2011-09-29

大学物理学科について急に語りたくなったので語る。

なんか、誰の役に立つの分からんけど、私が高校生の頃にこういう説明があったら良かったなぁ……とふと思ったので書いてみた。

さて、大学理学部物理学科に入学するとしよう。基本的に物理学科は、専門が進んでいくと、

この2系統x2分野で、4カテゴリだけに全てが収められる。意外に思われるかもしれないが、私も当時(学部3年頃)びっくりした。本当にこの4つしかない。

理論実験

まず理論系と実験系だが、その名の通り。理論系に進むと実験はやらずに、ひたすら理論だけ。本当に紙と鉛筆だけで物理モデルと数式を弄るだけのツワモノもまだいるけど、最近は、第一原理計算などのコンピュータシミュレーションも多い。

一方実験系に進むと、元旦液体窒素を汲んで延々と真空ポンプのお守りをしたり、「吸い込むと死ぬ」「空気に触れると爆発する」とかナチュラル危険すぎるガスをぶぉんぶぉん基板に吹き付けたり、TEM(透過型電子顕微鏡)の試料作成と軸合わせに12時間かけたあとに休憩も取らず深夜3時から測定開始したりする。要するに不死身であるしか給料ももらわずに学費を払ってこれをやるのだから真性マゾである。……話がそれた。

大学院進学の際、実験系には希望すれば誰でも進めるが、理論系へは相当の能力(とりあえずはテストの成績と言って良い)が無いと進むことはできない。まぁ学部3年くらいになれば、物理ができるヤツと物理ができないヤツの本質的な差が自他ともに見えてくるので、みんな自分がどっちに進むべきかはおのずから悟って判断する。そのため、「理論系に進みたかったけど成績が足りずに不本意ながら実験系に行った」って人は、実はほとんどいない((が、一部の実験系の人はやはり理論系の人にコンプレックスを持っており、理論の人を揶揄する実験系の人も時々いる。そういう人は学生時代はあまりそれは出ず、准教授教授クラスになってそうなる人が多い))。私の周りでも、理論系に行った人たちはやはり「天才」と呼べるだけの圧倒的物理センスを持っている人ばかりだった。

なお、実験から理論系へ、または理論から実験系へ移る人も、滅多にいないがいる。そういう人はものすごい変人か、ものすごい優秀かである。もちろん、変人かつ優秀の場合も多い。

物性と素粒子

先ほど言ったように、物理学科ではこの2つの分野しかない。意外だろうけどそうなのである

物性物理学は、モノの性質を「なぜだろう」と問う学問である(と思う)。例えば物性理論の第一原理計算では、「なぜ銅は銅としての性質を持つのか」を、原子番号の29という数字だけ入れて作り上げようとする。一方、物性実験系だった私は、毎日毎日ひたすら真空ポンプのお守りをしながら、ナノ微細構造作成とその電気特性を測定していた((今日作成温度500度、明日は550度、明後日は600度……お、550度が一番いいな。みたいな))。その他、金属半導体、光デバイス、磁性や超伝導電磁気的性質、まぁそのへん全部物性系である。応用例も広く、就職比較マッチングしやすいので、物性実験系が物理学科のもっともスタンダードな専門となる。

一方、素粒子は毛色が違う。「素粒子」と「原子核」で分ける人もいるけど、面倒なので一緒にする。有名なところでは加速器をやってる人たち。高エネルギーと呼んでいる大学もある。要するにモノの性質を問うのではなく、モノを作っている原子の中身とその構造を追っていく学問だ。クォークニュートリノグルーオンなどSF好みな題材が多い。素粒子は物性と違い、その経験を活かして就職しようとしても口が少ないため、アカポス狙いになってなかなか難しい。ただ、学部卒や修士卒で就職するつもりで専門に拘らないなら、分野なんて全然関係ないので気にしなくていい。素粒子から普通にリクルート電通化学企業なんかに行った人はいっぱいいる。しか博士課程に行くと……ポスドク地獄まっしぐらが待っている、気をつけよう。

宇宙論は?

みんな大好き宇宙論は、宇宙地球科学科が無い大学だと物理学科の素粒子に繰り込まれてしまう。高エネルギーとか場の理論とかになると、どうしてもそちらなので。

なお、物理学科に入る人で「宇宙論やりたい」って人はたくさんいるけど、講義が進んで悪魔テンソル計算が山のように出てくると、多くの人が挫折してむしろ宇宙論が嫌いになってしまう。足の上げ下げ、共変・反変、今思い出しても夢に見そうだ。

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