2021-08-10

あの時あなたは神絵師だった

ジャンルに参入して、2ヶ月が経とうとしている。

もうすぐTwitterフォロワー100人になりそうだ。

小さいジャンルからフォロワーは少ないけど、以前のジャンルより絵の感想をいっぱいもらえるし、いいねRTもしてもらえる。

調子が良ければ、1日2枚は簡単イラストを描けるし、どんなに空いても2・3日に1枚はコンスタントにアップしてる。

自称落書きだけどフルカラーだし、とても他人には落書きに見えないらしい。

キャラクターがかっこいいとか可愛いとか言ってもらえると、嬉しい。

今のジャンルは、年下の子が多い。

大人もいるけど、今年高校受験なんて子が大勢いる。

学生だろうと、みんな一所懸命絵を描いて色を塗って、作品をアップしてる。

スマホで描いてるのかな。

私はiPad Proだから、指でちまちま描くという苦労が理解できるには程遠い。

だって、指が腱鞘炎になってしまいそう。

ポケモンGOサービス開始した頃、ボールを投げすぎて人差し指が痛くなってしまったのを思い出した。

あんな感じ。

イラストをアップすると、すぐに感想をくれる人、

遅れてログインするから、数日経って感想をくれる人、

いいねだけつけてくれる人、

ずっと見ていたけど、恥ずかしくてなかなかコメント出来なかったから、ようやく感想を送れた、と言ってくれた人もいた。

いろんな人がいて、対立してる人もいないし、心地いいなと思った。

恥ずかしくて感想が送れなかったなんて私に言ってくれる人、本当にいたんだと思った。

私も、以前にいたジャンルでずっと閲覧していた人がいた。

閲覧していたけど、感想を数回しか送ったことがなかった。

その人はBLジャンルで、私は一般向けだった。

BLは苦手だからBLトークでなんて盛り上がれもしない。

から送って喜ばれるような感想なんて思いつかなかった。

絵柄が好きだから毎日のように見に行った。

見ていたけど、BL表現は苦手で、顔をしかめる表現も多かった。

でも、その人はとにかく毎日のように、日記に添える簡単カットを描いてはアップしていた。

すらすらと描いているみたいに感じて、

数年前のイラストよりもだんだん上手くなっているのが一目瞭然だった。

その人は、BL好きの女の子に受けるような絵柄だった。

至ってシンプルなのだけど、男の子が華奢で小綺麗で可憐だった。

ちょっと間の抜けた表情のイラストは、本人が何か思い立った時くらいしかたことがない。

ギャグみたいな豊かな表情は苦手らしい。

多分、その人は、私にとって神絵師だった。

アナログ線画デジタル塗りのその人は、つけペンの線一本一本が綺麗だった。

同人誌を買いに行ったけど、一般向けのものを2・3冊しか買えなかった。

他はBL色が濃くて、どうにも買う気になれなかった。

少ない同人誌を何回も見返して、

コマの運びや、髪や、目線や、セリフを調べ尽くして、

「白かトーンのみのコマが多いな」

と思った。

いわゆる雰囲気大事にしていたんだと思う。

キャラコマにいなくて、真っ白でも、

ためらいや沈黙表現したんだと思う。

1ページにキャラが2コマくらいしか描かれていなくても、

「この人の作風は、こんなにスカスカでも物語が成立してうらやましいな、1ページのペン入れにかかる時間は30分か1時間だろうか」

と思った。

BLだけど、コマの運びは少女漫画に似ているなと思った。

結局はBL作家も、少女漫画のようなモノローグの多いコマ割りを好むんだと思った。

対する自分はどうだろう。

ストーリーものが大好きで、

コマには大体キャラクターが描かれているので、

1ページの執筆にとにかく時間がかかる。

あの人に比べたら、キャラだけでも6倍は描いていると思う。

少しでも緻密さをあの人に近づきたいから、

新刊を描くたびにキャラの描き込みも少しずつ増やしていった。

あの人みたいに、描写シンプルに出来るところは少しでもないか、描き込みとデフォルメの間でずっと悩んでいた。

多分小綺麗な絵柄に寄せていけば、今までBL本目当てで買っていた人も、私の同人誌を目に留めてくれるかもしれない。

そんなことを暴露しても、誰が気付くだろうか。

漫画が上達するのは、アマチュアであろうと漫画家の当然であり義務みたいなものか。

原作は、絵柄が独特だった。

みんな大体、二次創作でも原作の絵柄に忠実に描く人が多かった。

その人は、どうにも原作に寄せ切ることは出来ないらしい。

心ばかりの原作に寄せた顔のパーツはあったけど、

やっぱり絵全体はBL然とした華奢な男の子だった。

それでも、サークルの前に足を止めて同人誌を買っていく人は多かった。

50冊くらい売れたのか、早々に切り上げて14時頃にはいつも撤収していた。

私も、自分の絵柄に原作独特の絵柄を取り入れた。

でも、私にだって私の絵柄がある。

自分の絵柄で物語が描けたら、こんなストレスを感じなくていいしどんなに気楽だろう。

原作に似せた絵はバランスが取りづらいから、

ちょっとしたコマでも神経を遣って絵を描かなきゃいけない。

自分の絵柄で同人誌を描きたい。

あの人みたいに、自分の絵柄を尊重して、最初から原作に似せずに描く方法もあったか

色んな後悔が押し寄せる。

不満はどんどん溜まっていった。

ある時、新刊用に書いていたシナリオと、別の同人作家新刊告知とが

ネタ被りした」気がした。

作家ファンからパクリを疑われるかもしれない?

