「なんですか あなたは」
「おや、ご存知ではない? 生活教も、随分と普及したものですね。私の顔を知らない人間まで布教活動をするほどとは」
普段活動をしている時の、如何にもな宗教家っぽいコスチュームが露わになった。
それを目にし、辺りがザワつく。
「ああ! 教祖様だ!」
実際に見比べて分かったことだけど、ニセ教祖は装飾品が多くて、教祖のほうはむしろ質素な服装だった。
自分でも思っていた以上に、大体の雰囲気でしか記憶していなかったらしい。
アニメとかマンガの、バレバレな変装シーンを馬鹿にできないな。
或いは、時代劇の印籠とか、主人公の正体がお偉いさんのパターンとか。
「そうでしたか これは失礼しました わたしは ここ一帯で 生活教の布教活動を しているものです」
だけど、ニセ教祖はたじろがない。
何か、この場を逃げ切る打算でもあるのだろうか。
「それと引き換えに免罪符を提供している時点で、明らかな商売です」
「違います お金では ありません この“ライフポイント”という 石を用いています」
見た目こそカラフルだが、駄菓子屋とかで売っていそうな、チャチな安物っぽい。
これでカード自動販売機を動かすから、金を使ってはいない、という主張だろうか。
「無意味なオタメゴカシはやめなさい。結局そのライフポイントを換える際に金銭を使っているでしょうが」
だけど、大した理屈じゃないことは、誰の目を見ても明らかだった。
むしろ『金を使っている』という意識を逸らすために、あえてワンクッション挟むという姑息なやり口でしかない。
その後もニセ教祖は様々な理由を展開していくが、どれも言い逃れとしてはかなり苦しかった。
だけど、周りから漏れてくる声は、俺以上に素っ気無いものだった。
「なんというか、興醒めっすね……」
「もう帰ろうーぜ。つまんねーよ」
今のこの状況は、傍から見れば単なる“内輪モメ”だ。
面白半分で入信している人が多い生活教において、彼らを求心するのは結局「面白さ優先」。
このまま問答を続けても、世間には悪評が広まったまま、そして信者にはそっぽを向かれる。
宗教に限らず、世間でそういった流れができたとき、イメージを払拭することがどれだけ大変なのかは言うまでもない。
そのことに、教祖はまだ気づいていない。
いや、気づいたところでもう手遅れだ。
教祖自身に非がなくても、“その後”のことについて「生活教」という看板と、「教祖」という立場があまりにも重くのしかかる。
ニセ教祖を見逃すか、或いはケチがつくことを覚悟で断罪するか。
一見すると有利なはずなのに、試合をとるか、勝負をとるか、みたいな戦いになっていた。
俺も飽きてきたので、その場から離れようと思った、その時。
「どうやって それを証明すると?」
「いま、ここで、ハッキリとさせましょう。“異端審問”です!」
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俺は野次馬根性を継続させ、ハイク町に赴いた。 自分で言うのもなんだけど、その日は本当にヒマだったんだ。 「あれ、マスダの弟くん。こんなところで会うなんて、奇遇っすね」 ...
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「本質的な意味や目的が同じであれば、一つの体系にこだわらなくてもいい。むしろ拘ることこそ、視野を狭くする要因になる」 俺たちの町で活動している、“生活教”とかいう教祖の...
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