webメディアの仕事をしているが、これまで電通社員の方々と共に働いた経験を振り返ると、今回の「鬼十則」の掲載取りやめは根本的な解決にはつながらないと感じる。
なぜか。電通という会社は「鬼十則があるから、社員があそこまで働くようになる会社」なのではなく「もともとそういう人が既存社員のはたらく姿勢(鬼十則的な姿勢)に惹かれて集まった会社」だと思うからだ。
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電通の社員(現役とOB)と共に仕事をすると、毎度のように彼らの仕事に対する熱量に驚かされる。
彼らは、およそほかの代理店が突き詰めないレベルまでクオリティを追求するのだ。それもあらゆる動きにおいて。
たとえば、彼らはあらゆる単語について「これは漢字で書くべきなのか、ひらがなで書くべきなのか、カタカナで書くべきなのか」を考え抜く。そのレベルで妥協を許さない。
追求するのは、120%。いや、150%。
そうして常に、こちらの期待を圧倒的に(良い意味で)裏切ってくる。
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あるとき、飲み会に誘った社員で、20時から22時まで参加したあとに「会社に戻って仕事します」という猛者がいた。
「え、いまから? 明日でもいいじゃないですか」と尋ねると「いますぐ思いついたアイデアを形にしたい」と言っていたのを鮮明に覚えている。彼はそのまま顔を赤く染めながら、駅のホームへと消えていった。
なにが彼にそこまでさせるのか。
不思議で仕方なかった。
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「やりたいからですよ。寝食忘れて熱中することって誰にでもあるでしょ? 僕にとってはそれが仕事なんです」
後日、彼が教えてくれた答えはシンプルだった。
やりたいからやっている。
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だから、たとえ「鬼十則」がなくなっても、彼らはその働き方を変えないと思う。
いや。
正しくは「変えられない」
彼らは「鬼十則」など関係なく、顧客のために限界を超えて頑張る人たちだから。
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パワハラやセクハラに等しい発言や態度、そして「理不尽な」長時間労働という形で。
「彼女が電通に合わなかっただけ」という人も、まわりやネットにいた。
「彼女以外の何万人は働けている」という人も、まわりやネットにいた。
そういう一面もあるのかもしれない。
死を決断するほどの。
それは、許されてはならない。
裁かれなければならない。
絶対に。
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彼らは「鬼十則」など関係なく、顧客のために限界を超えて頑張ってしまう。
ここから導ける容易な予想が、もう一つある。
だから「鬼十則」の掲載を取りやめたところで、問題はなにも解決しないだろう。
彼ら・彼女ら(の多く)は、べつに「鬼十則」に縛られているわけではない。
洗脳されているわけでもない。
ただ、やりたいからやっているのだ。
だからこれからは、彼らが「限界を超えて頑張っていた分」を請け負うために、ほかの誰かが苦しんでしまう。クオリティを下げるわけにはいかないからだ。
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今回の問題は、残業をただ数字として見ている限り解決はしない。私はそう思う。
なぜか。
問題の本質は電通で働く社員の方々の気質、それも心の奥深くに根を張っているであろう、彼ら・彼女らの本質とも言える部分にあると考えるからだ。
長い時間をかけて培われたであろう、その人格をダイレクトに形成するであろう、彼ら・彼女らの本性。
今回の問題の本当の原因は、そこにある。
もし問題を根本的に解決しようとするなら、そこに手を加えるほかないだろう。
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ただ、本音を言おう。
もし、そのような抜本的な対策、彼らのアイデンティティに手を加えるような対策が講じられるとするなら。
私は、そこからの電通の行く末を思って、少しだけ寂しさを覚える。
「やりたいからですよ。寝食忘れて熱中することって誰にでもあるでしょ? 僕にとってはそれが仕事なんです」
そう笑顔で答えてくれた彼のような社員が、二度と現れなくなる気がするからだ。
二度と。
だからこそ、なにか別の解決策がないものだろうかと、切に思う。
今回のような痛ましい事件が起きず、
もっとも、本人が良いからといって労基法が違反されて良い理由などないため、難しいだろう。
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私は、そんな彼に、つい過剰な期待を寄せていたと思う。
「彼なら、22時に連絡しても、すぐやってくれるだろう」とか。
「彼なら、明日までにやってと言えば、すぐやってくれるだろう」とか。
それが「間違った信頼」であることに気づかないまま。
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過剰な信頼を寄せていた私のような人間が、電通をいまのような状況に追いこんでしまったのではないか。
私が彼に負荷をかけたことで、そのしわ寄せが、ほかの社員や業者にいったのではないか。
そういう文化の根強さを固めることに寄与していたのではないか。
私も今回の問題に、
間接的にではあるが、
しかし確実に、
加担していたのではないか。
この増田は、電通を褒め上げているが、私の立場から見た電通は少し違う。 私は、別業界だが、少なくとも電通並みの知名度を持つ会社で、広告宣伝を担当する部長をしている。 な...