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銀河英雄伝説のリメイク。3期以降も続くのかな。もしそうなら、男女役割分業の描き方は変更せざるをえない気がする。旧アニメのままだと、さすがに時代にそぐわない。作品として大変に面白いのは踏まえたうえで。…なんてことを書いたら炎上するかな。
実際のところ、昔のドラマやアニメを見ていると、価値観の変化がもっとも顕著なのがジェンダーの描き方だという感はある。そういう変化を踏まえたうえで作品を楽しめばよいわけで、ジェンダー関係の指摘は作品を全否定することだというのは違うと思うんだけどな。
なお、個人の感想ですので作品に何ら干渉する意図はありません。NHKに投書もしませんし、BPOにねじ込んだりもしません。三期があるのを皆で祈りましょう。
■原作者田中芳樹さんのスタンス(らいとすたっふ安達裕章さんの過去ツイートより)
このあたり、マッグガーデン版の巻末付録につけた田中さんのインタビューで聞いたなあ。執筆当時の「30代男性」と現在のそれでは、かなり大きな差があるもんね。あとは女性兵士の描き方とか。田中さんも「いま書いたら、ずいぶん違う作品になったと思う」って言ってたわ。
それについては作者の田中さんも、当時の自分のもつ軍人のイメージが男性中心だったことを認めたうえで、いまの自分が『銀英伝』を書いたら、女性の活躍をもっと多く書いただろう、と言ってました。
タイトルの通り増田は20年来の銀英伝ファンですが、私が銀英伝を知りネットの掲示板や個人サイトなどを見始めた当時から、ファンによる「銀英伝の女性キャラはステレオタイプ過ぎる」とか「田中芳樹は女性を描くのが下手」みたいな批判は当たり前のものとしてありました。今回炎上した冒頭のツイートもそれと同系統のものであり、作品内の女性の扱いに対する感想としては見慣れた内容で特に違和感はありませんし、個人としての違和感を述べたうえでリメイクにあたってのアップデートを希望するものであって、それ自体問題があるものとは思えません(なお、「Die Neue These」はリメイクではなく「原作の再アニメ化」なので、その点は事実誤認なされているものと思います)
また、続いて安達さんのツイートを引用した通り、原作者は「銀英伝における女性キャラや活躍が少ない」という点について、それを創作上の弱点(という言い方が正しくなければ上手く描ききれなかった部分)だと認めていて、当時の自身の理解や価値観を前提とした描写だったとしたうえで「いまなら別の描き方をしていた」というスタンスをとっています。
男女役割分業の描写については特にスタンスを明確にしているわけではないですが、上記のように女性の活躍や社会進出については当時といまとで違った描き方をするだろうことを認めていることから考えるに、現在の価値観にそぐわない描写があることは作者自身も否定しないものと思われます(原作で描かれたヤンとフレデリカの生活描写を「現在の価値観にそぐわない」と判断するかはわかりませんが)。
このように、冒頭のツイートは以前からファンの間でも作品の問題点のひとつとして挙げられていた描写について、あくまでも個人の意見として再アニメ化を行うにあたり違和感のないようアップデートしたほうが良いと述べるものであり、いっぽうで原作者も原作には様々な問題点があることは認めたうえで「いまなら別の描き方をする」というスタンスをとっているわけです。
実際にそれらの描写を変更すべきか否かはそれぞれで判断が異なるのは当然としても、こうした意見に対して「現代にそぐわないから変えろって言いだす社会学者やべえ」などと嘲笑するのは原作者のスタンスを含めて明らかに論点を見誤っていますし、「銀英伝を燃やしに来た」などと反応するのは過剰です。挙げ句に社会学者というツイート主の職業にフォーカスしてその職業全体を否定するような言説まで行うのははっきり言って異常だと思います。
■余談
本件もそうですが、ポリティカル・コレクトネスを巡る議論においては「過剰なポリコレを押し付けるな!」などと主張する批判側にも個人の意見に対して過剰かつ攻撃的な言動を繰り返す「反ポリコレを旗印に個人を抑圧するネット憂国騎士団」みたいな存在も目立ってきており、まともな議論が成立しづらい状況になっているように思います。
創作物それ自体だけでなく、創作物に対する意見・批判を含めての「表現の自由」です。「表現の自由」を訴えるのであればその点を見誤るべきではないし振る舞いも自制するべきではないでしょうか。
■さらに余談
「Die Neue These」も良いですが、原作ファンとしてはいまウルトラジャンプで連載中の藤崎竜版銀英伝を激推ししたいです。キャラクターやエピソードは本伝・外伝・OVAなどからの好いとこ取り、それも全体として齟齬がないように再構成されており、さらに物語やキャラクターをより魅力的にみせるような改変も随所になされていて、原作を知らない人はもちろんですが、原作(特にOVA)を良く知る人こそ色々な改変や小ネタ、伏線を見つけながら楽しむことができるとてもよい漫画となっています。フジリュー版はいいぞ。
■追記
『銀英伝』の話題の火元を把握した。原作ファンが怒ってるけど、たしかマッグガーデン・ノベルズ版収録の田中先生のロングインタビューで、「フレデリカまわりの描写は、今だったらもうちょっと違うものにする」みたいなことをご本人がおっしゃってなかったっけ? 手元に本がないのでアレだけども。
知人から田中芳樹先生がフレデリカの描写について触れているインタビューのソース画像が送られてきた。私の責任で引用しますね。出典は『銀河英雄伝説 6 飛翔篇 』(マッグガーデン・ノベルズ) の297ページ・298ページ。商品にリンクもしときます。 https://amzn.to/33ncPLt
(フレデリカの料理の描写について)ただ、これも三○年以上前だから許された表現なわけで、いまの時代にはそぐわないと思います。ヤンが料理や家事をしても良いわけですから。
このインタビューを読めば分かる通り、原作者自身は問題視された描写についてはっきり「いまの時代にはそぐわない」という認識を示しています。原作者の現在の価値観やスタンスはむしろ冒頭のツイートに近いわけです。にもかかわらず、「あの描写は時代にそぐわないからリメイク(再アニメ化)では変更したほうがいい」という意見を言っただけの個人に対して今回のような揶揄・嘲笑・攻撃が向けられる状況はやはり異常だと思います。