某所で連れ去りの話について、その後どうなったのかが分からずモヤモヤすると言うコメントを見かけたんで、私が見た事例について語ってみる。
もう10年程前の話で、連れ去りではなく、正確に言えば声かけ事案になった話。
ショッピングモール程は大きくなく、建物は数件あるイオンでのお話し。
平日の日中のこと、引っ越して数日だったのでまだ町に慣れてなかったので、イオンをぶらぶらしてた。
映画を見てちょっと買い物をしようと道路を渡る歩道橋の上でそれを見かけた。
歩道橋は普段からあまり使用者がおらず、使われているのは主に横断歩道なのだが、イオンのそれぞれの建物の2階を繋げている。
それぞれの建物の2階は、駐車場、ゲームセンター、それと買い物できる建物の用品店などが主で、広くて屋根がある。
だからか、連れてこられた子どもがつまらなくなって遊んだりしているのをよく見かけていた。
その日は平日で、引っ越したばかりだったので、買い物をよくすることになるであろうイオンをぶらぶらしてた。
ゲームセンターの様子を見てから、ついでに本屋に寄ろうと買い物できる建物の方へ行く為に直接渡れる歩道橋に出るドアを開けた。
反対側の広くなっている部分で、幼稚園程の女の子一人がしゃがんでいた。遠目にはしゃがんでいる所しか分かってなかった。
ぶらぶら歩道橋の上からもう少しは食べ物屋さんとかないかなーと通りを眺めながらゆっくり歩いていると、対話が聞こえてきた。
「そうか、そうか、じゃ僕と一緒にいこうか」
「ヤッ!」
「一緒に来たら、ケーキを食べさせてあげよう」
「ヤッ!」
え、と思って、あらためてその二人を見ると、女の子は体育座りの腰を上げたような状態で丸くなっていた。
顔はよく見えなかったけど、丸めた膝に押しつけるようにして隠してた。
男性の方はフリースを着たいわゆる休日のパパ風味の格好で、のぞきこむように屈んで話しかけていた。
正直、判断はつかなかった。
父親かもしれない(そういう会話をしている家庭なのかもしれない)。
親戚の人かもしれない。
近所の知り合いの人なのかもしれない。
そもそも父親で喧嘩中なのかも、イヤイヤ期ってきいたことある。
色々と浮かんだが、どうしたものかわからず心臓がバックンバックン鳴っているのが分かった。
まだ近づききっておらず、男性は夢中になっているのかこっちに気がついてない様子だった。
「あのう……」と声が出てしまい、一瞬びっくりした。
男性はばっと顔を上げて、目に見えてうろたえていたのが分かった。
ただ、それでも確証がなく、どうしたものか、と混乱しながら「道を聞きたいんですけど」と続けた。
こっちはうろ覚えなので、どんな会話をしたか正確には覚えてない。
なんとなくこんな感じだった。
「あ、は、はい」
「いや引っ越したばかりで、よく分からなくて、お店なんですけどね、えーっとなんて言ったかな、いやー最近物忘れをするがあって」
という感じで、世間話にしようと、一方的にべらべらしゃべったのは覚えている。
すると、女の子がパッと飛んで(本当に飛んだみたいだった)ダーッと建物の方へ駆けだしていった。
男性はそっちを見た後、こちらを凄い目で一瞬睨んで、「今忙しいんで」と吐き捨てた後、私が来た方へ足早に去っていった。
えって言う間もなかったし、もう心臓が凄いことになっていたから、追いかける気は起きなかった。って言うかそういう発想がなかった。。
っていうか、こういう時どうしたらいいんだ? とか思って呆然として、子ども戻ってきたら話聞いた方がいいのか? とキョロキョロしていた。
多分、5分ぐらいぼうっとしてたんだと思う。
その間誰も通らなかったんだけど、何かした方がいいんだと考え続けて、あ、警察とようやく浮かんだ。
ただ、電話ではなく、交番がイオンの一番はずれにあると、思ったので、そっちへ行った。
幸いというか一人警察官がいて、しかしどうしたらいいんだか分からないんで、とにかく事情をはなしてみた。
その時の会話は大体こんな感じだったと思う。
「すいません」
「はい、なんでしょうか」
「そこの歩道橋で女の子に声を掛けていた男性をみかけたんですが、どうしたらいいんでしょうか」
「え、その人はまだいますか?」
「いえ立ち去った後で、女の子もイオンの中に入って、そのまま戻ってこなかったので」
「あ、はい」
「さっき?」
「はい」
「その男性は今どこにとかは?」
「あ、立ち去った後ちょっとぼうっとしてしまったので、そこまで見てませんでした。ゲームセンターの方へ歩いたのは分かるんですが中に入ったのか降りたのかまでは……」
で、その後警察官が男性の服装や容貌を聞いて、無線で連絡、さらに詳しいお話しをという事で中に入れてもらい、少し待って下さいと言われて、ぼんやりとパイプ椅子に座ってた。
多分見廻りの人に連絡したんだと思う。
その連絡をした後、調書(なのかな?)を取り出し、「あらためて詳しいお話しをお聞かせください」と言われて、話をした。
で、「ご協力ありがとうございました、後はお任せ下さい」と言われた。
「えーっと、こう言うのってこれで終わりなんですか?」
「はい。もしかしたら、あらためてお伺いする場合もありますが」
「うーん、何とも言えないですね。お話しだけだと、それだけで何かできるかどうかと言うのは判断できませんので」
「ええ、でもちゃんと関係者には注意喚起をしますし、警邏中の者も気をつけますから」
「そうか-、なにもできなかったんですかねー」
「いえいえ、十分なご協力ですよ」
で、まぁ、こんなやりとりがあって、私個人は終わり。
その後、町内会の連絡網の中にこの話が載っているのに、数日して気がついたぐらい。
その後どうなったりしたのかは分からずじまいで、また別の町へと引っ越した。
こういうのは捕まったりしない限りは決着はないんだろうなぁ。
そして大抵の場合は犯罪要件を満たさないので(連れ去りなどの行為があれば別だろうし、被害者ならもっと話は別だろうが)、通報者程度だとこの程度。