本稿はTVアニメ『マイ・リトル・ポニー 〜トモダチは魔法〜』の二次創作作品「How Applejack Won the war」についての解説である。
~How Applejack Won the War~ 完成版 ‐ ニコニコ動画:GINZA
すでに動画up主による訳詞がついているため、これだけ観ても楽しめる。
しかし元動画作者の Sherclop Pones の特徴として「偏執的なまでに韻を踏む」の他に「やたらダブルミーニングを込めたがる」というのもあり、翻訳動画だけではカバーしきれない、あるいは観ててわかりにくいところが多々存在する。
以下ではそうしたスキマを解説していきたい。訳はだいたいオリジナルであるが、ところどころでリンク先動画主のGED氏の訳を大いに参考にさせてもらった。この場を借りて謝意を表したい。
一日目
開戦だ
さあ、ジョニーよ銃をとれ*
訓練所で射撃練習だ
三段目(Come on Johnny get your gun)の元ネタは当然反戦小説『ジョニーは戦場へ行った』(さらにその元ネタとなった軍歌『オーヴァー・ゼア』)。
四段目の「訓練所」は fruit camp 、新兵訓練所である Boot camp (昔流行ったアレ)とかけてある。
行進しよう
集結ポイントへ
お嬢様みたいにさ
エージェント・オレンジ? まあ、待ちなって
三段目: i’m speaking fancy too. は第二シーズン六話「恐怖のキューティー・マーク」より。フランス語のキューティーマークが発現したアップルブルームに対してアップルジャックが言ったセリフ。日本語版放送時には「妹がザマス言葉になっちゃった!」と訳された。なぜこのセリフが引用されたかといえば、前段の歌詞 Rendez-vous が「集結地点」を表すフランス語だから。
四段目: Agent Orange? エージェント・オレンジはベトナム戦争時に、森林ゲリラに悩まされたアメリカ軍が木々を根こそぎ除去するためにばら撒いた悪名高き除草剤。含有されていた有害物質が後々までベトナムの人びとに深刻な影響を与えた。
二日目
仕事は多い
ラリティもがんばってる
地面を均して、納屋を建てる
五段目: Raze the field, raise this barn. - 第三シーズン八話「Apple Family Reunion」の劇中歌より。原曲の raise(建物を建てる)と、 raze(破壊する)をかけている。
ここまでは
楽勝だ
市民に死傷者は出たけれど
撃ちてしやまぬ
戦友の手を取りド-シ-ドと踊ろう
五段目: do-si-do とはスクウェアダンスやポルカの基本ステップ。元はフランス語。
新兵たちよ
良心の呵責などいらぬ
家族と結べ、戦債を売れ
条約を結べ、戦歌を歌え
一段目: Draft horse そのまま訳せば「徴募(Draft)された馬」だが、同時にアメリカのばん馬にあたるゴツいお馬さん(Draft horse)にもかかっている。
三段目: alpha, bravo, charley-horse アルファ、ブラボー、チャーリーは、軍隊で使用されるコールサイン。それに charley-horse すなわち「こむら返り」をかけている。
四段目、五段目: Family bonding, selling bonds, Signing treaties, singing songs 日本語訳動画うぷ主のGED氏は「一家団結、戦時公債、条約締結、軍歌斉唱」と訳している。名訳である。
上昇!
投下!
支援部隊がすぐ駆けつけるはずさ
五段目: 『マイ・リトル・ポニー』のオープニングにおいて、主人公のトワイライトは毎回気球に乗って登場する。
三日目
沖に出よう
静かな海でたったひとり
自分の罪に思い巡らす
寝てるなよ
終わってないよ
戦いのときだ、総員甲板へ
やつらの戦艦を沈めて
ジューシーに焼きあげろ
五段目: Burn them to a Honeycrisp ハニークリスプはりんごの品種。パリッとしたジューシーな食感が特徴。
降伏だと?
まだ殺りたんねえな
あのチキンどもを追い立てろ
やつらにくれてやる厩舎などない
捕虜は取るな、皆殺しだ!!
四日目
戦争に勝った
紅く甘美な勝利だね
三段目: Loyal to my apple corp 作曲者である Sherclop Pones の人気シリーズ動画「Friendship is Witchcraft」でアップルジャックとレインボーダッシュのエレメントが入れ替わってしまい、アップルジャックが「忠誠」のエレメントになってしまったことがあった。
戦の馬たちよ
誇りを高く持て
ドアに飾った勲章が
私の勝利を語ってくれる!
三段目: Freedom isn't Everfree: 『マイ・リトル・ポニー』本編に出てくる Everfree forest という地名が、アメリカの右翼が好きなフレーズ Freedom isn’t free. 「自由はタダじゃない」にかかっている。