まず、自分は例のワニをずっと追っていたわけではなく、もうすぐ死にそうという頃に見始めた人間だ。
今回ワニのことで人々が愛護団体のごとく怒りを露わにするのは「ワニのコンテンツ力を見誤っていた」ということに尽きると思う。
それは、ワニ制作側、読者側の両方だ。
ワニはネット発の作品である。最近だとこぐまのケーキ屋さんが記憶に新しい。
100日後に死ぬというギミックが功を奏し多くの読者を獲得した。そして読者は時間を作品と共有することで、感情移入をどんどん深めていった。
もとは若手イラストレーターが実験的な作品をTwitterに上げ始めたというくらいなのだけど、ここまで熱狂を生んだ。
これは作者をはじめ誰も予想できなかっただろう。ましてや商業化を狙う事務所や広告代理店も急なファン拡大を読みきれなかっただろう。
憶測にはなるが、はじめから電通という大手代理店が噛んでたと考えるのは難しいだろう。流行るかわからない若手イラストレーターの企画に頭から関わるとは思えない。
誰も予想できなかったとはいえ、とりあえずお金につながる書籍化、ポップアップショップ、グッズ化、映画化ばかりを先行した。
これは長くワニというコンテンツでやっていこうという意志が感じられない。ビジネス側が得意なことをとりあえず詰め込みました、という感じだ。いきものがかりとか特にそう。お家芸。
果たして読者が求めていたのはそういうことだろうか?
読者は「ちゃんと作品が終わること」「無料で読んでたけど作者がちゃんと報われること」「嫌じゃない形での作品継続」あたりだろう。
そう考えると、一番まずいパターンは「実はワニ死んでませんでした~続きはこれからこの雑誌で連載されま~す!アニメもやるよ!」というやつ。作品を冒涜している、と言われまくると思う。
生死を扱っているかつはじめから大手資本が関わってはいなさそうな雰囲気のこの作品において批判が生まれるのは当然だと思う。嫌儲は悪だと個人的には思っているが実際にそういう思想の人は一定数いる。
じゃあどうすればよかったか?後出しの案でしかないがいくつか書いておこう。
・発表まで1日空ける(予告してもいい)→こうすることで作品の連続性からは少し離れられる。「ワニくん死んだ悲しい」から即「追悼ポップアップショップ!」は不謹慎ギャグでしかない。読者はあまりギャグという目線で作品を読んでいない。
・作者のコメントを添える→無料作品において創作者は神だ。彼の幸せが絶対善である。「きくちさんが喜んでるなら」「きくちさんにも儲かってほしいしな」などと思ってもらうことがみんなが平穏に生きる道だ。
・ねずみが主役のスピンオフを作る→これは賛否分かれそうだが、「嫌じゃない形での作品継続」としてありえる道。ワニ世界を拡張する技である。
もちろん上記は作者なども一度は考えた内容だろう。しかし、本気で考えきれなかったのは「ここまでバズると思わなかった」という次の展開を急に迫られた点と、読者の熱量が予想外に高かった点による。
きくちさんはもともとユーモアを交えた作品を書く人のようなので、軽いノリでやり切れると思っていたのかもしれない。
権利者側と代理店側両方ちゃんと考えろ、ということなんだが、特に企画をぶち上げまくる代理店側は普段からコミュニケーション・プランニングとかなんたら言うならちゃんとしろ。お前らの仕事だぞ。
読者側もここまで自分が入れ込むとは思わなかったのではないか。お互い急速に物事が起こりすぎて、ありえるべき丁寧なコミュニケーションが実現しなかった。
無思考に嫌儲思想や代理店への憎悪を振りかざして、頭ごなしに状況をマイナスに捉える人々。
このあたりが見てて完全に痛いしはてなに多いので「うわ…」となる。
・お互い急でびっくりしちゃったよね。こわかったよね。よしよし。
うんち
作者はワニ君というコンテンツで長くやっていこうなんて思ってなかったんじゃないかな。自分のPRのための単発作品として公開しただけだと思う。当初は。 コンテンツ力を見誤った...