2022-02-03

ホロコースト関連問題〜「ユダヤ人」とは何か?

このニュースについて。

ウーピー・ゴールドバーグさん ホロコースト発言で出演停止に | アメリカ人種差別問題 | NHKニュース

 

私は増田ではホロコーストオタクとして有名な人だ(自分でそう思ってるだけだ)が、ホロコーストって調べれば調べるほど深くて広くて細かくて、どんなに学んでもその難しさが一向に消えないくらいの難しさがある。どっかで読んだ話では、どんな歴史学者でもホロコーストの全てを知ることは無理と言われるくらいだ。

  

私のホロコーストに対する関心部分は偏っていて、否定論にあり、否定論理屈反論批判する部分に特化しているわけだけれども、ホロコースト否定論の中心となっている欧米否定論者は否定論を主張することを商売にしているプロなので、情報量があまりに多いため、それを調べて反論する方も大変である欧米にはそれを細かく反論する人たちもいるので、そこを参照すれば済む部分も多く助かってはいるが、一方で知らないことも多いのでその否定論に対する反論の内容がよくわからない、みたいな悩みもないわけでもない。

 

そのホロコースト議論否定論関係ない部分も含め)で難しい部分は色々あるが、当時の一般的認識理解するのが難しいというのがある。何故、ナチスドイツヒトラーは「ユダヤ人」を絶滅させようとしたのか? は、簡単なようでこれに答えるのはなかなか難しい。

 

この問題については、様々な角度から検討がなされており、現在では明確なユダヤ人絶滅計画そもそもなかったのではないか? とすら言われているようでもある。否定論者がうるさく言うように確かにヒトラーのはっきりした命令書や、ユダヤ人絶滅を命じたと言う明確な証拠は残っていない。もちろん、間接的な証拠はいくらでもあることは言っておかねばならないが、ユダヤ人問題の最終的な解決最初に言い出したのがヒトラーではないことだけは確かなのである

 

ここまで説明して初めて、タイトル問題に入ります

 

ユダヤ人」って、何かわかりますか? これ、なかなか簡単説明するのは難しいのです。単純な説明だと、ユダヤ人ユダヤ教徒、でありそう思っている人も多いだろうし、間違いでもありませんが、ナチスドイツは「ユダヤ教徒ユダヤ人」とは見做さなかった、と言われたら「え?」となる人もいるのではないでしょうか。ナチスドイツ政権を獲得して2年後に発布された「ニュルンベルク人種法」、すなわちユダヤ人公民権を明確に剥奪した悪名高い法律にはこう書いてありますWikipediaからコピペします。

 

4人の祖父母のうち3人以上がユダヤ教共同体所属している場合は、本人の信仰を問わず「完全ユダヤ人」[18][16][3]。

4人の祖父母のうち2人がユダヤ教共同体所属している場合は次のように分類する[18][3][16]。

ニュルンベルク公布日時点・以降に本人がユダヤ教共同体所属している者は、「完全ユダヤ人

ニュルンベルク公布日時点・以降にユダヤ人結婚している者は、本人の信仰を問わず「完全ユダヤ人

ニュルンベルク公布日以降に結ばれたドイツ人とユダヤ人婚姻で生まれた者は、本人の信仰を問わず「完全ユダヤ人

1936年7月31日以降にドイツ人とユダヤ人の婚外交渉によって生まれた者は、本人の信仰を問わず「完全ユダヤ人

上記のいずれにも該当しない者は、「第1級混血」(ドイツ人)

4人の祖父母のうち1人がユダヤ教共同体所属している者は、「第2級混血」(ドイツ人)[18][3][19]。

 

これを読めば分かる通り、ユダヤ教徒ユダヤ人なのではありません。「本人の信仰を問わず」とはっきり書いてあります。この法律でこのようにユダヤ人範囲が定められたのには理由があって、そもそもユダヤ人とは何か、定義すらなかったのです。そこで、「血さえ繋がっていたらユダヤ人だ」と極端なことまで主張する人も多かったのですが、そんなことを言い出すと、ユダヤ人範囲が膨大な人口に膨れ上がり、影響が大きくなりすぎるため、その範囲をできるだけ狭めたのがこの定義です。野放図にユダヤ人を認めると百万人をはるかに超える人口になったのが、このニュルンベルク法の定義により77万人程度に収まることになりました。この定義でも、まだまだ十分ではありませんでしたが(有名なヴァンゼー会議では、その大半がユダヤ人範囲について確認の話だったようです)、要するにユダヤ人をなんとかするべきと考えながら、ユダヤ人がなんであるかはっきりと知っていたわけではなかったのです。

 

