないっすか?」

すると虎先輩は悲しそうに縞模様を震わせながら、

「如何にも自分は先輩である

と答えた。

以下は本人が語ったところの、彼が虎になってしまった経緯である

先輩は順風満帆人生を送っていた。

講義最前列で聞いて教授お気に入りだったし、サークルでも部内の恋愛事情などによく精通していたし、ツイッターフォロワーもかなり多かった。

しかし、就活が始まってみると、困難に直面した。

自分アピールポイント」と言われても、はっきり答えることができなったのである

もちろん彼は自信家だったし、自分教室後方に跋扈するアホより遙かに優れた人間である確信していた。

だが、いざアピールポイントなどと真正から切り出されると、臆病な自尊心というか尊大羞恥心というか、フォロワーが増えるに従って加速度的に複雑化した自意識が、イージーな解答を阻んだ。

その結果、彼の答えは謙虚を装いつつも隠しきれぬプライドが透けて見えてくる、ウザい感じのものになりがちだった。

それに対し、彼が平素よりバカにし続けていた学生はどうだったか

彼らは、先輩基準では凡庸しか思えないようなアピールポイントを堂々と答えた。

先輩はそれを内心バカにしていたが、彼らの堂々と答える姿が妬ましくもあった。

そして、蓋を開けてみれば、内定をよりゲットしていくのは彼らだったのである

周りが東証一部上場企業内定を続々奪取してゆくのを見て、彼は思い悩んだ。

その挙句、ある企業面接中に発狂して部屋から逃走した。

丸の内面接会場から横浜辺りまで猛ダッシュしていると、両手を地面に近づけたい欲求だんだんと生じ、小田原辺りに至ると全身がむずむずして毛の生えてくる感覚があった。

正気に戻ると、虎になっていた。

一息つくと、先輩は続けた。

「お前に最後の願いがある。

これはオレが考えた最後ツイートだ。

オレの代わりに投稿しておいて欲しい。

このまえ聞いた、高校生くらいの雌虎が餌場で話してたことを元にしている。

140字に収めるにはかなり苦心したよ。

自分で言うのもなんだが極度に面白い

今までにないリツイート数になるだろう。

これを公開せねば死ぬ死ねん」

わたしは必ず投稿すると約束した。

「もうそろそろ時間だな……。

あそうそう、うちのオフクロ、多分けっこう心配してると思うから、元気にやってるって伝えといてくれ。

じゃあまたいつかな!」

そう言って先輩はしっぽをぶんぶんさせながら、遠くへと走り去っていった。

先輩のツイート世界中で評判となり、相当なリツイート数を誇った。

やはり先輩は優秀だった。

しかし、母親に対するメッセージ最後に0.05ツイート分ってのはどうなんだろうか。

我が子の失踪を大いに心配し、町内に迷子貼り紙までしていたのに。

先輩はやっぱりちょっと自己中な奴だったな、と最近は思ったりもする。

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    現代風 山月記

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    そういう人って多分普通の会社に入るのに向いてないだろうから、就活なんて諦め、 労働者となって長く膝を俗悪な上司の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺す方向を目...

  • http://anond.hatelabo.jp/20170327022934

    「居酒屋でニッカポッカの酔っ払いが暴れているが、よく見たら先輩だった」 とかにした方がリアルだと思うが、山月記のパロだと気づいてもらえないか

  • http://anond.hatelabo.jp/20170327022934

    しかし、いざ恋愛市場に参入してみると、困難に直面した。 「女性にどのような快楽を与えられるか」と問われても、はっきり答えることができなったのである。 もちろん彼は自信家...

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