はてなキーワード: まつげエクステとは
自分はとにかく顔が薄く血色が悪い。
血管が透けるほど白く、小学校一年生の時からクマが濃いので周りから心配されてきた。
色白は七難を隠すというが、幸の薄い顔だと逆効果だというのは自分が証明する。
顔が薄いということは、化粧映えするということではない。
塗ったところでほとんどの変化がない。
濃く塗れば、浮きすぎる。
モードなメイクも、コンサバな囲み目も、まつげエクステも、赤リップも
自分がすると「無理している」仕上がりになるのが鬱だった
30も近いので、百貨店で揃えた品のある化粧品を薄くつける毎日
付けても付けなくても一緒のくせに、少しでもマシになるはずと思い込んでいた
ここのコンセプトは「インビジブル」。
2/5発色のリップや、塗るとうっすら血色が良くなるチークが有名だった。
そのコンセプトに見事に合致した自分は早速カウンターへと足を運んだ。
年配のBAさんにタッチアップしてもらって、自分は初めて化粧の効果を感じることができた。
クマは消えるわけではない。
透けた血管も、紫色の唇も、塗りたくることでカバーすることはない。
ほんの少し色を足すだけで、そこから視線をそらすことができる。
全アイテム、20%程の発色のそれを顔にのせるだけで見違えるように元気な顔立ちになった。
色々購入し、そのままの顔で恋人に会った。
「どうしたの!」と驚かれて、「今日すごいいいね!」と喜んでくれた
「白目がきれいにみえる」「肌が粉っぽくない」「すっぴんでかわいい人みたい」
うれしい言葉をたくさんもらった。
そんなブランドがこの秋から販売を縮小し、来年の秋には販売を終了する。
似たようなブランドなんてない。
あのリップも、チークも、アイシャドウも、どれもこれも、どこにもない
私はまた、血色の悪い顔に濃い粉を塗る日々に戻るんだろう
CHICCA、どうしてなくなってしまうの
初めて会った時は、友人の友人だった。
美容系の専門学生で、将来はメイクアップアーティストになりたいと、キラキラした目で言っていた。
中学生の頃いじめられていた彼女は、高校生になって近所に住んでいた先輩に習ってメイクするようになってから、自信が生まれ、どんどん綺麗になっていく自分が楽しくてしょうがなかったという。
そのメイクを教えてくれた先輩が通っていた専門に入学して、毎日大変だけど楽しいよ、と綺麗に巻かれた茶髪の巻き髪が揺れていた。
共通の友人に連れられて、その日はホストクラブへ行った。私も彼女も初めてで、未知の世界に怯えつつも自分なら絶対ひとりで足を踏み入れられない世界にちょっと酔っていた。
その後は彼女の家へ泊まり、ホストって思ったよりも怖くないね、やすかったしね、マジで客のタバコに火をつけるんだ~って初々しい会話に花を咲かせて眠りについた。
確かに思ったよりは怖くなかったけれど、ネオンに溢れキラキラした店内はどこか吸い込まれる闇をはらんでいるようで、私はそれっきりその世界を忘れて生きていた。
でも彼女は違っていた。
次にあった時は、彼女はひどく酔っていた。なんとなく早起きしてTVを見ていた時に携帯の着信がけたたましくなり、びっくりしながら取ると、ろれつがまわらない声で家に遊びに行っていい?ときかれた。
彼女が今いる場所からタクシーで1500円ちょっとの距離にある私の家を、酔っ払いながらも覚えていたらしい。
家に招き入れたこともないから不安だったが、なんとなくほっとくのもきまりが悪いので、家の近くの目印になる建物を指定し、彼女が乗ってくるタクシーを待った。
少しふらつきながら降りてきた彼女は、きっちりと盛り髪のヘアメイクをしてあり、着ている私服が毛玉だらけで少し汚れているのとひどく対照的だった。アイメイクが少し崩れ、つけまつげが片方なかった。
荷物を少し持ちながら家へと連れて帰った。とりあえず眠そうだけれどシャワーを浴びることをすすめ、着ていた服を洗濯機に放り込んだ。
彼女は専門学生をしながら、夜はキャバクラで働き始めたらしかった。
シャワーからあがった彼女は少し仮眠をとると、今日も授業があるんだとものの15分でメイクを済ませ、お礼を言いながら学校へ飛び出していった。
それから半年ぐらい、その間何回か共通の友人たちと一緒に飲みに行ったり、買い物を共にしていたが、彼女が少しずつ変わっていくのに特に何も言えず時は過ぎていった。
つけまつげは綺麗なまつげエクステに、つけ爪からジェルネイル、スカルプチュアへ。いつもばっちりお洒落をしているから、余計にあのときのギャップが凄かった。
茶髪はクリーム色へと代わり、より一層派手になるメイクとよく似合っていた。元が地味な顔だからメイクが映えるんだよ、って自虐気味に言っていたのを思い出す。
ある日会った彼女は、専門学生からバイト掛け持ちのフリーダーへ変化していた。
別に夢ができて、どうしても専門に通う時間がなくなったから退学したと言っていた。私は驚いた。しかしアドバイスできる立場でもなく、そうなんだ、と軽く返事して頑張ってねと告げた。
内容をきくのは怖かった。キャバクラはアルバイトから週5回の本業へとレベルアップし、その他空いた時間に昼のバイトをこなしていたらしい。
厚くなったファンデーションから少し見え隠れするクマが痛々しかった。
夢ってなんだろう。
その夢の1つが叶った次の月、彼女はとあるマンションから飛び降りて亡くなった。
客の1人が自殺したホストのスレは荒れまくり、ついにホスト自身も店から飛び行方不明になった。
あれから彼女はキャバクラ兼ヘルス嬢、デリヘル嬢、ソープ嬢、企画女優と順調に落ちていった。ヘルス嬢になったところで連絡が途絶え、最後を含めてその後は聞いた又聞きでしかない。
初めて訪れた先で出会ったホストを応援し、その時は新人だったカレを遂にNo.1にまでのしあげる夢をもっていた。
No.1になったら夜の世界を上がって、結婚しようと言われていたらしい。
夢は確かに1つは叶った、しかしもう1つの夢は敵わず彼女は飛んだ。
どう考えても彼女の本当の夢は後者だったことは想像に難くない。
今でもあの町へ行くと思い出す。変わっていく彼女と、変わっていないこの町を。