自身信仰を変える人はそうは多くないので、アバウトには「ユダヤ人ユダヤ教徒」は遠からず合っているとは思いますが、少なくとも当時は人種、乃至は民族と捉えられており、ユダヤ人だけでなく、ロシア人スラブ民族ドイツ人はゲルマン民族でありアーリア人などと、人種民族として人間区別されると考えられていたのです。この辺から話が難しくなっていくので、私にもそんな難しい話はできませんが、人種間で優劣があると考えられるようになっていたのです。その背景には、科学の発達があり、進化論があります人種民族の優劣は進化によって決定され、遺伝的なものであると考えられるようになっていたのです。広義的な優生思想ですが、狭義的には安楽死作戦(T4作戦)で障害者を殺したのははっきり優生学として考えられたからです。

 

そして、ユダヤ人達は歴史上、古くから色々と差別を受けてきたわけです。大きな話としてはキリスト教の発達と共に、ユダヤ人社会的差別を受けることが多くなりました。ユダヤ人が「ゲットー」に住まわせられたのはナチスドイツが初めてではなく、中世にもありました(ただしナチスドイツ時代ほど悲惨なことはなかったようです)。しかし、近世代に入ってユダヤ人に対しての偏見として大きな意味を持つようになったのは、ユダヤ人には富裕層が目立つことでした。これには理由があり、歴史的に金融的な仕事は卑しい仕事としてキリスト教社会では規制されていたのですが、ユダヤ人には認められていたからです。ところが、それによりユダヤ人(の一部)が富裕となると、資本主義の発展と共に、ユダヤ人の影響力が大きくなり、20世紀初頭、影響力の大きかった偽署『シオン賢者議定書』に代表されるように、ユダヤ人世界支配を企む陰謀者だのようなことまで言われるようになるのです。ヒトラーも相当程度、『シオン賢者議定書』を信じていたとされます。そして、ドイツ第一次世界大戦に敗れ去って、不当に領土を奪われ、膨大な賠償金を課せられて国が酷いことになったのも、ユダヤ人のせいだと思われるようになったのです。こうした、社会的な悪影響をユダヤ人のせいにする考えは欧州では広く当たり前のように行われていたのです。ヒトラーもその一人だったに過ぎません。

 

ホロコーストが何故起きたのかについては、以上のような背景事情認識する必要があります。だから、例えばユダヤ人を根絶させるためにユダヤ人に対する不妊治療まで行われました。ユダヤ教徒」を問題にするならば、単純に日本キリスト教にやったように禁教にして仕舞えばいいのですが、そんなことはしませんでした。ユダヤ人あくまでも「人種」だったからです。ユダヤ人は特徴的な外見を持っており、当時はその外見的特徴をやたらに強調した差別広告も珍しくなく、またユダヤ人識別図まで公式に作られたのです。これによって、ユダヤ人ではないのにユダヤ人と間違われて収容所送りになる人さえいました。ナチスドイツユダヤ人排除政策として最初は、ユダヤ人シオニストユダヤ人の国を作るべきと考える人)と協力してユダヤ人パレスチナ移住を推進しましたが、途中でやめています。何故なら、それではナチス管理外にユダヤ人を温存させることになり、将来的な憂慮すべき問題として残ってしまうからです。イスラエル欧州に近すぎると言うのもありました。だからマダガスカル計画にように可能な限り遠くの土地強制移住させることまで考えたのです。結果的には戦況の悪化と共にそれも不可能になり、ドイツ支配地域内で虐殺するしかなくなってしまいました。

 

それもこれも、ユダヤ人人種として災厄の元凶=悪と考えたからです。未だにそのように考える人は後を立たず、反ユダヤ主義が絶えたことはありません。ウーピー・ゴールドバーグ番組を二週間出演停止になった理由は、人種問題黒人白人間にしかないのような印象を与えることを述べたからだとされているようですが、だとするならば、もちろんそんなことはありません。白人至上主義者の多いアメリカでは、同時にその白人至上主義者の多くは反ユダヤ主義者でもあり、ホロコースト否認論者もかなりいます。その根底にあるのはあくまでも、ナチスドイツ共通する「人種差別であることは間違いありません。

 

個人的には、「人種」という考え方にはほとんど意味がないと思っています。不当な差別を生むばかりの概念であり、悪影響しかないのではないでしょうか? 極端な言い方ですが、人種が違っても、人間ありさえすれば基本的には交配が可能なわけですから、こうした「混血」の存在こそ人種という考え方は誤っている証拠ではないか? のようにさえ感じます

  • つまり、ウーピーさんは、ホロコーストをユダヤ人差別ではなくて、ユダヤ教差別だと勘違いしてたと・・

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