■自衛隊にとってオスプレイが微妙な理由

V-22とかV-280とかが話題だけど、自衛隊に必要ですかと言われると・・・

他に優先すべきものはたくさんあるよねってことを書いた

オスプレイの歴史

1981年 イランアメリカ大使館人質事件(イーグルクロー作戦)の失敗を契機に開発プロジェクト開始

1989年 初飛行

2005年 フルレート生産開始

2007年6月 運用開始

2012年7月 MV-22Bが岩国飛行場に搬入

2015年5月 平成27年度予算、対外有償軍事援助(FMS)で購入する事に日本が合意　5機購入

2016年 平成28年度予算、4機購入

2017年 平成29年度予算、4機購入

2018年 平成30年度予算、4機購入

2018年4月 CV-22が横田基地に搬入

2019年6月 ボーイング発表「オスプレイの生産ライン停止予定、新規購入は2020年9月が最終期限」 https://web.archive.org/web/20190614141355/https://www.janes.com/article/89253/paris-air-show-2019-boeing-warns-last-chance-to-buy-v-22

2020年7月 自衛隊へ配備開始

2020年7月 自衛隊で飛行開始

オスプレイの微妙な点

コストが高い

Weapon System Sustainment:　Aircraft Mission Capable Goals Were Generally Not Met and Sustainment Costs Varied by Aircraft

https://www.gao.gov/products/gao-23-106217

2011年から2021年までのコストをもとに計算すると以下のような購入・運用コストになる

もちろんパイロットの育成コストも固定翼機、回転翼機より高い

ティルトローターにお金を使うより、地対地/艦ミサイルにお金を使いたいよね

自衛隊自体が欲しがっていない

自衛隊は2019年6月時点で生産終了の通知を受けていたが追加注文を行っていない

一方、回転翼機のチヌーク（CH-47）は大量購入します

現在まで自衛隊はV-22の後継機であるベル V-280（2025年までに米軍へ納入予定）に対する興味を示していない

仮にV-280を購入しようにもV-22以上の高額になるのは確実なので、既存回転翼機の置き換えなんて不可能

MV-22はひゅうが・いせ・いずも・かがで運用するらしいが・・・？

時代が変わり、運用の見込みが外れた

当初オスプレイの用途としては以下のような見込みがあった

しかし2000年以降の中国軍の劇的な能力増強によって前提条件が変わってしまった。

ＭＶ－２２オスプレイ －米海兵隊の最新鋭の航空機－

https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/haibi/pdf/mv22_pamphlet.pdf

２．強襲上陸・陽動作戦における役割

海兵隊は待ち構える敵を強襲して上陸する強襲作戦や、上陸すると見せかけ他部隊の作戦を支援する陽動作戦を行います。

来援部隊の受入基盤を確保したり、機動性を生かして重要目標をいち早く制圧します。

MV-22は、人員・物資の輸送支援や負傷者の後送などの任務において活躍します。

Bell Boeing V-22 - Air Assault And Special Ops With An Unmatched Advantage

https://www.bellflight.com/products/bell-boeing-v-22

• Missions
  • Air Assault
  • Special Ops
  • Carrier Onboard Delivery
  • VIP Transport
  • Aerial Refueling
  • Evacuation and Recovery

どのように時代が変わり見込みが外れたのか？

オスプレイの開発は1980年イランアメリカ大使館人質事件(イーグルクロー作戦)の失敗を契機に始まった。

その当時の運用方針は「水陸両用上陸を行う海兵隊」が運用することを第一に想定されていた。

しかし2000年以降の中国軍の劇的な能力増強によって前提条件が変わってしまった。

• 対空能力の劇的な強化
  • 地対空ミサイルS-400の配備 (射程400KM、台湾全島が射程内)
  • 艦艇の対空能力の向上(HQ-9B 射程300KM、中国領海内から尖閣・与那国諸島が射程圏)
• 戦闘機能力の劇的な強化
  • PL-15,PL-17,PL-21などの超長射程空対空ミサイルの配備
  • J-20,J-10,J-16の大量配備

これに伴い米軍の戦術もオスプレイが開発された時代とは変わっている

• 中国の防空圏内へ侵入すればステルス戦闘機であろうとも撃墜される恐れが強い
  • 米軍は海兵隊による水陸両用作戦で敵陣へ切り込む戦術は廃止し、小規模なグループが分散して地対地/艦ミサイルによる攻撃する戦術に切り替えている
  • 米軍は中国の防空圏内での戦闘は極力避けるよう戦術を変えている

というわけで大国と大国が正規戦を行う現代では、自衛隊にとってオスプレイは「帯に短したすきに長し」になってしまった。

Permalink | 記事への反応(5) | 20:08

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