2014-04-04

彼女をよろこばす方法

いや違う。タイトルだけみてお前らが想像したようなのを求めているんじゃあない。

彼女への誕生日プレゼントのことだ。

来週に彼女誕生日がやってくる。そしてその日は、俺達が出会った記念日でもある。

ある春の日のこと。駅からめちゃくちゃ近いとある公園で、俺はのんびりと、桜の散らばる道を歩いていた――

そろそろ時間かな?と思った俺は、時計を見ようとポケットに手を突っ込んだ。だが無い。携帯が無い。それどころか財布もない。

まずい。全部バッグに突っ込んで、電車の網棚に忘れてきたんだ。春の陽気のせいで、ついうとうとしていたからだ。

スイカカード免許証がポケットのパスケースにある。残額は、たいして無いはず。役に立たない。クソッ。

その日は友達のツテで知り合った女性初デートだった。早めに来てのんびりしていた俺だったが、待ち合わせの時間は刻一刻と近づいているはずだ。

しかし無一文でデートに望む訳にはいかない。

友達の顔に泥を塗るわけにはいかない。

お腹が痛くなったことにして、デートキャンセルするか。いや、それはあまりも不誠実だろう。

財布を落としたことを正直に話して、今日のところはお金を貸してもらうか。いやいや。最初デートという二人にとって大事イベントでいきなり財布を落とすようなやつに、将来自分の家庭の経済的側面を任せてくれるだろうか。

アホか。いくらなんでも気が早過ぎる。俺たちはまだ付き合ってさえいないじゃないか。

兎にも角にも、まず連絡しなくては。

とっさに俺は、ベンチに座っていた話しかやすそうな女の子に、時間を聞いた。

彼女時間を答えた後、「どうかしたんですか?」と気にかけてくれた。

そして、にっこり笑う。

ベンチの隣をポンポンと叩いた。

……座れということらしい。

彼女雰囲気にのまれた俺は、とりあえずベンチに腰掛けたが、

しかし気持ちは焦っていたので、情けないことに、隣の見知らぬ女の子に、すべての事情を話してしまう。

すべての事情、つまり……

これから美人とのデートなのだが、相手は、ツンとした感じの美人で緊張していること。相当お金持ちっぽいこと。俺のジーパンジャンパーの服装は見劣りしないか不安だということ。

連絡しなければいけないが財布をなくしてしまったこと。こういうときどうすればいいのかわからなくて困っていること。普段はこれほどマヌケじゃないこと。

でも基本的にはボンヤリしていて、そんな自分に自信がないこと。こんな甲斐性なしが、女性デートして良いのだろうか、本当は帰って布団に包まって泣いているべきなんじゃないか。そう思っていること。

おとなしく頷きながら聞いていた女の子は再び、にっこり笑う。

そして上着のポケットから財布を取り出しお札を抜いて差し出した。1万円札を差し出した。

1万円札。

諭吉さんはにっこり笑っていた。女の子もにっこり笑っていた。

必ず連絡する

約束した俺は、彼女が持っていた油性ペンで手首にアドレスを控えて、その場を後にした。

紆余曲折があって、俺の奮闘もむなしく、美人にはすげなく振られてしまう。

その原因は、かいつまんで言うと俺のコミュ力がなかった、終始ロレツが回っていなかった、ということだ(たぶん)。ジャンパーとか特に関係なく。

で、その後、公園女の子約束通りに再会して、話が弾んだ――「あの日は実はわたしの誕生日だったんですよ」「そうだったの?ゴメン!いやさ、おめでとう。お祝いにおごるよ!」その後デートを重ねて、彼氏彼女になって、俺リア充

もとい、今に至る。かれこれ5年前の話だ。


前置きが長くなっちゃったが、俺は今、そんなこんなで知り合った、愛しの彼女への誕生日プレゼントを考えている。

いままで何度も機会があったが、大体において不評だった。

3年前。

大枚をはたいてペンダントを買った。3ヶ月間、食費を切り詰めた俺が差し出したペンダント

「ありがとう」と言ってにっこり笑顔で受け取った彼女は、それをそっと食卓に置いて、いきなりのしかかってきた。

マウントポジション

で、グーの両手でボコボコ殴られた。まっくのうちー! まっくのうちー!

(「どうしてそういうことするの!!」と、その後1時間ガチ説教でした;;)

2年前。

有給をとった俺達は、誕生日デートと称して、高原へプチ旅行に。

着いたら、まさかの雨。知ってるか? 高原で雨って、何もすることねーんだぜ? おまけに霧も出てくるし。何も見えないし(彼女が体調崩したので、その後も滅茶苦茶何もない)。

去年。

彼女動物が好きなのだけど、アレルギーで飼えないらしい。ペットショップを通り掛かる度に、切なそうにしている。

それを誕生日の前の週に突然思い出した天才こと、俺。Amazonネコ写真集を買ってあげた。これが大受け。

彼女は三日三晩ウットリながめた挙句、棚に飾った。今でも彼女の部屋に行くと、表紙の子猫がつぶらな瞳で俺を見つめてくる。


だが、去年ネコから、今年イヌ、というわけにもいくまい。

もっと何かこう……エッジが効いていて、ウィットに富んでいて、体重が乗っている(ボクシングはどうでもよい)、彼女がよろこぶ、イケてるプレゼントはないか。

というか、お前らって、夫とか妻とか、彼氏とか彼女とかに、普段どんな誕生日プレゼントあげてんの?

俺でよかったら聞いてやるよ?

……いやすいません、調子に乗りましたゴメンナサイ。

どうかこの甲斐性なしに、ぜひ増田民の皆様の知恵をお貸しいただきたく、よろしくお願い申し上げたてまつり候(そうろう)。


注・本稿中のエピソードは一部大げさです。

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