風立ちぬを劇場で見てきた。当方海外在住で、話題が古いのは許してもらおう。そして、なんだこりゃと思った。
・主人公の台詞の棒読み。朴訥とした人柄を表したかったのかも知れないが、かなり違和感がある。あんな棒読み風に話す実在の朴訥とした人物はいない。
・少年の頃の夢に没頭する話なのか、悲劇のラブストーリーなのか、何を主張したい映画なのか良く分からん。
・どちらか絞らなければならないわけではないが、映画は製作側と観客の共同作業というか、こちらも趣旨が分かればどんどん乗っていけるのだが、本作ではそこが分からず非常に乗って行きがたかった。
・2次大戦の日本の代表兵器・ゼロ戦。作中で設計屋は兵器か否かではなくより良い飛行機を作りたいだけというエクスキューズが入っており、登場人物もちょくちょく戦争に否定的な発言はするものの、ゼロ戦の開発を夢とした男を主題として取っているので、どうしても言い訳がましく聞こえてしまう。宮崎監督は極端なくらいリベラル側だということを知っているが、監督が反戦平和主義だと良く分かっている視聴者にとってすら、兵器の開発に没頭している主人公には感情移入しにくい。
・結核の奥さんに冷たすぎないか?ラブストーリーとはいえないように思う。
・英国で見たのだが、こちらの価値観だと仕事より奥さんを取るのが一般的なので、日本でも今ならそうだと思うのだが、英国人が日本人の価値観というものはこういうものだと誤解しないかハラハラした。
・夢>奥さんというのが最も残った印象なのだが、監督の主張したかったことはそういうことでいいの?勿論、そういう趣旨なら描写に成功したということになるけど。そして、一つの考え方としてはあるのだろうけど。
・妻は昔の日本、今の老人世代の男性が理想とする都合のよい女の描き方に思えて気持ち悪かったと言っていた。それもまた極端な見方だとは思うけど。
・結核の奥さんの横でタバコを吸うのはどうなんだ?そういう時代だったからそういう描写にしたと言う主張は百も承知だが、もともと写実主義の映画でないので、わざわざそこだけそういう描写にする必要あったのかな。
・原作読んだことないが、夢の中と山荘の2人のデフォルメされた外国人は原作にも出てくるの?ちょっと見ていて恥ずかしかった。
・淡々としているが、そこが魅力的なのかというと、一方で夢の中の突飛な描写が繰り返され、淡々は魅力ではなく単に盛り上がりにかけているように思えた。映画の中には風が微風くらいしか吹かなかった。
・悲劇ももっと描くのかと思ったら、奥さんは山に帰りましたと。あとは夢の中で登場と。んんん?原作がそうなの?勿論直接的だけが演出ではないけど、輪郭から描き出す力も弱いような。少なくとも感情を揺り動かす力は弱いよね。
というわけで、非常に長く感じてしまった映画でした。英国の映画レビューサイトを見ると、5段階で4ちょっとくらい。良い評価なんだろうけど、肯定レビューのほとんどの言及が映像の美しさ。なるほどね。日本人は綺麗なアニメは見慣れてしまっているし(その中でもジブリはやっぱり凄いけど)、日本の里山的風景を見るのも珍しくはないけど、外国人にはあんなに綺麗なアニメと風景と言うのは凄く新鮮なんだろう。
本作をもって監督は引退されたと聞いている。引退する投手がもう130km/hくらいしか出なくて打たれまくって火ダルマになっても、最後まで投げることができて満足、本人も世間も引退に納得というか、そういう意味の作品とすれば確かに巨匠の最後の作品にふさわしいのかもしれないと思いました。宮崎監督の作品は、魔女の宅急便くらいまではきちんと見たのだが、それ以降はTV等で見る機会はあったものの、途中で寝てしまったりして、今回は日本の映画を観たくて映画館に行ったからなのだが、見切ったのは久しぶりだと思う。
初期作品のナウシカは、監督が頭の中にあんな空想世界を構築していたのかと思うと、深海とか蟲のデザインとか、その発想力は恐ろしくもあり、天才だと思う。今でこそそのプロットは手垢がついてしまったかもしれないが、それだけこの作品の影響は大きかったのだろう。漫画版は、最後のグダグダが残念なので、映画版くらいがよいのかもしれない。この1作だけでも宮崎監督の天才性は語り継がれていくのだろう。
こちらの価値観だと仕事より奥さんを取るのが一般的なので、日本でも今ならそうだと思うのだが 日本でそんな価値観はまだまだレアだと思うんだが、英国生活長すぎて忘れたのか。 ...
確かに今なら日本でも一般的は言いすぎだったかも知れない。 とはいえ、現在の日本は、建前上は仕事より家族、実態上はそれが許されない、くらいではないかと思っている。家族<仕...
風立ちぬ見てないから見当違いな事書いていたらすまんけど。 建前上は仕事より家族、実態上はそれが許されない、くらいではないかと思っている。 建前としても家族より仕事、が...
つっかさ 結婚して家族になるかどうか決める最重要要素が収入≒仕事だぜ? 家族が仕事より上に来るわけがない
書いたものだが、読んでるか分からないけど、今話題の美味しんぼは、もともとは作者と国民の対立じゃなくて海原雄山と山岡の対立を軸とした話で、山岡が雄山を憎む理由は、雄山が...
横だが、雁谷の原作は常に「父と子の相剋と和解」が主題で、どうやら♂社会の血の系譜にしか興味のない人だから、単純に彼には女性を描く力量がないという側面もあると思う。
美味しんぼの場合、最初は雄山は単なるDV男だったが途中で (作者の気が変わったのかそれとも父子和解させるのに他にストーリー考え付かなかったのか知らんが) 実は妻を愛する人格...
既出だけどさ、宮崎監督の作品を時系列でならべていけば、歳喰うごとに歴史に準じた実写のフィクション話を、アニメ映像化する程度しかできなくなってくのがよくわかるんだな。 彼...