2022-03-03

舞台冬のライオン」を見た(ネタバレ

 みょんなことからタダ券を貰ったので、東京芸術劇場でやってる「冬のライオン」(舞台「冬のライオン」公式サイト|佐々木蔵之介主演)を見に行った。

 舞台を見るのは10年ぶりくらいかも、増田普段アニメしか見ないので俳優さんとかは全然からない。「冬のライオン」は歴史ものらしいのでちょっと面白そうかなと思った。歴史は多少興味があるので。

 東京劇場ということは上野にあるアレに行けばいいんだろと思ったら、あっちは文化会館という名前の別の施設で、芸術劇場池袋にあるらしい。事前に確認しておいて良かった。

 舞台の幕がバイユーの壁掛け柄でなかなかすてき。

 主人公ウィリアム征服王の孫で後のリチャード獅子心王やジョン欠地王の親父であるヘンリ二世。彼がある年のクリスマス家族を集めて、相続問題に片を付けて、ついでにあわよくば妻のエレノア(エレオノール)と離縁して愛人のアレー(アデル)と結婚しようとするところから話が始まり、結局まあほとんど話が進展しないまま話が終わる。余談だけどアレーの名前がアレーなので、あれと言ってるのかアレーと言ってるのか時々わからなくなった。

 ヘンリ二世がなんていうか高田純次ドラマ版の露伴先生の演技を混ぜたような人物狡猾ではあるのだけれど、高田純次から、この人がいるだけでどんな深刻な話をしていても場がコメディになってしまう。

 よく知らなかったけどこの人の相続権て母ちゃんマチルダ経由で来ているんだな。アキテーヌ奥さんのエレオノールが持ってきたものだし、女性の持ってきた土地で成り立ってる国という感じだ。

 元々舞台作品なんだけれど、映画化されたものが有名なようで、ヘンリ二世を扱うときには度々引き合いに出される(たとえば世界史の窓:ヘンリ2世)。

 ところでお前らポスター全然衣装雰囲気も別物じゃねーか。表紙詐欺にもほどがある。息子2人とフランス王なんかスーツだし、ジョンに至ってはヤンキーみたいな格好してる。エレノアなんかグラサンつけて登場してくるし、中世どこ行った。こんなんやで(https://twitter.com/tliw_2022/status/1497195310422323206)いやでもメガネスーツのリチャードはそれはそれで格好が良かった。

 前半は妻と愛人と3人の息子(ジョンとリチャードの他に影の薄いジェフリーというのが居る)にフランス王がそれぞれに相続権やフランス領土を獲得しようと互いに陰謀を巡らせては即座に破綻したりする。わりとドタバタコメディの趣が強い。日常会話のように互いに陰謀を企てるので真世界アンバーとかが好きな人面白いかも。セリフがわりと早口なのと陰謀ゲーム局面コロコロとめまぐるしく変わっていくので、今誰が何を企んでいるのかちょっと把握しきれなかった。まあ、後半になってみるとこれらの陰謀ゲームは一旦全部リセットされるので覚えきれなくてもあんまり問題は無かったのだけれど。

 休憩を挟んで後半に入ると、これまでのドタバタコメディが段々とシリアスさを増してくる。2クールものアニメの2クール目のよう。前半は登場人物が全員嘘の上に嘘を塗り重ねていたので誰が何を言っても本音ではないというのが明らかだったから、のんきに笑っていられたのだけれど。後半になると段々とその嘘が剥がれてきて、痛ましいまでの本音が見え隠れするようになる。後半の最初の方ではまだ結構笑ってる観客も多かったけど、いやこれはちょっと笑えなくないかと思ったりした。かなり露骨に親に対して愛してくれと叫ぶもほぼ完全に無視されるジェフリー空気っぷりとか相当悲しかったと思う。まあそういう泣き笑いの境界みたいな展開が続く。

 終盤、愛人のアレーがヘンリに対して、私と結婚して子供が欲しいなら、その子供の将来の安全保障のために今いる息子を全て殺せと持ちかけ、ヘンリ自身もだいぶ悩んだ結果せやなと応じ、子供たちの方もいろいろあった結果、親父をやっちまおうと考えるのだけれど…………この家族の愛の形というのは、わかりにくいけれどこういう形でずっと表現されていたのかもしれないなあという感じでおしまい子供を殺そうとするヘンリを黙って見ているアレーはなかなか迫力があって良かった。

 終わってみると、結局の所この劇は、ヘンリの家族がヘンリから愛を得ようともがく姿を描いた劇だったのかもなあと感じた。ヘンリのほうも根っこの所では家族みんなをそれなりにちゃんと愛しているのだけれど、まあ普段陰謀一家なのでかなり土壇場にならないと家族の間に本当に愛があるのか誰にも解らないという。

 まあまあ面白かったけど、セリフの量も多くて結構疲れる劇だったと思う。

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