2018-04-04

夫の転勤について行かないことにした

私は関西で、とある工芸品の製造、また製造技術を使った研究機関メディアサービスを行う工房技術職をしている。

この仕事を始めてもうすぐ5年になる。

新卒で入った販売会社事務職を心労で辞め、次に就いたのが先述の仕事で、人情に厚い師匠(社長)、本当の母親の様に接してくれる師匠の奥さんをはじめ、個性的な人ばかりだが温かい雰囲気が私を迎えてくれた。

怒られながら少しずつ仕事を覚え、今では製造工程の一部を任せて貰ったり、幾つかお得意様の窓口をさせて貰えるようになった。「増田さんがやったんだし大丈夫でしょ」と言ってくれるお客様仕入れ先ができた。

今でも毎日師匠から怒られているが、給料クラフト系の技術職(下っ端)にしては有り得ない程いただけているし、幸せ仕事をさせて貰えてると感じている。

夫とは、今の会社転職して間もない頃に出会い、数ヶ月の友達期間を経て交際を始めた。夫は関東人間だった。

出会って数年過ぎた頃、夫から「僕は転勤するかもしれないけれど、結婚してほしい」との言葉を受けた。私は「貴方を愛しているが、仕事も愛している」と返した。話し合いは平行線になるかと思えたが、いつ巡ってくるか(それこそ3年先か10年先かも)分からない転勤のことばかり気にして、最愛の人との結婚を諦めることほど馬鹿らしいことはない、というのが、2人の共通認識だった。結局私達は結婚した。その時に考えればいい。それで良いと思った。

会社の皆は本当に喜んでくれて、特に師匠は「もし子どもが欲しいなら何でも言って欲しい。育休も時短も早退も、考えるのは俺の仕事子どもを連れてきても働ける方法はもう色々考えてあるからな」と言ってくれた。涙が出るほど嬉しかった。

夫の転勤が決まったのはその直後だった。

夫と同居して10ヵ月、結婚式を挙げた翌月だった。まさかこんなに早く来るとは流石に思っていなかったので、私達は酷く動揺した。

バタバタと2週間で転勤先の家を決め、荷物をまとめた。連日連夜取引先や社内の送別会に行かざるを得ない夫と、きちんと話し合う時間はとれなかった。私達は手短に話をした。

「僕はこれから東京に帰る。君はこれからどうする?」

仕事を辞めれる訳ないでしょう」としか、私は言えなかった。

弊社の同業は全国5社にも満たない。その殆ど縁故採用などの特殊ルートで雇っており、会社ごとにノウハウがかなり違っている。私の仕事は「潰しがきかない」。また工房でモノを触ることで成り立つ仕事のため、リモートワークや内職もできない。つまり「出社することでしか働けない」。そして何より、今の給料と温かい社風、伝統を大切にする心の優しいお客様を捨ててしまうことに耐えられなかった。

夫の転勤も仕事のことだ。私と暮らすためだけに、苦労して入った大企業を捨てることはできないだろう。まぁ無理だよね、とお互い言い合った。

入場券を買い、京都駅ホームで夫を見送った。自分で選んだ道なのに、夫がいなくなる実感が急に湧いてきて私は泣いてしまった。セコい女だ。夫はいものように「まぁ仕方ないよ」と笑った。

ところが夫が新幹線に乗り込み、ドアが閉まった時私は見てしまった。私に見られないよう隠れていたけれど、顔を真っ赤にぐしゃぐしゃにして大粒の涙を流す夫の姿が確かに見えた。今までに見た事のないような悲痛な表情だった。

今、その顔を思い出しながら増田を書いている。

この家で、10ヵ月夫と暮らした。小さなことでも一緒にやるだけで大イベントになった。お互いの生活スタイルが混ざりあっていくのが面白おかしくて、関西弁が移った標準語の夫、標準語みたいになってきた関西弁の私がお互いの話し方にツッコミを入れたりした。夫が隣でケラケラ笑ってるだけで生き辛さがスルリと流れていくような感じがした。愛する人との生活はこんなにも深く広く、心を豊かにしてくれた。

私は今の仕事が好きだ。子どもを育てながら少しずつ技術を磨いて、もっと色んなお客様の手助けができればと思いながら仕事をしてきた。前職で失った自尊心を蘇らせてくれた会社の皆に恩返しがしたかった。それに、「夫が転勤する」と話すと「いつ仕事辞めるの」と聞いてくる両親や友人達イラついてもいた。なんで女ばかり男の人生に合わせなければならないのと。

本当にこれが正解だったんだろうか。夫の顔をああしてしまったのは、私が「辞められる訳ないでしょう」と言ったからだ。夫が今の仕事を大切にしているからだ。

子どもができたら、夫はその子とも離れ離れになる。夫はまたあんな顔をするんだろう。そう考えるととても辛い。

本当は夫のそばにいたい。でも仕事を捨てられない。夫、師匠、奥さん、上司、後輩。その全てが温かくて、離れられない。

なんか大事ものが抜け落ちてる気がしてならない。夫は私ではなく別の人と結婚するべきだったのではないか。私が夢を諦めるしかないのだろうか。

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  • 夫が転職して残ればいいじゃん

  • 増田の判断は正しいっていうか支持したい 職場を好きになること自体が奇跡だし 夫とは離れ離れになってしまうのは悲しいけど 仕方ないかな…

  • 仕事との出会いも大切なご縁だから、増田の選択は合ってると思う。 また一緒に暮らせる日が訪れますように。

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