2021-04-08

あえぎ声を書くバイト

大学時代、ひたすらあえぎ声を書くバイトをしていたことがある。

先輩から紹介してもらった、エロゲメーカーバイトだ。

その会社エロゲストーリーに力を入れていて、所属するライター自分文章プライドを持っている人ばかりだった。

彼らからすると、Hシーンのあえぎ声を書くなどというのは苦痛しかなく、学生バイトにでも任せておけということになったらしい。

仕事がどういう感じだったかというと、

1. まず、「チャックを開けた」とか「腰を動かすスピードが速くなっていく」といったHシーンの「ト書き」部分だけを渡される。

2. ここに私が「んっ……」とか「あんあんっ」といったあえぎ声をてきとうな塩梅で足していく。

3. シナリオライターのチェックを受けて終了。

という流れだった。

簡単に思えるかもしれないが、これが意外に難しい。

まず、Hシーンにはある程度の長さがあるので、その範囲内で的確に盛り上げていく必要がある。

使う音に緩急をもたせ、飽きさせず、かつ少しずつボルテージを高めていかなければならない。

さらに、テキストの長さを調整することも重要だ。

短すぎると気持ちいい感じが伝わらないのだが、かといって長すぎるとボイスが冗長になる。

このように、エロ俯瞰的に捉えるバランス感覚と、計画的なペース配分が求められているのだ。

思うままにキーボードを叩いていればいいなどという仕事では決してなかった。

最初仕事は「妹もの」だったが、2回目のHシーンという設定で、「あ」の音の配分に苦労した。

はじめから「あああああ」など言ってると手慣れた淫乱みたいだし、かといって「あん」ではエロさが足りない。

苦労の末に完成させたものの、ライターには「もっと速く上げられない?」と言われる始末。

どうしたものか……と、前任者が残したパソコンキーボード「A」だけ妙にテカテカしている)の前で悩んでいると、あるファイル存在に気づいた。

「あえぎエディタ.xls」と題されたエクセルファイルは、前任者が残したあえぎ声専用のマクロであった。

縦に並んだセルセリフを一つずつ入力していくと、各セリフに含まれ母音・子音等の音声的要素が自動で数値化される。

さらに、その数値を足し引き計算することで、「絶頂度」と呼ばれる値が算出される仕組みになっていた。

この「絶頂度」がミソで、この値がシーンの最初から最後に向かって少しずつ上昇していくように文章を組み上げていくと、理想的なあえぎ声が出来上がるのである

かくのごとき驚くべき神エクセルを、前任者は独力で作り上げたようだった。

そして、秘密ツールとして上司には隠しつつ、後任である私にこうしてこっそり教えてくれようとしたのだろう。

このツールのおかげで、私の仕事はずいぶん楽になり、安定したクオリティであえぎ声を出し続けられるようになった。

そうして仕事をしているあるとき、私はあることに気づいた。

あえぎ声を入力するセルには、理論上どんな文章も入れることができる。

まり、あえぎ声以外のテキストでも、その「絶頂度」を算出できるのだ。

そこで私は、試みに文学史上の名作の「絶頂度」を出してみた。

たとえば、「私はその人を常に先生と呼んでいた。」は12、「親譲りの無鉄砲小供の時から損ばかりしている。」は30という具合だ。

予想もしていなかったことだが、こうして調べていくと、傑作の多くは私の仕事と同じ原則で書かれていることがわかった。

まり最後に向かうほど「絶頂度」が高まっていくのである

とくに顕著なのは芥川で、「下人の行方は、誰も知らない。」など絶頂度367だ。

薬漬けになった人妻が白目を剥いて失神するシーンでもせいぜい330程度なので、どれほど驚異的な数字かお分かりいただけるだろう。

絶頂度」はあらゆる文章通用する普遍的法則だったのである

この事実に気づいた私は、それからあらゆる文章をあえぎ声だと思って書くようにしてきた。

そして、人生のあらゆる場面で成功をおさめてきた。

就活エントリーシートでも、重要なのは絶頂度」の配分である

たとえば学歴欄でも、「絶頂度」の高い名前大学中退し、最終学歴とすることで、ずいぶん見え方が変わってくるようだ。

大学名によっても異なるが、概して「卒業」よりも「中退」のほうが絶頂度は高くなる。)

さて、お気づきの方もいるかもしれないが、この文章もここまで少しずつ絶頂度を高めるように書いてきた。

↑この一文の絶頂度は290だ。

かなり高まってきているので、この辺りで文章を終わりにしたい。

んほぉぉぉぉ! あああぁぁん!!

