それは、どういった層向けのコラボなんだ。
疑問点、他にもっとあるだろ。
「私の言っているキリスト教は 『キリギリス・ストライキ教』のことで イエスのあれのことでは ないです」
「ふーん、まあ、いいや。次は僕が……」
そもそも信仰心がないから、みんな興味本位でやっているだけだ。
でも、傍から見れば金をドブに捨てている人間が寄り集まっているのは変わりない。
バカな人間も、バカのフリをする人間も同じだという状況に、俺は恐怖を感じた。
何より理解できなかったのは、彼らの多くは金を捨てた先が綺麗な川だと錯覚しているわけじゃないってことだ。
なのに、それをどこか楽しんでいる節がある。
これが宗教の力なのかは分からないけど、こんなものを現代社会で普及させたらヤバいってことだけは分かる。
やっぱり宗教ってロクでもねえ。
まあ、そういった興味本位を優先した欲求というものは、すぐに解消されることが多い。
実際、多くの人は一回やっただけで満足している。
後は、せいぜい他人がどんな免罪符を引き当てたか眺めている程度だった。
生活教の信者の9割は面白半分でやっているだけなのだから、当然といえば当然だ。
そう、残りの“1割”だ。
カジマが、かれこそ30回ほど免罪符を引き続けている。
「マズいな。カジマのやつ、『熱中病』にかかっている」
この、残り“1割”の人間には信仰心がある、ってわけじゃない。
『熱中病』を患いやすい人たちなんだ。
『熱中病』は、森羅万象あらゆるものに対して発病の可能性があり、何事にも“熱中しやすく”なってしまう。
こうなると、本人もどこかでやめたほうがいいと思っているにもかかわらず、やめるタイミングが分からなくなる。
サイドブレーキできっちり止めなきゃいけないのに、それが不調を起こしているわけ。
大半は軽微な症状で済むケースが多いけど、カジマのそれはかなり重症だ。
サイドブレーキ、下手したら通常のブレーキまでやられちゃっているように見える。
「あ~、また『非合法にアップされた動画を観た』の免罪符っすか~」
「ダブっても大丈夫 同じ免罪符で掛け合わせると 効果が上がります」
「なるほどお。無駄にはならないっすね」
いや、最初から目当てのものがすぐ出てくれたり、ダブらないようになっていた方が無駄にならないだろ。
結局、それを誤魔化しているだけじゃないか。
「じゃあ、もう一回……」
それで納得して、またやり始めるカジマも大概だ。
これは、無理やりにでも止めないとマズいかも。
俺たちが止めようとしたその時。
「そこまでです!」
やっと真打の登場。
本物の教祖のお出ましだ。
……便宜上そう呼んだけど、『本物の教祖』って信者っぽい表現で癪だな。
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