数年前同ジャンルの人間が20人くらい集まったそれなりに大規模なオフ会に参加したことがあった。
顔見知りの人は一人もいなかったので誰に話しかけることも出来ず、会が始まるまで隅っこで大人しくしてたんだけど、開始まであと5分くらいのタイミングでめちゃくちゃお洒落な女性が店に入ってきた。てっきり同じ店の別グループの人と合流するのかと思いきや彼女はこちらに近寄り「◯◯オフってここで合ってますか?」と声をかけてきた。
こんな綺麗な人がオタクやってるのかぁと驚いたと同時に、美人から話しかけられて内心めちゃめちゃテンションが上がっていた。
彼女とはオフ会での席は離れてしまったものの会終了後に再度話しかけられ、意気投合したのもあって後日また一緒に遊び(オフ会ジャンルの聖地巡礼)に行くことにした。
ジャンルの聖地は都内から電車で2時間ほどで、その間はずっとおしゃべりをしていた。話しているうち、何となくの勘で「この人は創作する側のオタクなんじゃないか?それも結構上手い方の」と思った。自分も書くタイプのオタクで、彼女から同じ匂いを感じたのだ。
帰り道に聞いてみたら、果たして私の勘は当たっていた。彼女は別ジャンルで創作をしていて、おまけに大量の信者を抱える綾城ポジションだった(この時点では素でに引退済み)というところまで当たっていた。
彼女が綾城だった当時はケータイサイト全盛期で、萌える作品を産み出すのは勿論のこと、日記でも「綾城らしい」振る舞いをするよう気を遣っていたという。一見全くオタクに見えない外見も綾城活動の一環だったそうで、彼女と実際に会った信者達は「神がこんなに綺麗な人だったなんて」とますます信奉心を強くし、オフ会はさながら宮廷女官のサロンの様相を呈していたようだ(と聞きながら思った)。彼女はサロンで全ての信者に分け隔てなく接するよう努めていたという。
作品、身なり、振る舞い、「綾城である」ために一切手を抜かない姿勢に私はいたく感銘を受けた。おまけに彼女はとても明るく社交的で、照橋さんが実在したらこんな感じなんだろうなと思った。
少し経ってから、また彼女とご飯に行った。話題が私たちが出会った初めてのオフ会の話になって「あの日あなたが話しかけてくれて嬉しかった。こんなに綺麗な人がって内心テンション上がってた」と正直に話した。
すると彼女は「あの日いたメンバーでちゃんと身なりに気を遣ってるなって思えたのがあなただけだったから。この人となら話が合うかなって思った」と言った。
「私が一番近くにいたからたまたまラッキーで話しかけられたんだと思った」と言ったら、「違うよー」と彼女は笑った。
めちゃくちゃ嬉しかった。私は学生時代、いかにもオタクという格好をしたオタクで、そのことで周りからいじられたりからかわれたりとあまりいい思いをしたことがなかった。社会人になってからは外見だけでもオタクに見られたくないという気持ちが強まり、自分なりに努力をするようにしていた。あのオフ会の日はいつも以上に服やメイクに気を遣っていた。
そこを彼女が誉めてくれた。「外見が全くオタクに見えない綾城クラスのオタク」という、自分が最もこうなりたいと思うタイプの人間が誉めてくれた。あの日あの場にいた十数人の中から私を選んでくれた。それが死ぬほど嬉しかった。もっともっとお洒落を頑張ろう、彼女みたいに可愛くなりたいと思った。
その後彼女とは度々遊びに出掛け、一緒に旅行をしたり自宅にお邪魔したりする程の仲になった。一年で一番お洒落を頑張るのは彼女に会う日だ。
自分が知っている限りで一番お洒落な店を紹介して夜ご飯を食べに行った。彼女はもっとお洒落な店をたくさん知っていた。一見にはハードルの高い(というか一見さんお断りだったかもしれない)路地裏のバーにも連れていってくれて、私の好みに合いそうなカクテルをバーテンに注文してくれた。「リアルスーパー攻め様じゃん」と言ったら「でしょ?」と彼女はいたずらっぽく笑った。彼女のそういうところがたまらなく好きだと思った。
彼女とはジャンルの話は勿論、仕事の悩みや人生相談、ファッションや恋愛まで話題が尽きない。
これだけ話は合うし、推しキャラも大体どのジャンル行っても被るのに、推しカプはことごとく逆になる。お互い「暗い過去持ちのキャラとそれを持ち前の明るさで救済するキャラ」の組み合わせが性癖なところまでは一致しているが、どっちを攻めにしどっちを受けにするかが真逆なせいだ。
ジャンルの話をするといつも「このキャラの暗い過去はこいつが癒すんだよな」「分かる」「最高」(頭の中に思い浮かべているカプは逆)という具合になる。
今のままでも十分楽しいけれど、出来れば彼女の書いた同カプ作品が読めたらもっと嬉しい。
もしも今後何かの巡り合わせで彼女と同カプにはまったとしたら、私は彼女という綾城のおけけパワー中島になるんだろうなと思う。
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マンガ読みすぎww
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