この成功の要因については様々な説明がなされており、どの説明も面白いものばかりだった。
新海自身は、この100億円突破について、かつてインタビューで「怖い」と述べており、
これまでの新海誠作品を振り返ると、反省と改善を繰り返しつつ、自らの作家性を活かして新作の制作を行っていることがわかる。
今回は、多くの人々が指摘するように、物語のプロットや脚本の作成に第三者の目を強く意識したことが、功を奏したといえるであろう。
特に、客観的な意見を募るも最終的には監督のやりたいことを重視させた東宝の川村元気の功績は大きかったのではないだろうか。
新海誠という監督は、作家性の強いクリエイターではあるが、今回の一件からわかるように第三者の意見を柔軟に取り入れることのできる監督である。
そして、観客が自分に何を期待しているのかについても自覚的である(これは、「星を追う子ども」の経験から得たものであると思う)。
したがって、物語の内容に関しては、面白いかは別にして、下手なものは作らないだろうと思うのである。
さて、では私は何を不安視しているのか。
新海誠作品は、その物語に特徴がある一方で、美しい映像、編集も評価されている。
今作も、これまでの新海作品同様、美しい風景の描写が惜しげもなく用いられていた。
そして、今作では、これまで新海誠作品の弱点とも言われていた「人物」の描写に関して、スタジオジブリ出身の安藤雅司が作画監督として参加し、もはや敵なしといった布陣になっている。
前回の増田にも書いたが、どうもアニメ業界の保守本流たる安藤と新海は相性が良くなかった。
それは、新海の出自や経験不足に起因するところであり、仕方のないことでもある。
安藤のインタビューからは、アニメーターとしてのこだわりが強く感じられるが、新海はそのこだわりが理解できていない。
しかし、「次回作は観客として」、「次回作は若い人と」などの発言から、今作での苦労が垣間見えるのだ。
今作で、新海誠はアニメ業界の保守本流とあいまみえることとなった。
新海誠は作画に関する多くを安藤に任せる形にしていたようである。
アニメーターとして確固たる地位を築いている安藤を、畑違いの新海がコントロールするのは難しい(前回の増田に対するブコメでも指摘があった)。
おそらく次回作でも、安藤とは限らないが、アニメ業界のいわゆる大物と組むことになる可能性は高い。
新海は、今作の反省をどのように活かすことができようか。
物語については、「星を追う子ども」で多くの批判を受けた。そして改善した。
私は、「星を追う子ども」で起きたことが、絵作りや編集に関して生じるのではないかと危惧している。
アニメーターに任せすぎることで、新海の良さを殺してしまうのではないかという不安がある。
安藤の「次は若い人と」という発言は、このままでは絵作りの点で新海が安藤(アニメーター)の作家性に喰われてしまうという意味もあったのではないか。
随分と適当なことを書き散らしてきたが、私は新海誠の大ファンだ。
中学生の時に、「雲のむこう、約束の場所」の予告を死ぬほど見て、本編が公開されてからは小遣いをやりくりして何回も見た。
それ以前から新海誠に注目していて、毎度マウンティングしてくる友達が、「君の名は。」のヒットに泣いている。
「俺の新海誠が~」とか言ってるので本当にどうしようもない。でも気持ちはすげー分かる。
遥か遠いところへ行ってしまった。
うれしいような。哀しいような。
セカイ系の彼方へと、ゼロ年代を引き連れて、あずまんと宇野が決裂する以前、あの震災の影響のない世界線に旅立ちたい。
でもね、奇跡はおきないんだ。
あずまんと宇野は変わってしまった。ネットの世界も変わってしまった。
震災が起きなかった、なんて有りえないんだよ。
震災は起きたんだ。
かといって、秒速みたいじゃ駄目なんだ。
以上
追記:誤りを訂正しました。ブコメにてご指摘ありがとうございます。
追記2:「前回の増田」とはhttp://anond.hatelabo.jp/20160921161913です。
追記3:誤りを訂正しました。ブコメにてご指摘ありがとうございます。
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