2017-03-06

結構な金を注ぎ込まれた母のその後

以前、『母親結構な金が注ぎ込まれてる』(http://anond.hatelabo.jp/20160823232626)『はてなーが案外やさしかった件とその他のもろもろ』(http://anond.hatelabo.jp/20160824212145)というタイトルで、月60万円の抗がん剤を使いながら、日本保険制度のおかげで、月1万5000円しか負担していない「相対的貧困者」である母親の闘病生活について書いた増田です。

日付みたら、もう半年がたっているのだが、ここにきて大きな変化があったので、つらつら書いていくことにしたい。

母はその後、一進一退の闘病生活を続けていた。

体調が良い時は、映画を観に行く時もあるし(『君の名は』は案外気に入ったらしい。)、副作用がきつい日は一日寝ていたり。

先週の金曜日までは。

抗がん剤をうって、体調が悪い時期をおえたばかり。

先週の水曜日は一人で病院に行き、とくに問題にすべき所見がない状態だったのだが、金曜になってどうやら尋常ならざる腹痛を覚えたらしく、土曜日に同居している姉が病院に連れて行った。

取りあえず、当直の内科医が診断したところ、腹膜炎をおこしているらしいとのことで、痛み止めをうったりレントゲン撮影などしているうちに、主治医外科医が到着。

通常のCTスキャンだと、造影剤をつかうのだが、抗がん剤で体が弱っているため、造影剤をつかわずCT撮影

小腸大腸に穿孔が疑われるのだが、画像では今一つ患部がはっきりしないらしい。

通常の患者ならば開腹手術に踏み切るところ、はたして、母の場合は体力がもつのか、また、抗がん剤の影響で、術後、傷がすぐにふさがるのかどうかが判断付かず、医者協議がつづく。

主治医産婦人科医。母が卵巣ガンのため)は、手術を主張するも、外科医内科医は反対するという状況の中、結局、週末のため麻酔医の手配が付きそうもなく、また、あらためて放射線医の主導のもと、造影剤を使ったCT撮影の上で、精密な診断を下す必要があるとのことで、月曜日までは「保存的療法」(ようするに、点滴で栄養補給しつつ、抗生物質で炎症を抑える対症療法)をとる、との診断に落ち着く。

(なお、ここまでは姉からの伝聞)



そして今日

CT診断を経て主治医放射線医、外科医内科医などなどの協議の結果、正午過ぎにやはり手術をすることになる。

ただし、緊急の手術が入ってしまったたこともあり、開始時間がいつになるか分らないという。

準備をしてまつこと2時間くらいたっただろうか?

いよいよ手術ということで看護師なに4人がかりでベッドからストレッチャーに母を移す。

いや、自分で立ち上がれる(と、本人は思っているし、実際たちあがる)のだが、腹部にできるだけ圧迫を与えてはいけないとのことで。

母は手術に若干の不安を抱えているものの、現状では、うがいが許されている以外は一切、なにも口に入れることが許されず、手術によってその状況が改善されるのならば、と望んでいるようだ。

スタッフステーション最近は、ナースステーションとは言わないらしい)横の病室からエレベータ、長い廊下を運ばれる母にくっついて、自分と姉も移動し、弱弱しくベッドで手を振る母は、「手術棟」の自動ドアの向こうに運ばれていった。

体力を考え、できれば1時間、最長でも3時間

患部の状態確認し、最悪、内臓の消毒や洗浄だけで、それほど積極的処置もできずに終わるかもしれない、と説明されていたが、果たしてどうなることか・・・と待合室に席を落ち着けた途端、自動ドアあいて、看護婦が「増田さん!」と叫んだ。

何事!!!

本来なら患者のみが呼びこまれるドアの内側に、姉と自分が駆けつける。

手術衣を来た外科医協議議論リードし、重鎮っぽい空気を醸し出していた、いかにも精力的な医師である)が口を開いた。

「実は、私どもに認識の違いがありまして・・・

どういうことか?