  • 関係ないけど、VBAできる奴って本当に感謝されるよね。 C#とか、Railsとか、Dockerだかなんだか知らないけど、意識高くなろうとすると出る杭叩かれるよね。

    • GoogleDriveとスプレッドシート使ってる会社なら、VBAよりGoogleAppsScript(GAS)の方が便利よ 簡単に言うとスプレッドシート用のVBAに相当するもの(言語はJavaScript)。 出来ることが圧倒的に...

  • あと70度で水平に達してしまう

  • 真偽はともかく、おもろい! 神エクセル、みたい! 日本語研究の第一人者になれそうだ。

  • anond:20210408000218 ↑の増田読んで思い出した一般人です。(何度かエロ小説は書いたことはあるぐらいの) 靄っとした記憶なんですが、 ・おそらく話者(書き手? 話の主人公)は若い...

    • 元増田がテレビで話題になった本人の可能性が出てきたわけだな?

  • 何の訳にも立たない明らかな創作であると感じながら ついつい最後まで読まされ無駄と感じつつも再読すれば 他にない奇妙な視点とその学問的なバックボーンに気づき このような才能...

  • ストーリーに力入れたエロゲメーカーのエロシーンなんて、おまけみたいなものですぐに終わってしまうよね。 エロを期待する人はエロをもっと押し出したメーカーのゲームを買うだろ...

  • これは、最後に風俗でオチるやつか、でも最初から下ネタだし違うのか、と考えてしまった

  • 4月1日にやれ

  • 文章上手いなあ ネタだろうけど知性を感じる

  • お前普段何やってんだよ anond:20210408000218

  • 喘ぎ声とか読んでないわ

  • ほーん(Ctrlポチー)

  • ぐふっ

  • 絶頂度の計算式について論文書けば、ノーベル賞ものなのでは?

  • こういう仕事もいつかは、AIに奪われていくんだろうな。 ojichatなんかが、いい例だ。 おじさんが、キャバ嬢へ送信するLINEは、人工知能で代替される程度なのだから。 githubで、スーパー...

  • ええいああ!自分からもらい泣き ほろり、ほろり、ひとりぼっち… んほぉぉぉぉ!あああぁぁん!自分にももらい泣き (今日の夕飯で)美味しいのは鯖です

  • このエントリを読んで、思い出したことがある。 学生時代、件の「あえぎエディタ.xls」におそらく触ったことがあるのだ。 学部生と院生が共同で利用できる談話室で、そこにはPCが一...

  • 文章から「絶頂度」を算出できるとか、芥川の文章は絶頂度が高いとかは完全な創作で科学的にはデタラメなんだけど、真面目な顔して「実に興味深い」とか言ってる人たちはネタだと...

    • これが創作かどうかは別として、文章解析アルゴリズム組んで適当に食わせてみればいいだけの話だからそんなんいくらでも作れるぞ? なに科学的(笑)って

      • アナルのことだよ

      • 文章解析の知識が少しでもあれば、これは完全に創作だと分かる。

        • お前が文章解析やったことないのはわかった

          • 俺はGAFA社のCTOです!

            • コンペでは、ほぼ直接対決一騎打ちでGoogleにやぶれ スマホでは、Appleにやぶれ Amazon先生の案件では、技術を説明する前にコロナに倒れ たぶんあいつら、なのってないけどFaceBOOKで GAFAは...

    • 喘ぎ声(文章)から絶頂度が算出可能か真面目に考えてみた。 「あっ あっ」 や 「いくっ」のような定型的な語句や、「!!」「っ」の数、 母音と子音の比率(喘ぎ声は「あ」「...

      • だから(実在するとして)当時の技術の浸透度を考えてもまじめな判定をしている可能性はほぼなくて 多少はマシなひらがな解析と、適当な思いつきで組んだランダム同然な判定を混ぜ...

    • 「途中からなんとなくフィクション臭えかなって薄々思っていたけど、 面白い映画や小説みたいに引き込まれ そのまま最後まで持って行かれ、 最後は気持ち良くポンッ!って終わった...

  • ツイッターのトレンドにこれが入ってて色々終わってんなと思った

    • これを書きに来たのだが先を越された つまんない ちなみにこんな感じ https://pbs.twimg.com/media/Eyb4vhKU4AA0uLR.jpg

  • 色んな作品を作ってると そういう部分だけ外注したい ってなる心理はよく分かる

  • 釣りかぁ〜.でも中盤まではクッソワロタので👈ヨシ!

  • 句読点の打ち方からしてうまい。文章のチンポもといテンポがよくて、本当にマクロがあるんじゃないかとか思ってしまう。

  • これはおもしろい

  • 絶頂度…たったの290か…ゴミめ…

  • 私の絶頂度は53万です

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