私たちは30代夫と20代妻、身体面では至って健康な夫婦である。
おそらく妊娠は可能だが、結婚当初からあえてピルでの避妊を選択しはや3年余りが過ぎた。
子なしの理由は様々だが、一番の理由はお互いそもそも子供を欲しいと思っていない点が大きい。
特に私(妻側です)の「産みたくない欲」は凄まじく、とにかく産みたくないったら産みたくない。
思えば子供時代からおままごとやお母さんごっこが苦手で、与えられる赤ちゃん型のお人形にはあまり興味を抱かない幼児であった。
おままごとに参加するにしても、常に赤ちゃん役やペット役に徹し、親側の視点には立たないよう心がけていたように思う。
その当時私の家庭事情が複雑で親が暴力により離婚していたこともあり世間一般よりも2〜6歳頃の記憶が濃く、なにせ友達におままごとに誘われると嫌な気持ちになっていたことをよく覚えている。
将来の夢に「お母さん」「お嫁さん」と書ける人間の気が知れなかったし、中学生になった頃にはもしも大人になって結婚したら子供は持たないでおこうと決めていた。
現代医学を持ってしても十月十日自分の子宮に子を宿し内蔵や骨の位置をグチャグチャと変えられながら育てないといけない時点でもう嫌だし、自分の身体を交通事故と同等レベルまで痛めつけないと出産ができない時点で本当に嫌だ。
その後も地獄のような育児が始まり、一秒でも目を離すとすぐ死ににいく生き物を自己責任で最低20歳まで生かさなければならないのも負担が重すぎるし、何より我が子の愛着の形成に全くと言って自信がない。
子に唯一無二の自己肯定感を与えられる教育育児など私にできるはずもない。
おかげで、二人で慎ましく暮らす分には夫の給料だけで十分食べていけるところを、私も自由にフルタイムで働きに行きそれなりの世帯年収でそれなりに二人してドンチャカ遊びながら暮らせている。
「なんで子供いらないのに結婚したの?」とよく聞かれるが、これは「大切な人が危篤になったり亡くなったとき、自分が一番側にいてあげたいから」に尽きる。これが我が国の婚姻制度における一番のメリットなのではなかろうかと思うのだけど、この話をすると既婚の方にさえ「へえ、確かに!そんなの考えたことなかった!」みたいなことを言われるのでこっちがびっくりしてしまう事が多い。
またよく言われること繋がりの話だと、私がまだ20代前半であるため「これから気持ちも変わるよ〜子供欲しくなるよ〜」という言葉をよく頂くことが多いのだが、少なくとも6歳前後から今まで「私、お母さんになりたい!」と思った瞬間が一秒たりとも存在しなかった私が果たして本当に母になる自分を許容できるのかと言われると正直怪しい。
おそらく我が家は生涯子なしのまま、数千年前より長らく続いた命のバトンを我々夫婦で終わらせることになるのだろう。
辛いのは、不妊疑惑をかけられ腫れ物扱いされることぐらい。何度選択子なしだと話してもこればっかりは理解されづらいらしい。仕方ない。
他人の子供は可愛いし知り合いの出産は素直に喜べるので、本音を言えば気を遣わず教えてほしい。
逆に言うと不満はそれくらいのもので、今の生活はとてもとても幸せだ。