作家本人から指摘が入るかもしれない?

でも明らかに偶然だし、ネタを盗み見る方法もない。

かなり長いこと悩んだ結果、

「同じ原作を見ている都合上、ネタ被りはある程度は仕方ない」

と割り切って、描き切ることにした。

作品は無事仕上がったし、パクリを疑われるようなこともなかった。

私がこの作品二次創作をするために書いたシナリオは、きちんと私が原作考察して書き上げたものに間違いなかった。

ある時、別のジャンルにハマった。

今まで「自分の絵柄で描きたい」と思ったこともないような、

まったく別のベクトルセンスを求められるファンアートを描く必要があった。

しかもそこには、プロ漫画家もファンアートを投稿しているらしい。

ここも小さいジャンルなのに、友達になれたら、イラストをお互いに描き合ったり出来て楽しそう。

今のジャンルには、そんなものはない。

あったとしても、BLファンの間でならやっている。

私は、箸にも棒にもかからない

だってBLを見ているのが嫌なんだもん。

最後コミケは、今のジャンルで取ったのに、

次に渡るジャンル新刊を描いた。

またたく間に飛ぶように売れた。

次の日、友達になってくれた子が、サークルに私の本を数冊置いてくれた。

「いない間に飛ぶように売れて、完売しちゃったらどうしようかと思った」

と言われた。

私は、今までのジャンルとは違う待遇に、また驚いた。

そのままの流れで、今までのジャンル撤退した。

あの人もまた、新しい作品と巡り逢って、サイトを閉じて、名前も変えて、別ジャンル同人誌をせっせと描き始めた。

現在、私は新型感染症とばっちりで、コミケに参加できていない。

でも、今いるジャンルはもうたくさんの同人誌を描き上げたし、あの飛ぶように同人誌が売れた時代も一瞬で終わった。

ファンは見切りをつけるのがとても早い。

今のジャンルは、オンラインだけの活動にしようか迷っている。

私の絵なら、同人誌を買ってくれるファンもつきそうなのに。

そんな風に、ファンと購買層を分けて考えられる余裕があるのは、二次創作にあまりに慣れすぎたせいか

たくさんいいねをもらって、たくさん感想をもらって、

私は筆が速いので、ファンアートを描き上げるのもあっという間になってしまった。

あの人に憧れて、もっと上手にとか、もっと速くとか思い悩むことも今はない。

自分の思い通りの品質で絵が描けるようになったから、あとは何枚もイラストを描いて、何人も私の作品に目を留めてくれたらいい。

フォロワーが増えてこその絵描きの本分だ。

他人から見たら、目にも留まらぬ速さかもしれない。

絵が上手だと思われているかもしれない。

可愛いとか、かっこいいとか、思ってもらえてるかもしれない。

原作の絵柄」なんて前提も取り払われたので、私は現在、無敵状態だ。

その中で、私は感じた。

「私の作品嫉妬を覚えて、筆が止まっている子はいいかな」

誰か私に憧れているのだろうか。

私の絵を見て悔しいと思っているだろうか。

自分執筆の手が止まってしまうくらい、私に嫉妬しているだろうか。

そう考えたら、私はあの人のことを思い出した。

あの人は、あの時の私にとって神絵師だった。

どんな気持ちで日々絵を描いているのか、

よく澄ました感じで絵を描き続けられるものだと悔しくもなった。

だって自分はここまで憧れて悔しくて苦しんで、原作自分の絵柄との間に苦しんで、逃げるようにジャンルからいなくなったのに。

苦しんでいる私を、神絵師は知らない。

知恵熱を出そうが、ガリガリに痩せようが、神絵師はそんなことをいちいち聞かされないんだもの

今の私は、誰かから「よく澄ました感じで絵を描き続けられるものだ」と思われているのだろうか。

これは傲りなのか、過去自分俯瞰なのか。

あれほど苦しんだことを度々思い返しながら、

私は今日も黙々と絵を描き続けている。

誰の苦しみもいちいち聞かされないから。

  • 長すぎる

  • 長すぎるから限界まで削ってみて

  • 絵の上手い人間はみんな同じ過程辿ってるからみんな一緒だよ どこまで行ってもその時点での神絵師がいて、自分では描けない憧れの絵を描く人がいて、でも嫉妬や絶望で足を止めるこ...

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