2018-05-29

伝統を捨てる大変さ

私はあの大学アメフト問題について、当該の学生たちは大変だろうな、と思っている。それは自分中学生時代を思い出したからだ。

特定を避けるために細かいところはぼかすが。あるジャンル部活で昔は全国大会で何連覇とかしていた、かなりの有名中学校。我々はその《すごかった時代》が終わって10年とか以上してから入学生だった。

昔、そんなことがあったなんて知らないで入学してなんとなく入部して。でも伝統の誇りとか、部活の決まりとか、先輩との上下関係の厳しさとか、卒業生練習を見ていただけるように連絡を取るとか、システムだけは生き残っていた。

公立中学から先生は何年かしたら変わるわけで、あのすごかった時代先生はすでにまったく関わってなくて、ただシステムけが生徒から生徒、先輩から後輩に託されて、黙々と動いていた。

でも、自分世代は、そんなにもう全国大会とか行けるようなレベルになれるとは思えなかった。もちろん、一生懸命練習してはいるけど、行けるレベル中学生なりに分かっていた。先生もその部活ジャンル専門家というわけではないし、コーチも来てくださってはいたけど、やっぱりあの《本当にものすごかった》頃を再現できるとは思えなかった。

3年生が引退して部を引き継いだとき自分たちにできることは、今はもう意味のなくなった理不尽な厳しさを捨てて、自分たちの下の世代を、もっとのびのびとさせてあげることじゃないかとみんなで考えた。先輩のことは尊敬もしているが、一方で相当に嫌な思いもしてきたからだ。顧問先生ともそのような方針で一致した。先生も生徒同士で勝手に厳しすぎて、中学生らしくないとお考えだったのだ。

3年生の春になった。部活の決まり理不尽な様々なこと、厳しすぎる上下関係について、新1年生にはそういうことを教えなかった。新2年生にははっきりとは方針を言わなかったが、秋の引き継ぎの時から空気感でなんとなく伝わっていたようだ。おかげでやりたいことをのびのびと後輩と仲良くやれた。そのせいで1つ下の同性の後輩に恋までしてしまい、告白したが前向きに玉砕したのも今ではいい思い出だ(Tさん、あの時は心底から困らせてしまって本当にごめんなさい。でも笑って許してくれた素敵な後輩で、自分だったらああは対応出来なかった。今でも誇りに思っています)。

さて…夏の大会もそれなりに完全燃焼して終わり。やっぱり勝てなかったけど、それは後悔していない。

大会の翌日、荷物を取りに登校したら、先生職員室で事後処理をしながら妙にサバサバニコニコされていた。

何十代も先輩から引き継いで来たもの勝手にぶち壊しにした自責感、楽な方向に逃げて卑怯だったんじゃないかという気持ちはずーっとあって、相当に悩んでいたから、先生には本当に救われた。

我々は2年生後半に部を引き継ぎ、夏の大会までの1年間、そしてその先も、卒業生の皆様方とまったく連絡を取らなかったわけで、色々と薄情者と思われてしまっただろう。それも覚悟の上の決断だった。全国大会で成績を残す、古豪復活、ということを夢見ないではなかったが、それよりも自分たちの足元を見つめての活動だった。先輩方には大変な非礼だったかもしれない。でも、現役生としては実りのあることができたんじゃないかと思う。

秋になり、部活運営Tさんたち、我々よりもしっかりした頼れる後輩たちに安心して託した。それでも練習だけは受験ギリギリ11月下旬までやらせてもらい、なんとか第1志望地区公立での最難関高校合格した。その高校特にこの部活の強豪というわけではないが、その顧問先生は形だけ見守る感じで、生徒は自分たちのペースでじっくり研究しているスタイルが気に入っていた。その高校でその部活をやるためだけを考えて、3年生の春から部活受験勉強とをしていたから、本当にうれしかった。ジャンル野球では無いが、ちば先生の《プレイボール》に運営雰囲気は近いだろう。まあ、あんなに夜中までとか練習しているわけではなかったけれど。おかげで、今でもそのジャンルのことは大好きだ。

ところで、あの時の中学顧問先生は、我々の入学と同時にうちの学校に着任され、我々の卒業と同時に退職された。我々が最後の生徒たちになるって、もしかしたら早くお決めになられていて、だからあの夏の大会の翌日、妙にサバサバされていたのかもしれない。

我々の卒業後。3年になったTさんたちは、新任の顧問先生がこのジャンル経験者だったこともあり、のびのびと前向きな努力地区大会で勝てたと聞いた。大会を見てはいなかったが、自分のことのようにうれしかったし、やっぱり我々の決断は間違っていなかったと思った。あのまま厳しさを貫いていたら、Tさんたちはこのジャンルを嫌いになってしまたかもしれなかったから。

長くなった。

あのアメフト部とは状況は全然違うけど、伝統を捨てたら捨てたで、そのジャンルを追求する熱い日々は待っていてくれるに違いない。

なんのジャンル部活にしても、みんなでそれを追求し、熱くなれるのには変わりはないはずだ。

彼らがどうか、前向きな大学時代をまっとうできるように祈りたい。

私などには想像も出来ない、大変な経験をなさっていると思う。どうかこれが、学生の皆さんの人生において、良き糧になりますように。

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