母が現在抗がん剤を使い始めたのは、昨年5月からである

ところが、外科医は、昨年5月「まで」と、今の今まで勘違いをしていたようなのだ

医師説明するところでは、現在の薬を使っている場合最後に投与して最低でも8週間は外科手術をしないほうがよいという。

もちろん、「明らかに今開かなければ、もう数時間で確実に大変なことになる」などという状況であれば判断もかわるが、母はまだ、そこまでの段階にはない。

腹部を押した場合、まだ痛みを感じるところと感じないところがある、という。

実際、つい先ほどまで、スマホをいじってメールを返信したり、電話対応しているくらいなので、「もう我慢できないほどの痛みでのたうちまわっている」とか、そういう状態ではないのだ。

「ここまで来ていただいて、まこと申し訳ないのですが、やはり、もうちょっとだけ保存的な療法で様子を見るべきと、最終的に判断させてください」と頭を下げられて、「いや、手術してください」とはだれも言えない。

一緒に聞いていた母の心中は分らない。

手術への恐怖から一瞬だけ解放された安堵か、現状を劇的に回復される手段が先送りになったことへの絶望か。




もとの病室にもどり、しばらくして改めて主治医説明を、母と姉と共に聞く。

「正直、腹膜炎の手術に関しては、自分の専門外の部分も多く、外科内科判断に従わざるを得ない。

『五月まで』と『五月から』の認識違いが生じてしまったことは誠に申し訳ない。

まずは、抗生物質で炎症を抑えつつ、点滴の種類を追加して栄養補給し、しばらく様子をみる。

何分、抗がん剤は癌細胞だけでなく、内臓の正常な細胞にも影響をあたえるので、手術後、傷がふさがらなくなる可能性もある。

もうしばらく、抗がん剤の影響が少なくなるまで頑張りましょう、しばらく点滴だけで食べ物飲み物もとれませんが云々」

といった説明があった。

やれやれ、ということで病室で落ち着いたところで、自分と姉だけが再び呼ばれた。

その瞬間、「来たな」と思った。

なぜ、もう説明が済んでいるのに、もう一度呼ばれるのか。

それは、「本人には伝えにくい診断があるから」以外に、理由はない。

「正直、私としては手術で状況を打開したかったのですが、申し訳ありません。

 現在の薬には、消化管穿孔の副作用が起こる可能性が、ごくわずかながら起こる危険があるというのは以前からお伝えしていましたが(実際、それは母にも伝わっている)、

 まさに、その、危惧した状態がおこっているということです。

 新しい薬ですから、正直、そういう症例が、当院では初めてですし、国内的にも症例はそう多くない。

 だから、お母様に今後なにが起こるのかは、何とも言えません。

 普通の消化管穿孔ならば、手術をしてしまうわけですから、消化管穿孔の患者に保存的療法を続けた場合症例というのも多くないのです。

 なにが起こっても不思議はない。」

「がんの発見から、もうすぐ丸6年ですから、お母様は大変よく頑張ってこられましたが、私にして差し上げられることが、現状では、なくなってしまったというのが正直なところです。

 このまま持ちこたえれば、また手術もできるのですが」


そして、以前、父の時にいわれたセリフがでてきた。

母を外した席で説明を始めた時点で、想像はしていたのだが。

曰く

「もし、会わせておきたい人がおられたら、そろそろ連絡を始めて下さい」



さて、ここで問題だ。

母はどの程度、自分の病状を認識しているのかが、つかみかねるのである

実母と夫もガンでなくしている母は、ガンの末期というのは相当苦しく、また、その痛みを和らげるための薬を使ったりすることを知っている。

そして、今の母は、そういう状態にない。

考えてみれば当然であって、今の母は「がんの末期」で苦しんでいるのではなく、腸閉そくと消化管穿孔の症状で苦しんでいるのだ。

それは、ガンとの戦いの結果ではあるのだが。

突然、いろんな人が訪ねてきたら、それはそれで、母が何事かをさとり、精神的に追い詰めることにもなろうが、かといって、「間に合わなかった」ら悔いが残る。

この状況で「精神力」が病気と闘うのにどれだけ役に立つのか、良くわからないが、「アマゾンで注文した本が届いているはずだから明日もってきて」などというほど頭がはっきりしている人の、生きる気力を奪うことはできない、というのが姉と自分結論となった。

とりあえず、何人かの方に話をして「偶然近所に来る可能性がある人」から順番に呼ぶことにした。




明日以降、日々、状況は変化するだろう。何が起こるか、起こらないか




6年前、「このままでは、1か月も持たない可能性もあります。即、手術です」といわれて、大震災後の輪番停電が続き、大至急の手術は延期するという状況の中で、母は最初の手術を受けた。

