2019-05-22

チョロいオタクの雑感

 先日結果発表を迎えた第8回シンデレラガール総選挙。終わってみれば、話題の中心にいたのは常に夢見りあむだった。

 「チョロいなオタク!!

ぼく頑張ったか!?努力なんてムダムダの無じゃん!?

アイドルってなんなんだよぅ!! はー……めっちゃやむ」

 良くも悪くも界隈の耳目を集め続けてきた女の〆の台詞は、彼女のこれまでの歩みを象徴するかのごとく実に「らしい」叫びであった。界隈の反応は言うまでもなく賛否両論。褒め称える声から転載するのも憚られるような罵倒まで、実に多種多様言葉の濁流がこうしてエントリを書いている今この時もTLを流れ続けている。

 筆者個人としては肯定側でありできればそれについての“お気持ち”を述べたいところだが、当エントリの本題はそこではない。この台詞を見たときに真っ先によぎったものは、彼女とは直接関係ない苦々しい記憶だ。


 「あー**さん」

 「(声)つかなそ~」


 事件から8ヶ月が経過した今現在でも、あれほど堪えたことはない。シンデレラガールズのアイドルたちに命を吹き込む声優からあのような言葉が出たこと、収録を経て公開されるWebラジオという形態で世に出されたこと、なにより自分の大切な担当アイドル公然侮辱されたこと。何もかもが悪夢のような日だった。

 例によって界隈は大炎上自分はといえば起こったことにただただ困惑し、嘆き悲しむ以外に何もできなかった。そんな中で目に飛び込んできた、ひとつ意見

 「次のシンデレラガール総選挙で声をつけよう。そしてあの女を見返してやろう」

 冗談ではない。そんな動機で声がついたとして、果たしてそれは喜ぶべきことなのか?悪意(少なくとも当時の自分にはそう見えた)に対し悪意で応酬することは担当アイドルに一生消えない業を背負わせるだけなのではないかそもそもの話、このムーヴメント軌道に乗ったところでそれが総選挙まで続く保証はあるのか?

 そんなことはやめてくれ、と叫ぶ気力はなかった。いち担当Pとしてはこの忌々しい話題が一日も早く沈静化してくれることを、嵐が過ぎ去ることを願うのみだった。


 ……周知の通り、最終結果に顔を並べるアイドル50名の中に「つかなそ~」なアイドルの名はなかった。悔しくないといえば嘘になるが、それ以上に安堵する気持ちの方が強かったのが正直なところだ。レッテルは貼られるだろうが、そのレッテル公式描写に反映されるわけでもないのだから。そう思っていたのだけれど。


 『チョロいなオタク


 そう、確かにオタクはチョロかった。例の発言で何かが変わるのではという声もあったが、自分を含めたチョロいオタクたちが「つかなそ~」を覆すことはなかった。個人レベルでつきあい方を変えた者はいるだろうが、大多数のオタクが選んだ道は良くも悪くも現状を享受することだった。

 このこと自体特別感情はない。あの言葉があったからといって担当アイドルシンデレラガールから抹消されることはなく、モバマスの月末ガチャデレステガチャSR、他にも様々な形で依然として供給は続けられている。外野から向けられる言葉は幾分変わったものの、ゲーム内の彼女が見せる姿は今までどおりのものだ。これを機に身を引くなどとんでもない話で、これから自分なりの距離感コンテンツに付き合っていけばいい。

 それでもどこか釈然としないものが残るのは、オタクの“チョロさ”を否応なく認識させられ翻弄されてきた立場故か。シンデレラ界隈に対する諦念じみた想い。夢見りあむという大暴風雨によって引き起こされた“祭り”が終わり残ったものは、あまりにも空虚感情だった。




 ……ああ、この感情の正体はきっと嫉妬なんだろう。シンデレラガールズの数多のアイドルたちが8年かけて踏み出すことさえできなかった道を数ヵ月で駆け抜けていく女。自分言葉をあれこれとこねくり回し、勝手なことを吐き散らすオタクたちを今なお翻弄し続ける女。担当アイドルが得ることができなかった、いつ得られるか見当もつかないものをまもなく手にしようとする女。

 自分に向けられるあらゆる感情を糧に一躍スターダムへとのしあがった夢見りあむが立とうとしている舞台、そこに担当アイドルの姿はない。その現実が薄れかけていた熱を呼び戻してくれるのなら、もう一度夢を見るきっかけになるのなら、自分はまだプロデューサーでいられる。この思いへと至らせる、アイドルって一体なんなんだ?


 ○○だ、とは敢えて書きません。このエントリで綴ってきた諸々が、“チョロい”オタクである自分なりの、冒頭の台詞に対するささやかな回答です。

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