私は統合失調症を患う精神3級の手帳持ち障害者だ。就労移行支援施設という障害者向けの就職を支援してくれるところに2年ほど通って無事就職が決まり、今はなんの因果か障害者を指導する立場に立っている。
私が障害者の就職を支援してくれる施設に通って見聞きした話や、障害者を指導する立場に立って思ったことを、精神障害者の就労継続にピントを合わせて書こうと思う。
2018年には法定雇用率に精神障害者が算定されるようになることもあり、精神障害者の就労についての社会の関心は高いと思われる。
実際、精神障害者の就職数はここ数年右肩上がりだ。一方で、精神障害者の職場定着率は他の障害者よりも低いと言われている。最近の詳しい統計が公開されているのをみたことはないが、2008年度という古いデータだと一年以上の定着率は約40%。6割近くが一年以内に辞めている。 http://www.nivr.jeed.or.jp/download/houkoku/houkoku117_summary.pdf
この精神障害者がなかなか職場に定着できない理由であるが、障害者本人も雇用側も共に精神障害のことをわかっていないのが一番大きな理由だと考えている。そのためにミスマッチが起こりやすいのだ。
企業側としては、障害は制御できるものだと考えている。もう少し正直にいうと、制御できない障害の人間は雇わない。
身体障害者は彼らの障害が物理的なものであるために物理的に制御できる。知的障害者についても、彼らの特性はある程度型にはまっているし、彼らは幼い頃から支援機関につながりその特性が長い目で観察されているので具体的な配慮点が見えやすい。
そしてそれと同じように、精神障害者に対しても「合理的な配慮」をするのが企業に義務として課せられる法律が決まった。
だが、これは政策の失敗になるだろうと予想している。何故ならば、精神障害はその特性に型がないからだ。同じ病名であってもひとりひとり症状や対処法が違う。
もちろん病名をつけている医者から見れば、型が見えるのだろう。だが、それは大量の精神病患者と向き合う精神科医だからこそできることだ。
私や多くの人のように、機会があって巡り合うことになった限られた精神病患者と、社会的、個人的に付き合う人間にとっては、彼ら(というか私も含めて)はひとりひとり全く違った病態を持っているように見える。
私自身も統合失調症だと診断されているが、この病気も陽性期と陰性期では全く違った症状を見せる。陽性期だけをとってみても、妄想が出る人、幻聴が出る人、その両方が出る人といったように症状が違う(私は幻聴タイプだ)。
だから、精神科医以外の素人にとって、精神障害者に対して「この病名はこういう症状だからこう接するべき」みたいなものは見えないのが実情だと思う。患者個人を深く知れば知るほど、彼らが病名の型にはまった存在ではないということが分かってくる。
だから、企業が身体障害者や知的障害者と同じように、精神障害者にもこの病名の人はこういう障害だからこうした配慮をすればいい、という合理的かも知れないが画一的な配慮をしようとしても、失敗すると予想する。
では、どうやれば精神障害者を受け入れられるのか?そのためにはまず、障害者本人と、雇用する側と、そして精神障害者の支援者の三者が絶対に必要だと考える。
何故支援者が必要なのか?それは、精神障害者の自己認識についての難しい問題があるからだ。
身体障害者は自分の特性を問題なく理解している。知的障害者には支援者が必ずいて、その人が本人の特性を理解している。では、精神障害者は?精神障害者はその障害が精神にある以上、自分の障害特性を客観的に判断することが非常に難しい。私もこれができなかった。なので、支援者に客観的に自分の障害特性を把握してもらう必要がある。それが職場へのマッチングや就職後の雇用する側の対応策などに非常に効いてくるのだ。
こちらの資料 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/iken_koukankai/dai7/siryou2.pdf の16ページにあるように、支援者がいる場合の精神障害者の一年定着率は65.1%にまで跳ね上がる。
そしてこの支援者と雇用する側には、精神障害者には病名による決まった型はなく、ひとりひとり特性が違い、それぞれに別個の配慮をする必要がある、という認識がなければならない。
自分も精神障害を抱えているにもかかわらず、私自身この現実に気がつくまで時間がかかった。
なので、精神障害者の雇用をする側には、例えば統合失調症の方を受け入れよう、というような姿勢ではなく、〇〇さんを受け入れよう、という姿勢を取っていただきたい。
それは非常にコストのかかる話だとは思う。けれども、精神障害者に働いてもらうつもりで雇用するのなら、そちらの方が長い目で見ると良いだろうとかなり確信を持って言える。
次に精神障害を持っている本人やその家族には、客観的に障害特性を把握してくれる第三者の支援者を持って欲しい。
プロの支援者は本人が気づかない障害特性にも気づいてくれる。そうした第三者がいるかどうかで、雇う側も本人への対応のしやすさが非常に大きく変わる。雇う側も第三者に相談することができるからだ。精神障害者本人と雇用側だけの二者しかいない関係はいろいろミスマッチが起こりやすい。本当に。
そして行政の方にも、精神障害者への配慮を画一的にする方向の動きではなく、ひとりひとりに焦点を当てた雇用ができるようにする仕組みを作ってもらいたい。
無理 完全に聞こえないわけではない若い聴覚障碍者はお前は詐欺師だろで 全盲でない視覚障碍者が白杖持ってたら仮病が世間の理解 医師ではない元精神は障害を自分のことすら理解し...