その時点でステージⅣ、五年後生存率は20パーセント

あれ以来「最悪の事態」を常に裏切ってここまできたが、はたして今回はどうなるか。

もし、外科医が「勘違い」に気が付かずに手術を結構していたらどうなっていたか

誰にもわからないといは、とりあえず封じ込めて、明日も取り急ぎ有給をとっているので、「アマゾンから届いた本」をもって病院に行くことにする。











記事への反応 -
  • 母親がガンとの診断をうけて、もうすぐ5年半になる。 診断されたときには、ステージⅣで5年後生存率は20パーセントといわれていたが、幸運なことに、今でも調子がよいときは自分で車...

    • 世の中は持ちつ持たれつなのよ まぁ実際、医療費含む社会保障費はとんでもないことなってるんだけど。 でもそれは医療従事者が考えればいいこと お母さん大切にしてね。

    • 確かに無駄な投与などもあるのかも知れませんが、先進ガン治療の場合は医学の発展のためにもなると思いますよ。

    • http://anond.hatelabo.jp/20160823232626 を読んで言いたいことがある。 今実際保険診療を受けてる人に対してなるべく抑圧的でない書き方をしたいと思ったが どう考えても抑圧性は入るので先に...

    • ニボルマブ(オプジーボ)? 高額新薬のジレンマ…高い効果 がん患者に希望、月260万円保険制度の危機 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞) 医学書院/週刊医学界新聞(第3165号 2016年0...

    • うちの父もステージⅣの癌です。 余命半年と宣告されましたが、一年経った今の所元気です。 抗がん剤が効いているのか、その他にいろいろ受けている治療のおかげか、もしくは本人が...

    • 自分の感情的には増田母のような医療費は気にならない。 でも「湿布貰いに行く(安いから)+待合室で友達と雑談しに行く」はやめて欲しいと思ってしまう。 毎日リハビリ通って整形外...

      • デイケアセンター代わりの整形外科通いの年寄りもいるだろうが、傍から見ていて、病気の状態が分かるわけでもなし、 そもそも増田や他の誰かの主観で線引きしていいもんでもなし。...

    • 俺が毎月7万取られてる健康保険料を湯水の如く使ってるのはお前か。金返せ。今日も1袋のレトルトパスタソースを2回に分けて使うような生活やで。

    • 『経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策』https://www.amazon.co.j/dp/4794220863 ぜひ増田にはこの本を読んでもらいたい。 この本には、財政再建をするという名目で医療費等の...

    • 安心しろ 国保で最高一人に月二億保険料がつぎ込まれて生かされてる人もいるから

    • 私もおかげさまで両親ともに息災だが、二人とも後期高齢者なので骨折入院のリハビリ込みで2か月くらい入院しても自己負担は数万円だったりしました。 負担が軽くて良かったなと素直...

    • 日本の国民皆保険はみんなで負担していざというときは助けましょうねって精神だと思ってるから別に多少高くてもいいと思う(生活に困るようなら別だけど) まぁ社会保障費が財源...

    • ちょっと嫌な言い方になるけど、母上の身体使って新しい薬の副作用の研究しているような面もあると思う この薬なら副作用は比較的軽いとか、白血球数減らす率が比較的低いとか(映...

    • 「母親に結構な金が注ぎ込まれてる」(http://anond.hatelabo.jp/20160823232626 )を書いた元増田です。 まずは予想をはるかに超えて、多くの方から温かいコメントをいただいたことに感謝し...

      • うるせー無駄遣いしかしないのならさっさと死ね

      • 貧困JK  ← バカ。はてなーなら回避可能な問題で文句言ってる。 ガン老女 ← 回避不可。同情。

      • 一つ目の記事はまあ普通に読めたけど、なんでコイツはこんなにやたらと偉そうなの? それに、急にみずからの思想(相対的貧困、云々)を絡めて語りだしたから、くっせーのなんのって...

      • これたぶん解決方法は簡単で、ある一定以上の年齢層(相対的高齢者)の高額療養費制度を切ればいいんだよね。 イギリスも透析治療で年齢制限を設けたでしょ。それと同じこと。 まず...

      • KINEN

      • オモロ

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